【20】
「DOGS! ~戌亥ポートアイランド騒動記~」は【じょぉん】を言いだしっぺ兼代表とする物書き仲間同士による共同執筆作品です。
本作品は【椎菜】による著作であり、当人の許可を得て投稿しています。
「よう。麗しき友情だな、お二人さん」
用件が済んだのか、再びル・フゥが二人のところにやって来た。
「えへへー。ル・フゥ君もやります? 友情の証!」
満開の笑顔でヒルダががばっと両腕を広げた。
それがいわゆるハグのための体勢である事は疑いようがない。
「やるかっ!」
すかさずル・フゥが叫んだ。
「えー? そんな冷たい…わたしとル・フゥ君の仲じゃないですか!」
「どんな仲だよ!」
「久しぶりに会ったんですよ! 感動の再会なんですよ!?」
「たかだか1年だ! お前の感動の沸点は低すぎんだよ!」
ヒルダの様子に悪意は全くない。そんなド天然ぶりだからこそル・フゥの語気は強まるばかりだった。
すると、それを冷静に眺めていたアテナが呟く。
「ル・フゥというフランス風の名前に反して予想外にシャイのようですね…日本人的な奥ゆかしさと言うか」
「ですね。案外日本育ちとかだったりして」
アテナのAIプログラムを担当したフランチェスカ・剣崎はアメリカ籍であり、アテナ自身の思考パターンにもその影響は少なからず存在する。
そして言うまでもなくヒルダはドイツ生まれのドイツ育ちだ。二人そろって西洋的な感覚が身についている。
特にヒルダは挨拶代わりの身体的接触について抵抗がないばかりか、積極的に自らそれを行う傾向さえあり、それだけにル・フゥの反応は意外なものであったようだ。
とは言え普段は優等生然としたヒルダが、そこまで気を許す相手はごく限られるのだが。
「チッ…オレの過去をあれこれ詮索すんのはやめろ」
「何という事でしょう…この年恰好で過去を探るなとの一言。いわゆる中二病の兆候が見られます」
「あー…いえ、この場合は実が伴った発言だと思うので、一般的なそれとも違うと言うか。事実を言ってるのにそう聞こえちゃうって言うか…」
「フォローになってねーんだよお前は! いつもいつも母子そろって人の事弄り倒しやがって!」
「そんな! お母さんはともかく、わたしにそんなつもりはありませんよ!?」
「知ってるよ! だから怒ってんだろ!」
ル・フゥとしてはいつの間にかヒルダが正確に中二病の何たるかを捉えていることが一番の問題だった。
ユーディめ、余計なことしかしやがらねえ。そう心の中で悪態をつかずにはいられない。
ともあれこのままでは埒が明かない。大きく深呼吸をして、何とか落ち着きを取り戻すことにした。
「とにかくだ。事態の収拾はついた、オレらもそろそろ引き上げる。いつまでも学校をこのままにはしておけねーしな」
ル・フゥが目で示す先で、”番犬”たちが整然と列を組んでいる。こちらの視線に気付くと、毅然と敬礼の姿勢を取った。
治安維持組織とは言うが、本格的な軍隊と比べても遜色ないほどの高度な訓練ぶりが動作から見て取れる。
「そうですか…残念です。ゆっくりお話でもしたかったのに」
「別に、これからいくらでも会うことはあるだろ。大加美サンの店にはオレもよく行くしな」
「本当ですか! あ、じゃあ稜牙さんがこの後わたしの歓迎会をやってくれるそうなんですけど、ル・フゥ君もどうですか?」
「あー…どうかなー。色々仕事がなー。まあ、行けたら行く」
あ、これは行く気ないな。
アテナは「行けたら行く」という言葉の裏の意味を正確に見抜いていた。
しかし、二人の間をややこしくしてはいけないという配慮から、あえて何も言わないでおいた。
私ももうヒルダの友達なのだから、それくらいの気配りはしないと。…そう、思った。
「で、だ。今回の件は”第十議席”をはじめ、統括理事会としては秘密裏に処理したい。結界を使ったとは言え、よりによって学校でテロが起きたなんて公表したら大騒ぎだからな」
