表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵姉妹は幸せです  作者: 京栞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/7

#1

新連載です! こちらも、小説投稿サイトCaitaへの投稿が先行しております!

ストックが切れるまでは、

月水金、12時更新予定です。

無くなったら、現在連載中の別作品同様、週に一回の更新になるかと思います。

どうぞよろしくお願いします。

「第二王子妃リリアーネ・ブルーメを、第二王子の恋人、ベルゼ・ベトゥルグ男爵令嬢暗殺未遂の罪で磔刑に処す!」


 裁判官が朗々と告げる判決を、私は真っ青な顔で聞いていた。


「私は、やっていません!」


 それが聞き入れられないことは心のどこかで分かっていたけれど、それでもなお、私は言いつのった。


「どうか聞いてください! 私はお二人の邪魔をする気は決してないのです!」


「本当に愚かで哀れな女だ。公爵家を後ろ盾とするためだけの駒に過ぎないお前が、何を勘違いしたのか、俺の恋人に毒を盛るとは」


 検察側の証人席で私を嘲笑ったのは、第二王子ベルンスト・フェアギフテン・ルーン殿下だ。

 告白してきたのはそちらの癖に、結婚式を挙げたら用済みとばかりに私を離宮に追いやった私の夫。

 今日もいつものように新しい恋人であるベトゥルグ嬢を隣に座らせている。


「ベルン様、私は決してお二人の邪魔をするつもりも、勿論彼女の命を狙うつもりもありません! どうか信じてください!」


 彼はため息を吐きながら立ち上がると、私の傍までやってきて耳元で囁いた。


「本当に愚かだな。お前を処分するために仕組んだ罠に決まっているだろ」


 え?……

 戸惑う私に彼はにやけた顔でさらに囁いた。


「お前が俺に対して罪を犯せば、邪魔なお前を消しつつ公爵家に罪の意識を植え付けられるだろ? 公爵だって不出来な平民の娘が、妹を名乗らなくなって喜ぶんじゃないか?」


 公爵。私の異母姉、マーガレット・ブルーメのことだ。

 私生児に過ぎなかった私に地位を与え、公爵家の人間にした方。

 あの人の為に、私を利用したということ⁉

 彼の言うことを理解して、驚愕に目を見開いた私を見て、ベルンがせせら笑う。


「公爵令嬢だというのに毒杯を賜ることも許されないなんて」

「ブルーメも墜ちたものだ」

「これだから私生児は」


 貴族たちが口々に囁く声も、蔑む視線も今はいつもほど気にならなかった。


「あんな女が妹だなんて、マーガレット様が可哀そうだわ」

「本当に。あの方が出張中でなかったら、一も二もなく処刑に賛同なさるのではなくて?」


 姉の名前が耳に入る。

 私がどんな噂を流されても、唯一態度を変えなかったお姉さま。彼女に妹が犯罪者だという不名誉を負わせてしまった。

 事実を知ってはめられたことへの憤りよりも、巻き込んでしまったことをただ申し訳なく思ってしまう。


「おい、裁判官。彼女が逃亡したり、変に同情を誘わないよう、即刻刑を執行しろ」

「かしこまりました」


 私が周囲の声に気を取られている間に用意がされていたのだろう。

 一通りの茶番の後に私が引きずられていったのは磔台だった。


「リリアーネ、姉に申し訳なく思うならせめて無駄な抵抗をしないことだ」


 そういったベルンの顔は、妻に裏切られた夫らしい、神妙な表情をしていたけれど、僅かに口角が上がっている。

 ああ、こんな人でなしに愛されたせいで、私は死んでしまうのね。

 そう思いながらも、抵抗する気も失せ、大人しく十字に括り付けられる。


「これより刑を執行する!」


 執行官の声が処刑会場に響く。

 ずぶり、と私の体を貫いた槍の衝撃にうめく暇もなく、槍は体内から引き抜かれ、私の体にはぽっかりと穴が開いた。

