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二人で食べるご飯が世界で一番美味しい気がする  作者: 海坂依里
サプリメント生活が、『お粥』と『野菜スープ』に
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第1話

「結婚、おめでとう」

「ありがとー」

「いつまでも幸せにね」


 友人の結婚式に出席するのも、これで何度目か数えるのも面倒になってきた今日この頃。

 学生時代仲良くした記憶はないのに呼ばれる結婚式の数々に、どうか終止符を。

 そんな願いを聞き届けてくる有能な神様は存在せず、今日も学生時代の華だった私は仲良くない友達に作り笑顔で祝福を送る。


「結婚してないの、もう数えられるほどしかいなくない?」

「わっかる! 肩身狭いわー……」


 結婚式が終わったら終わったで、結婚できていない同士で見えない未来に向けて語り合うってお決まりの展開がやって来るのも厳しい。


「次に結婚するのは、優奈かなー」

「優奈、学生時代と変わってないんだもん」

「独り勝ちだよねー。この年齢で、可愛さを維持できてるって化け物だって」


 さっきから黙り込んでいる私に話題を振ってくるなんて、いい度胸していると思う。

 話題を振られて、肩身が狭くなっているのはこっち側(私の方)だって誰も分かってくれない。


(いくつになっても、可愛いとか……)


 幼い頃に言い聞われてきた()()()()()()という呪いの呪文。

 実際に、アイドルを目指せるんじゃないかってくらい容姿に恵まれた。

 おかげで、学生時代はドラマに出てくる悪女……にはならなかったけど、容姿を活かして、ありとあらゆる贅沢をさせてもらった。


(若さには、勝てないんだって)


 三十歳間近が迫っていても、周りは他人事のように私を《《可愛い》》のお世辞で塗り固めていく。

 歳を重ねるごとに、その可愛さは色褪せているってことに気づかぬフリをして私を弄ぶ。


「はぁ」


 参列した結婚式の評論会から解放されて、静まり返ったマンションのドアを開けた。

 玄関の明かりをつけても、誰も『おかえり』と声をかけてくれないマンションでは薄暗い廊下が続いてしまう。

 靴を脱いでスリッパに足を入れても、なんだか冷たい床の感触が伝わってくるような気さえしてしまう。


「結婚……」


 周囲が次々と結婚して、幸せな家庭を築いていくという人生の大定番。

 取り残されているように感じるのは事実だけど、結婚したいかと問われるとよく分からない。

 一人で生きていくのに特別な苦労はしていないし、誰かの温もりが恋しいと思うこともない。


「結婚、した方がいいのかな……」


 ソファに腰を下ろし、深い溜め息を吐く。

 結婚式に参列するたびに、《《結婚しなきゃいけない》》という呪いの言葉が頭をノックし始める。

 でも、両親が結婚にうるさくないという現代らしさある家庭で育ったこともあって、やっぱり結婚への執着が私にはないような気がする。


(本音は、孫の顔が見たいのかな……)


 そんな思いつきがあっても、両親に『孫の顔見たい?』と直接尋ねる勇気も出てこない。


「はぁ」


 ソファから体を起こし、テーブルの上にばら撒いているサプリメントの数々を口に含んで水で流し込む。

 結婚式で出された食事は喉を通らず、夕飯を作る気力も元気もない。

 生きていくために必要な栄養をサプリで取り込んだ私は、明日の仕事に備えるために眠りの世界へと向かう。

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