「はい、大丈夫ですよ。その辺のことは弁えてます、わたし口は堅いんです」
「…本当かよ…。まあ、とは言えお前ら二人が特殊な事態に巻き込まれたってのは、これは紛れもない事実だ。だからその辺を踏まえて、こういう筋書きで口裏を合わせといて欲しいんだ」
そう前置きしてル・フゥは大まかな粗筋を二人に話した。
神無月学院を目標とした匿名の爆破予告が理事会に届いた。
”番犬”による事実確認の結果、どうやら現実に爆発物が存在するらしいことが確認された。
そこで爆弾処理を目的とした実働部隊の出動が決定されたが、先に現地に入っていた偵察要員が偶然、模擬戦を行っていた二人と接触。
カウンターテロの経験があるヒルデガルド・シュナイダー、危険物取扱のノウハウのあるタイプARX-7両名の協力を得、安全のために理事会が用意した特殊な結界の中で想定より早く処理を行った。
これにより被害が一切出ることなく迅速に事態は収束。犯行を企てたテログループは”番犬”により無事摘発された。
「…とまあ、そんなトコだな」
「了解。カバーストーリーとしては妥当なところと判断します」
「テロリストの襲撃そのものに比べたら、爆弾騒ぎのほうが幾らかはマシ…ってわけですか。
はぁー…よくまあポンポンと尤もらしいことを…」
「そうでもねえさ。そりゃお前みたいにバカ正直だと難しいだろうけどな」
「ちょっと! ひどいですよ!?」
ぷんぷん怒り顔のヒルダを尻目に、ル・フゥはアテナに向く。
「んで、お前には今回の戦闘データを全部提出してもらう。貴重な情報だ…こっちで確認して、事によっては研究所ラボで消去して貰うことも考えなきゃならないかもな」
あくまで補佐官並びに”猟犬”としての職責から、ル・フゥは当然の要請をしたに過ぎない。
しかし、咄嗟にヒルダが何か言いかけたのよりも更に早く、
「拒否します」
――アテナは即答した。
「…いや、あのな。お前の頭ん中に置いといたらヤバいモンなんだよ。慎重に扱わないとだな」
「断固拒否します。私の見聞きした記憶はプライバシーにあたり、それを強制的に閲覧、或いは抹消することは私の権利を著しく侵害する行為です。法がまだ存在しなくとも、私は私の人格を主張し、一個人としての権利が守られることを強く希望するものです」
ル・フゥは唖然とした様子で、僅かの間、口を開いたままになってしまっていた。
「おいヒルダ、お前からも何とか――」
「いーえ、ダメです。わたしの友達にひどい事をしたら、いくらル・フゥ君でも承知しませんから」
「…マジか」
ヒルダが誰とでも友達になってしまう性格であることは、ル・フゥもよく知っている。
だがその相手であるアテナが、人間を模した機械である彼女が、いつの間にかここまで強固な自我を確立しているとは。
さっきから何度かやり取りをかわしていたが、まだ認識が甘かったと言わざるを得まい。
ル・フゥは考えた。腕組みし、深く考えた。
「あーもー…。分かったよ、洗いざらい差し出せとは言わねえ。――そういう事ならお前が責任を持ってデータを厳重にロックしろ、誰が要求しても絶対に見せんじゃねえぞ。その上で、理事会への情報提供はやってもらうからな。後日でいい、提出可能な状態に編集しとけよ」
深い溜息と共にそう告げる。少年にできる最大の譲歩だった。
これでダメならいよいよ力ずく、という事になる。それはル・フゥにとっても極めて気の重い話だ。
だがそんな心配は杞憂に終わった。
「了解。では後ほど提出手段等についての指示を願います」
微笑みながらアテナが頷いた。同意を得られた、ということだ。
やれやれ、とル・フゥは苦笑した。ヒルダの頑固なところが伝染したのか、それとも似た者同士で仲良くなったのか。