 処刑を見守る人々の嬉しそうな野次が頭の中で煩わしい。


「リリアーネ!」


 ふと、ここにいるはずのない声が聞こえる。

 霞んでいく視界の端に映ったのは、一纏めにされた白銀のポニーテールの乱れすら気にせず急いだであろう姉の姿。

 彼女は勢いそのままに死にゆく私の下へ向かおうとするが、衛兵に阻まれる。


「落ち着いてください、公爵閣下。あの女は殿下の恋人に手を出した罪で処刑されたところですよ」

「嘘だ! 私の妹がそんなことをするものか! 通せ!」


 勢いよく、衛兵を振り払ったお姉さまは一人で磔台から私を下ろして横たわらせる。

 止めるはずの衛兵も、その勢いに手出しできず、会場はいつの間にかしんと鎮まっていた。


 いつも冷静で顔色一つ変えないはずのお姉さまがぼろぼろと涙をこぼしている姿に、ああ、お姉さまは綺麗だなあと、どうでもいいような感想が浮かぶ。

 お姉さまは絞り出すような嗚咽交じりの声で、私に謝罪を告げる。


「……すまないッ。私が、もう少し早く戻れていれば、いや、戦場になど行かなければ、こんな目には遭わせなかったというのに!……いや、それも言い訳か……」

「おね、さま、、ごめ、なさ、…わた、やって、な、ゲボッ」


 お姉さま、私は、やっていないのです。

 身の潔白を、誰よりもあなたにだけは、信じてほしい。

 私の言葉は、血を吐いたことで言い切れなかったのに。

 

「分かっている。リリアーネのような優しい子がそんなことを出来るはずがないから」


 真っ直ぐで綺麗な空色の瞳が涙でぼやけているのを残念に思いながら、その瞳に宿す誠実さを、懐かしく思う。

 ああ、そうだ。この人だけは、お姉さまだけは、私の味方でいてくれたのに。こうなる前に、助けの一つでも求めていれば、あなたにそんな顔をさせずに済んだかもしれないのに。


「不甲斐ない姉でごめんなさい。守れなくて、ごめんなさい……」


 私を抱いて、苦しそうに謝罪を続けるお姉さまがあまりに痛ましい。

 お姉様、泣かないで。そう言ってあげたいのに。

 私の体はもう、動かすことも叶わない。

 視界もだんだんと暗くなって、意識が遠のいていく。


 もし、やり直せるなら。お姉さまともう一度家族になりたいなあ。


_______

「いつまで寝ているんだい、リリアーネ!」


 怒鳴り声で私の意識が浮上する。布団を引っぺがされてベッドから転がり落ちる。


「い、痛!……痛い?」


 私は死んだはずなのにどうして痛みを感じるんだろう?

 咄嗟に、ついた手をまじまじと見てその小ささに驚く。

 ぐいと首を持ち上げられて、目線があった相手は、どこか見覚えがある。


「い、院長先生?……」

「何をぐずぐずしてるんだい。ほら、とっとと起きな! 全く役立たずめ、助成金がなきゃ、とっくの昔に奴隷商に売り渡してやるのにね」


 私を起こしたのは、孤児院時代に私をこき使っていた意地悪院長だ。

 彼女はとうの昔に死んだはずなのに。

 ま、まさか。


 ばっと、辺りを見渡す。

 埃だらけのよく見知った部屋。

 子供たちの手垢で曇った姿見に映る、煤けた金髪に空色の瞳のぼろを着た幼女は間違いなく、私の姿だ。

 ただし、十二年前の。


 私、五歳に巻き戻ってるー⁉

Caitaでは二次創作機能が付いていて、AIで手軽に二次創作を作れるみたいです!

続きが待てない方は是非お試しください!

https://caita.ai/profile/kyoukann

また、週一で「兄が連れ込んだ女が悪役令嬢だった。」も並行連載中ですので、そちらの方もお時間あればお読みください!

https://ncode.syosetu.com/n3012lh/


次回更新予定1/28、12:00

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