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DOGS! ~戌亥ポートアイランド騒動記~  作者: じょぉん
<神無月学院入学案内・中編>
47/72

【19】「どういう風の吹き回しなんだろ」

 ヤンキー御一行が揃って吹っ飛ばされてきたその〝発射地点〟――校庭側へと、白黒と在美は揃って視線を転じさせる。

 まるで巨人が蹴立てたかのように地盤が盛大に抉れて引っ繰り返っている光景が真っ先に二人の目に飛び込んできた。ついでに、現場作業用の安全帽に袈裟姿というかなり独特な姿をした大学部の某坊さんが「わぁぁぁ直したばかりでしたのに!?」とアタフタしている様なども目撃出来た。

「ドイツもコイツもバカの一つ覚えよろしく左車線(・・・)ばっかりに進入してくる始末――」

 戌亥ポートアイランドの学生は二〇〇万人中の約一二〇万人。

 学生にDOGSは約一二〇万人中の七二〇人。

 DOGSに生徒会長は七二〇人中の一二人。

 ――そして〝彼女〟こそは。

 ――その一二人中の、ただ一人。


「どうぞ勝手に渋滞させてどうぞ勝手に事故ってなさいって感じね。迎撃し易いったら無いわ、むしろ」


 見るまでもなく。

 考えるまでもなく。 

 現〝戌亥ポートアイランド第一位〟神無月学院生徒会長――〝バタ足アクセル(ストップ&ゴー)〟乗降拒が、相変わらずの不機嫌そうな表情のまま校庭のど真ん中に超然として佇んでいた。

「な、なななななニャんですよ!? あすこの方々ら、揃って会長サンに突っ掛かってやがらっしゃったってトコっスか!? なんて命知らずな――!」

「ってキミがそれ言っちゃうんだ…」

 昨日まさに島内全域生中継の下で会長相手にそれを――しかも単騎で――やらかしていた当人を前に、在美は呆れ顔を見せていた。

 白黒は拒の方と死屍累々たる彼らの方とを順繰りに見回す。そして完璧にノビている諸兄の方へとまず駆け寄ってみた(距離的に近かったので)。

「…う、うーっす? 元気ですかよ?」

「ここで〝はいバリバリ元気です〟なんていう返事が返されてきたらそれはそれでかなり恐ろしいと思うけど…」

 応答が見られるかどうかはかなり怪しいと踏んでいたが、とりあえず声を掛けてみる白黒。と、連中の中でも取り分けダメージが浅く済んでいたらしい一人が呻きながら首をもたげた。

 そいつの首には首輪(チョーカー)があった。今朝サージェントに説明と同時に自分も渡されていたもの。白い首輪、だった。

 その一人だけではない。

 他の連中の首にも、同じくソレは装着されていた。

〝――戦敗(LOSE)

 白黒が目をしばたいていると、首輪(チョーカー)から電子合成音が発された。

戦敗(LOSE)戦敗(LOSE)戦敗(LOSE)戦敗(LOSE)戦敗(LOSE)

「? こ、こいつァ…?」

 やがて全員の首輪(チョーカー)が一様に戦敗(LOSE)の言葉を並べ終える。

「あー…会長さん相手に公式模擬戦を挑んでたみたいだね。この人たち」

「ヌヌ? コーシキ、モギセン…?」

 ヤンキー共の様子を覗き込んでいた在美は訳知り顔である。白黒は小首を傾げた。

合戦(ドッグファイト)中に運用されてる『接近遭遇(エンゲージ)交戦開始(エンゲージ)』の決まり文句から始まる公式勝敗評価システム。それに基づいての模擬戦をやったってコトだね、要するに。電算委員会の人に首輪(チョーカー)の設定をちょっとアレして貰えばすぐ開始出来ることだから、DOGSじゃない生徒同士にしたってたまにやってるコトだよ。腕試しにせよジャンケン代わりにせよ。…まあジャンケン代わりっていうのは言い過ぎとしてもね」

 合戦(ドッグファイト)でDOGSが使用する首輪(チョーカー)が、黒。白い首輪(チョーカー)が確か「各種測定やら開発訓練等やら能力を用いた一般授業用」ということだったか。白黒は内心で朝サージェントから受けた説明(ブリーフィング)の内容を思い起こす。

「ニャーるほど? 授業で使います他にも、こんなカンジの野試合にも用いられるってェワケなんですわな、この首輪(チョーカー)だきゃァ」

「…え? なんでそんなに理解が早いの? まさかロウソクが消える瞬間の一際強い輝き的なアレ? 白黒君、ひょっとして死んじゃうの!? そんな! 今日クラスメイトになったばっかりなのに!」

