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第2話 良かったな、仲間の頭に穴が開かなくて




「は、はぁぁぁ!? 嘘だろ……あんなに硬いレッドベアーを……一撃で……!?」


「どうだ? これを見ても俺の銃が初級魔法より劣ってるって言えるか?」


「っ……それは……」


 剣士は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。


 その時、長身の男が眉をひそめて、何もない空間を指差した。


「なんだか、変じゃないか? 銃弾が通った空間が……歪んでいるような……」


「まあ、空間ごと断裂する弾を使ったからね」


「……なに?」


「銃弾に空間魔法を付与したんだよ。ほら、付与魔法《エンチャント》ってやつ」


「そんな……空間魔法の付与なんて聞いたことがないぞ……!?」


「そんなこと言われても……」


 困ったな。

 俺は出来るからやった……それだけなのに。


「く、空間魔法が付与できるってことは……お前、空間魔法の適性持ちなのか……?」


「うん、そうだな。てか、全属性使えるぞ?」


「……は?」


 剣士の表情が固まった。


「四属性は勿論、空間魔法とか重力魔法とか……光魔法とか聖属性魔法とか、なんでも使えるぞ」


「……嘘……だろ……? 聞いたことねえぞ……空間魔法だけでも適性があるやつは1万人に1人くらいだろ……?」


「そうなのか?」


 つっても、全属性にほんの少し適性があるだけで普通に使っても使い物にならないんだけどな……。


 すると、長身の男が申し訳なさそうな顔で近づいてきた。


「その……すまない。君の銃を完全に見くびっていた。まさか……精霊魔法よりも強い銃があると思ってなかったんだ」


「別に謝んなくていいよ。でも、良かったな。仲間の頭に穴が開かなくて」


「それは……そうだな」


 ふと、剣士の方へ視線を移すと、顔を青ざめさせていた。


 自分の脳天に穴が開くのを想像したんだろうな。


「んで……このレッドベアーの死体はどうする?」


 俺は地面に横たわる巨大なレッドベアーの死体を指差す。


「僕ら倒したわけではないからな……銃職人の好きにしてくれ」


「んじゃあ、魔石だけ貰う。銃の材料に必要でさ。他は要らないから好きにしてくれていいよ」


「そ、そうか……わかった。じゃあ、僕達で解体して魔石だけ渡そう」


「おお、本当か!? そっちで解体してくれるのか!?」


 随分と気前がいいな。

 モンスターの解体は面倒だし、臭いし、助かる。


「ああ、君を侮ったお詫びだよ」


「そうか。なら、こっちも色々と水に流そう」


「助かるよ」


 すると、長身の男は何かを思い出したように口を開いた。


「そういえば、君に一つ耳に入れておいた方がいい事があるんだ」


「なんだ? 面倒ごとは御免だぞ」


「わかっている。でも、話だけでも聞いてくれ。実はとある人が良質な銃を探しているらしくてな」


「……へえ」


 何が何でも断ろうと思っていたが……銃職人を探している……か。


「詳しく聞かせて欲しい。世の中じゃ銃は時代遅れの武器って認識なんだろ? 理由はなんだ?」


「相手は……姫騎士様だ。……と言っても、君はわからないか」


「ああ、わかんないな。誰だ?」


「名前はラディア。ソロで活動するSランク冒険者だ。彼女は数年前に滅んだ西の小国の姫様らしくてな。その上、類まれぬ剣の実力を持っていることから『姫騎士』なんて呼ばれている」