「ああ、連絡を入れさせる。…じゃ、オレはもう行くからな。”番犬”が引き上げたら生徒たちが押しかけて来ると思うが、くれぐれもさっきの話を忘れんなよ。――お疲れさん、二人とも」
くるり背を向け、ル・フゥは足早にその場を立ち去ろうとした。
が、ふと背後から声がかかる。ヒルダだ。
「そういえば、ル・フゥ君って今回どこから駆けつけたんですか? 意外と早かったから…もともと近くに居たとか?」
「…さあな。たまたまだ」
「たまたまですか。…それはともかく、今度一緒にフレイヤちゃんのお見舞いにも行きましょうね!」
そう言われ、ル・フゥは数秒の間答えを探ってから、どこか複雑な感情を滲ませた声で、
「考えとく。…好きにしろよ」
短く応えて、背中越しに軽く手を振り、再び電磁迷彩を発動させたル・フゥは姿を消した。
何しろ秘密のエージェントだ。帰りに生徒たちに見られることすら避けたいのだろう。
しかし二人はそれぞれが察知するル・フゥの気配が完全に遠ざかるまで、その背を見送っていた。
「――じゃあまたね、ル・フゥ君」
ふっと笑顔で、ヒルダが呟いた。
東郷すみれが神無月学院を訪れたとき、既に”番犬”――
即ち戌亥ポートアイランド統括理事会直属治安維持機構第十学区支部は、警護のために部隊を展開させていた。
乗降拒らに協力を仰いで、現地で情報収集を行いつつ対策を取るつもりだったすみれは、拒共々生徒会室に押し込められ、今しがたまで交渉役の中年女性隊員から繰り返し繰り返し事態の公式説明と、一切の手出しをしないようにという説得を受け続けるという
目に遭わされていた。
そして現在、事態の正常化に伴い部隊が撤退したのを受け、自由となった二人の生徒会長は足早に階段を駆け上っているのだった。
「爆弾、ねえ…」
引き上げる前に”番犬”が言い残していった一連の事態に関する説明について、すみれは冷静に噛み砕こうと試みていた。
一方、それとは対照的に憤慨を隠そうともしないのが拒だ。
「あんな話! 大嘘もいいところだわ…! つーかンなもんあったらウチの生徒の誰かが気付くってのよ!」
”何でもあり”をモットーとする神無月には様々な特技、才能を持った生徒が集まっている。
それが科学的なものであれ魔術的なものであれ、本当に危険物が仕掛けられたなら…確かに察知する者がいても不思議ではない。
特に全校生徒の顔と名前を知る拒にとって、その中の誰がそれを可能とするレベルにあるかも把握しているのだ。
学院が危機に晒されたことも腹立たしいが、そんな説明で誤魔化せると思われていることも同等に腹立たしいというわけだった。
「まあ、それで納得しておけってことだろうさ。あたしも”第七議席”に報告しちまったしねえ。理事会が全部片付けちまったんだよ」
「わーってるわよ。…私たちにヤバい事させないために、ってんでしょ」
「そうさ。事実、何の被害も出ないで済んだわけだしね」
すみれが悟ったような口ぶりでそう言うのを聞き、前を歩いていた拒が足を止めて振り向く。
「――ウチも、アンタんとこも、一人ずつ極めつけにヤバい目に遭わされてる」
刺すように鋭い視線を向けられ、すみれは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに苦笑を浮かべた。
…なるほど、一番怒ってるのはそのことかい。すみれは一つ年下の少女の心中をそう察する。
「片方はまだ正式に生徒になる前の立場で、片方は公式には学院の「備品」だ。今のところ、生徒じゃないよ?」
「そんなの、関係ない」
「…ああ、そうさ。その通りだ拒」
ふう、と溜息。全く、わざわざ正論を言ってみたくなるのは悪い癖だ、とすみれは自戒した。
自分でも言ってて胸糞が悪くなっているのだから世話はない。
「だからせめてあたしらはあの子たちのことを認めてやろうじゃないか。人知れず危機を退ける為に、恐らくは全力で戦ってくれたんだってことをね」