「いやサスガに飛躍し過ぎですからな!? 俺めだってデフォでこれっくらいの頭は回るんスよ!?」

 というか事あるごとに拒に何度も何度もぶたれることで「察する力」をひたすら練磨させられてきた結果である。

 むしろ白黒にしてみれば在美にだけは変に驚愕されるよりも手放しで褒めて貰いたい所だった。ワンミスどころの騒ぎではない失態を犯しながらもこうして無事『神無月学院入学案内・生徒会長と往く委員会巡りツアー』からとりあえず生還してきたのだから。

「うん、まあ冗談はさておき」

「相変わらずトンでる冗談を飛ばして下さる娘っコですわー、アルミちゃんだきゃァ…」

「とにかく――戌亥公式の判定に基づいた模擬戦であるにしても、一対複数とか多勢に無勢なんていう対戦形式はさすがにちょっとイジメみたいな絵になりがちだから、普通ならそういう試合形式に関しては風紀委員会の人が飛んで来たり立ち会ったりするものなんだけど」

 今は特には居ないみたいだねえ、と校庭側を見遣る在美。

「そこはそれ。このバヤイ、挑む相手がフツーじゃなかったってことでしょうわ?」

 そう相槌を打つ白黒はほとんど苦笑顔だった。

「あの会長さんの尺度だと五・六人そこらに囲まれた程度じゃまだまだパワーゲームが成立しちゃうってコトかぁ。そもそもこの人たちDOGSじゃないから、もう少し人数居たって多分こんな感じの同じ結果になってたとは思うけど」

「俺めよか長く会長サンのことをば観てるんでしょうアルミちゃんがそう言うってこたァ、そうなんでしょうわな…」

「にしたって会長さんだよ。弱点が明らかになったハズなのに、なんだか逆に攻撃力上がってる気がするのは気のせいかなぁ…?」

「――ハ? マジですかよ?」

「マジマジ。なんだか〝遠慮が無くなった〟って感じの吹っ飛ばしっぷりだったし、吹っ飛ばされっぷりだった」

 重ね重ね会長サンパネェ。

 在美の恐らく事実なのだろう見解を聞き届ける。そして白黒はひとしきり驚いた後、遠く校庭側、首へ手を遣っている最中の拒を見た。白い首輪(チョーカー)を外している所のようだった。

 戦勝(WIN)。そんな宣言がやはり電子合成音で聞こえてきた。

「それにしても…どういう風の吹き回しなんだろ」

「? 何がっスか?」

「いやさ。あんまり頭からこーゆー風に言っちゃうのは少し気が咎めないでもないけど、今ここでノビてる人たち、普段はなんていうか――」

「チンピラ? シャバゾウ? ド三品(サンピン)?」

 こういう語彙はとにかく豊富な極道者(自称)・白黒だった。

「まあ、そう。要するに基本、会長さんや風紀委員会とかのコトをよく思ってない人達なワケなんだけど…。実行に移せもしない闇討ちの相談をしてるくらいならまだしも、数で囲むなんて戦法こそ採ってたっぽいにせよ、なんだって急に何あれ正面から(・・・・・・・)会長さんに挑んだりしたんだろ?」

「…。……。………。ヘーイ? ダイジョブですかよ、おたくら?」

 在美の言葉にそいつァ確かに珍妙ですわなと相槌を打っていた白黒は、改めてノビっぱなしのヤンキー共の顔を覗き込んでみた。

「―――――、んだよ」

 その時だった。

 目の焦点こそ合っていないものの、それでも喋れる程度には余力があったらしい一人が言う。


「テメエで焚き付けてくれやがったクセに…つくづく変な奴だぜ、オメエは、よ…? それとも…とぼけ、てん、のか…?」


「…。……。………。ウェ?」

 目をぱちくりとさせた白黒が続けて何か訊こうとすると、そいつは舌打ちがてらに視線を逸らした。

「…? 白黒君、どうしたの? その人、なんて?」

「いやあ…? その、なんでっしゃろ…? ――って、」

 ――あっ、と。

 白黒の口が半開きになった。

 図書室で泉美と初めて逢った時ではないが、朝に既に見ていた顔を思い出すのに時間が掛かったものだった。

 彼とは――彼らとは――逢っている。見覚えがある。

 校門前で拒に絡んでいた徒党の一人の胸倉を思わず掴み上げていた時。正しい啖呵の切り方について啖呵を切っていた時。

 ――その時だ。その時に、確か周囲にあった顔だった。


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