「ふぅん……」


 姫騎士なんて随分と大層な二つ名だと思ったが、本当にお姫様だとは。

 それに……Sランクって最高ランクじゃないか。


「その姫騎士様は剣のサブウェポンとして遠距離武器を欲しているらしくてな。」


「まあ……確かにソロだと遠距離攻撃の一つは欲しいよな」


「ああ。それに姫騎士様は訳あって精霊魔法が使えないらしくてな。それもあって質の良い魔銃が欲しいらしい」


「ふぅん……なるほどな。そんで噂になってるのか……」


「どうだ? 最も質の良い銃を売った相手には多額の金銭を支払うらしいし、君の銃の威力を知らしめる良い機会じゃないか?」


「……うーん。それもそうか……」


 銃は道具だ。

 道具は……やはり、使ってもらってこそ価値がある。


 とはいえ……レッドベアーに使った銃を売る気はないけどな。

 なんせ俺の最高傑作だ。

 俺の命よりも大事といっても過言じゃない。


 ただ……


「俺の他の銃は売ってもいいかもな……」


 他の銃も一般的な魔銃に比べたら段違いには質がいいものばかりだ。

 きっと姫騎士のお眼鏡にも叶うだろう。


「よしっ、決めた。その姫騎士に俺の銃を売りに行こう。それで、姫騎士今どこに?」


「幸い、ここから一番近い街にいるよ。ここから馬車で三日もすれば着くだろうな」


「三日か。案外近いな」


 んじゃあ、ちょっくら姫騎士とやらに銃を売り込みに行ってくるかぁ……!

 俺は、そう決意した。


 ――◇――◇――◇――



「んじゃあ、ベルムさん、しばらくお別れですね……!」


 数日後。

 俺は冒険者たちが乗ってきた馬車に同乗させてもらえることになった。


「ベルムさん、何かあったら俺の渡した銃を使ってくださいね……!」


「ああ! 村は俺が守ってやるから存分に銃を売り込んでこいよ!」


「勿論です!」


 そうして、俺は村を旅立った。


 馬の蹄の音が、旅立ちを祝福するように軽快に響いていた。


「そういえば、お前、名前ってなんだ?」


 突然、誰かに話しかけられたと思ったら……剣士が興味深そうにそう尋ねてきた。


「俺? 俺は……クラインだよ。そっちは?」


「俺はルイ。このパーティの剣士だ。んで……」


「私はユノだよ。見ての通り魔法使い……! よろしく、クラインさん」


 そう言ったのは青髪の少女だった。

 その白い肌と端正な目鼻立ちを見るに、さぞかし男からモテるのだろう。


「この前はルイが馬鹿にしちゃってごめんね……?」


 ユノは申し訳なさそうに頭を下げた。


「別に俺は気にしていないから、そんな謝らないでいいよ」


「そう……? ありがとう、クラインさん」


 すると、今度は長身の男が自己紹介してきた。


「僕はフェーベル、同じく魔法使いだ。3日だけだが、よろしく」


「ああ、よろしく」


 ということは……剣士一人に魔法使い二人か。

 珍しいパーティ構成だな。


 これも精霊魔法が生まれた影響だろうか。


 そう思っていると、ルイが興味津々といった様子で前かがみになり、俺に質問を投げかけてきた。


「クラインはいつから、こんな山奥に篭っていたんだ?」


「んー……8歳くらいの頃か? 俺は銃に惚れ込んじゃってさ。今は亡くなっちゃったけど爺ちゃんが銃職人だったから弟子入りしたんだ」


「へえ……そんな前から……じゃあ、銃を作り出して10年は経つのか」


「んー、そうだな。今は19だから……11年か」


「19!? 俺らと同い年じゃねえか!」


「そうなのか?」


「ああ! 俺らは幼馴染同士で組んだパーティでよぉ、全員、19歳なんだよ」


「へえ……」


「同い年同士、よろしくな……!」


 ルイはこの前、散々馬鹿にしてきたとは思えないほど純粋な笑顔で手を差し伸べてきた。


 表情を見るに、悪意は無さそうだ。


「……よろしく」


 俺は少し警戒しつつもルイの手を取った。


 ――その時だった。


 突然、ガタンッと馬車が強く揺れ……馬車は止まった。


「なんだ……?」


 思わず、窓の外を覗くと――十人ほどの武装した男たちが馬車を取り囲んでいた。

 まさか――


「野盗……!?」




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