「――…ふん。っつーかそもそも、私がやってりゃもっと早く終わってたんだから…」
「ははは、そうだねえ。そういう事にしといてやるよ」
楽しそうに笑うすみれから素早く視線を逸らし、再びずんずんと拒は階段を昇る。
すみれも引き離されないよう、その後に続くことにした。
突然、校内への扉がばーん! と勢いよく開け放たれたので、ヒルダとアテナは咄嗟にそちらに顔を向けた。
「ふえ!? か…会長さん…!?」
「――すみれ…」
それぞれに見知った顔に気付いて、呆気にとられたように驚く。
「…元気そうね、二人とも。爆弾処理はうまく行ったのね」
「え、ええ…まあ」
純朴なヒルダにも、拒がル・フゥの作った筋書きを全く信じていないことは察せられた。
明らかに語調が意識的なアクセントを伴っている。
しかし、ル・フゥと約束した矢先に口を滑らせるわけにもいかない。ヒルダは微妙な笑顔を浮かべる他なかった。
「一応、神無月学院生徒会長として…本学院を襲った悪意ある危険を取り除いてくれたことには礼を言うわ。――但し! アンタもウチの生徒になるからには、今後はそういった問題は生徒会に指示を仰ぐように!」
いいわね! とキツい調子で指先を突きつけられ、
「はいっ! 勿論です!」
そう返事するヒルダはついつい畏まった表情で、敬礼の姿勢を取ってしまっていた。
拒は人間でありながら、他者を容易く威圧する何かを秘めている。ヒルダはそう感じていた。
「すみれ…その、先程は申し訳ありませんでした。こちらの独断で一方的に通信を切断して…」
一方、アテナはばつが悪そうにすみれに頭を下げていた。
すみれは肩を竦め、
「…何。こっちもフラニーやみんなと反省したよ…あんたに対するあたしらの態度は、なっちゃいなかった。こっちこそ悪かったね…これからはもう少しちゃんとした扱いをするように心がける。友人としてね」
と、こちらも深く頭を下げる。
「そんな…勿体ない言葉です。…ありがとう、すみれ」
わたわたと手を振る。すみれの誠意ある言葉は、アテナには嬉しかった。
「良かったですね、アテナさんっ」
「…はい。すみれ、私は今日新たにこちらのヒルダとも友人になったんですよ」
「そうかい、そいつは結構なこった」
笑って、すみれはヒルダに改めて向き直る。
「今回は色々と世話になっちまった。こっちは迷惑しかかけてないってのにね…。ともあれ、アテナにあんたのような友達ができるのは喜ばしい。一つ、よろしくしてやっとくれ」
「はい! ――あ、何でしたらスミレさんも友達になりませんか?」
「あたしが? ははは、そいつは光栄だ。いいのかい?」
「勿論ですよ! 友達は多い方が楽しいです!」
拳を握り締めてヒルダが元気に言い切る。
すみれはその明るさに、好ましいものを感じていた。
日頃人の裏をかくことを専ら考えて暮らしているすみれには、このストレートさは春の日差しのようだ。
「しっかし…校内見学の予定は完全にパアね、ヒルダ。案内役だっていうブレストもどっか行っちゃったし」
そんなやり取りを見ていた拒が、ふと、そう口を挟む。
「もう夕方ですもんね…って、ブレスト君に会ったんですか?」
「アンタらが姿を消したすぐ後に、屋上に来てたんだけどね。気付いたら居なくなってたわ」
むう、とヒルダは残念そうな顔をした。せっかくクラスメイトと接する機会だったのに。
しかし、済んだ事を悔やんでも仕方がない。ヒルダは気を取り直し、
「えーと…明日も学院は開いてるんでしょうか? 日曜ですけど」
と生徒会長に疑問をぶつけた。
「ええ。部活とかあるし…校舎の中も基本的に出入り自由よ、教室には鍵かけちゃうけどね」
「よかった。だったら明日改めて見学させてもらいます、楽しみが先に延びたと思えば今日のことも悪くはないです」
「ホンッッットに前向きなのね、アンタ…」
呆れ半分、感心半分といった目を拒はヒルダに向けた。
「じゃあ適当に寮監委員会あたりの誰かに案内させようかしらね。”合戦”のすぐ後だし、ヒマしてる奴くらい居るでしょ」
「はい、ありがとうございます。えーと、それでですね…皆さん」
妙に畏まった口ぶりで、ヒルダが三人それぞれの顔を見比べる。
そして大きく息を吸い込んでから、ゆっくりと話し始めた。
「えと、僭越ながらわたし、この後…島で世話になる人のところで歓迎会を開いてもらうことになってまして」
「ああ、そう言えば。さっきもル・―――…いえ、そんな事を言っていましたね」
ル・フゥに言っていましたね、と危うく口を滑らしそうになったアテナが何とかセリフを修正した。
ヒルダと仲がいい様子を見ていたためついつい気が緩んでいたが、そもそもあの少年の存在は基本的に秘密なのだ。
「はいっ。それで、その…皆さんもご一緒しませんか?」
気恥ずかしそうにヒルダが言う。自分がゲスト、という何とも照れ臭い立場がそうさせているのだろう。
三人はそれぞれに、ああ、この子はいつも人に何かする側で、される側には慣れてないんだろうな、と納得した。
「え? うーん…私ちょっとこの後行くところがあるのよね。悪いんだけど」
と、拒。
「そうですか…急なお話ですもんね、ごめんなさい」
少し残念そうなヒルダに、すみれが安心させるように笑みながら言う。
「あたしは構わないよ? て言うかそういうことならアテナ、あんたは絶対行かないとね」
「…いいんですか?」
話を振られたアテナが、ぱちくりと瞬きした。
「何言ってんだい、当然だろ。フラニーも呼んで、三人でお邪魔させてもらおう」
「…! はい!」
ぱあ、と花が咲いたような笑顔をアテナは浮かべる。すみれは満足げにうんうん、と頷いた。
本当は今回の件の後始末や、理事会との連絡などもあるのだが、後日にまわすことにしよう、とすみれは決断する。
「で、会場はどこだい? その人のお宅ってことになるのかい?」
「あ、はい。この第十学区で喫茶店をやってるんです、”森のおおかみ”っていう―――」
その言葉を聞くや否や、いきなり拒がヒルダへ凄い勢いで迫ってきた。
「ちょ、ちょ! ちょっと待って、”森のおおかみ”って言った今!?」
「ふええ!? は、はい!言いましたけど!?」
顔が近い。何かの拍子に唇が触れかねない恐れすらあるほどのゼロ距離ぶりだ。
何故こうなったのか分からず、ヒルダは混乱した。
「アンタ! 稜牙さんとどーゆー関係なの!? ねえ!」
おもむろに襟首を掴まれ、ゆっさゆっさ激しく揺すられる。
「待った拒! どう! どうどうどう!」
すみれが見かねて拒を背後から食い止めようと押さえかかるが、決め手にはならなかった。
そんな中、健気にも首元を圧迫されつつヒルダが声を絞り出す。
「ドイツで同じ人狼の群れに居る人で…! わ、わたしの両親とも、友達なんですぅ…!」
「ドイツ繋がり……ッッ! そして同族繋がり!! そうよ…この子が人狼って時点で真っ先に思い当たらないといけなかったんだわ私!! 甘すぎるぞ私!!」
ヒルダから手を離すとおもむろに天を仰ぎ、悲劇のヒロインさながらに、うおおお! と叫んでいた。
だがよく考えて欲しい。悲劇のヒロインはそんな叫び方はしない。
「そういう事なら話は別だわ! 私も行くから、歓迎会!」
「え!? は、はい、それは嬉しいですけど…」
「――負けないからね!!」
「はいい!!?」
すっかり火が付いてしまった拒と、何が何やら分からぬままのヒルダ。
「…あれはどういう事なのでしょうか、すみれ」
「ん。まあ、一言で言えば…青春の1ページってヤツかねえ」
「答えになっていません」
文月勢がそんなやり取りを交わす。
やがて物見高く他の生徒たちも次々に押しかけ始めた屋上を、春の夕焼けが赤々と照らしていた。




