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社畜の俺が転生したら愛され王子になったので、魔王国を救います  作者: NAar


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第5話 勇者

これはまだ戦争真っ只中な時の話




勇者と名乗る男は勘違い野郎だった。

転生したのではなく、別の異世界からこの異世界に飛んできた。

所謂 パラレルワールドということである。

別の異世界でダンジョン攻略中に落とし穴に落ちてしまい、謎の光に包まれてこの世界に転移してきた。


元の場所ではBランクパーティに入っていたが別に勇者でもなんでもなく、ただの冒険者パーティだった。

だがこの世界にきてみたら、勇者というものがいないではないか。

たまたまたどり着いた先で耳にしたのは、全てを魔王が治めているといい、あまりにも強い軍隊を持つ為に、それに従うしかなかった。

なんということだ!魔王は独裁者ということか!やはり何処の世界でも魔王や魔族は悪だということを再確認した。

ではそれを誰が倒すのか。私しかいないのではないか!!

勇者が不在のこの国で、俺が真の勇者になるべくして招かれたのだと盛大に勘違いしたのだった。



俺の名前はユーリス・ヴェルナー

以前いた国、ここではあちらが異世界ということになるのだろう。

そこでは冒険者ギルドというもので栄えた都市だった。森では魔物が溢れ返っており討伐依頼が入ればその魔物を狩る毎日だ。

その魔物を作りだしているのが魔族だと言われ、そこでは魔王という存在自体が滅びれば国が救われるとされていたので、冒険者たちはパーティを作り、魔王城を探して奔走していたのが以前の生活。

故に皆、勇者になりたかった。勇者という存在が不在な為にいくら魔物を狩ってもダメなのだと父上もよく言っていた。


そんな中、高魔力ダンジョンに他のパーティと合同で入ったまでは覚えている。そこでいきなり床が光ってたどり着いた先がこの街だ。

たしかバルゼルムというらしいがここには確実に魔王という存在がいて魔王城もある。

更に、この国は以前国同士の戦争が絶えなかったのだが、魔王という存在のせいで国は分裂。

よくよく話を聞いてみると、争いというものは無くなったが、そのせいで流通が滞り 商売が出来なくなったと嘆いていた。

人々の生活が脅かされるのはいつの時代、どの場所であっても魔物による被害は変わらぬのだと改めて思った。







**********





「俺たちはこの国の命運を託されたに違いない。そうだと思わないか?」

金の髪に紺色の瞳を持ったイケメンが剣を天に振りかざしながら、自身のパーティであるメンバーに語りかける。


ここはバルゼルムの酒屋。


「思うわ。当然ぢゃない!貴方が言うなら間違いないわ!」

今にも零れそうな胸を揺らしながらテーブルにつく女性、名をリュシア・ノール

「俺もそう思うぜ。ガハハ!何せ現にこの国を救ったのはお前だからな」

ガタイのいい大きな男ガルド・アルメは片手に酒が入ったジョッキを持って声高らかに叫ぶ

「えぇえぇ、そうですとも。貴方様方勇者一行のお力で 私たちの商売がまた復活できそうです!なんとお礼を申し上げて良いか!いくらでもこの街にいてください。私はこの街を統治しておりますバゼル・クロウと申します。また何かあった際にお力添えしていただければこれ以上望みません!」

でっぷりとした身体がいかにもな見た目で、口ひげが特徴的な腰が低く、手を拱くのはここバルゼルムの統治者バゼル・クロウ

「…………怪しい。」

いくらなんでも上手く行き過ぎてないか?と内心このバゼルに出会ってからずっと怪しいと思っているのはセドリック・ヘッセ。

容姿は青白い顔に目が隠れる程の前髪。瓶底のような黒縁メガネをかけているせいでどこを見ているのか全く分からない。


「いや、無理もない。なんせここには勇者という存在がいないのだから、それは魔王に屈しても仕方のないこと。私達がいるからにはもう怖いものなどない!」

ダンッと音を立てて空になったジョッキをテーブルに置く。


「そうね、でもここまで上手くいくのであれば最初からやってしまえば良かったのに」

テーブルに頬杖をついて、バゼルに向かって言う。

「いやいやそんな、私共は一介の商人であります。この手のことは考えても行動に移そうとすると必ず失敗するのです。適材適所といいますでしょう?」

ユーリスの空になったグラスに追加のお酒を注ぎながら腰の低さは変わらない。

「そういうものかしら」

「ガハハハ!リュシア、何が不満だ?ふた月前に来た時は右も左も分からないオレたちが今はこの街の英雄だ!」

お酒を飲んでいるからか、いつにも増して声が大きかった

「うるさいわ、ほんと。唾を飛ばさないでちょうだいよ」


「うるさいのは共感できるね、リュシアの言う通りだよ。こんなに上手く行くなら僕たちが行かずともバゼルさんたちでどうにかなりそうだ」

「いやいや、何度も申しますが無理なのです。私たちは顔が割れておりますので魔王国に行くには行けても商人として。あの街に隠れることは難しいのですよ」


「フン。まあ3人とも思うことはあるだろうが俺が勇者ということには変わりない。それでいいだろう」


「なにも良くないだろ」

瓶底メガネがズレそうなのを直して、この上手く行き過ぎてる状況に不審しかないが上手くいったあと、あの魔族とやらに追いかけられてる感じもない。

向こうの国が戦争をふっかけてきたら、武器が必要になるので貿易がやりやすくなって良し。そのまま泣き寝入りして静かにしてくれればその間に別の商売を再開できるからまたそれも良し。

どちらもこの東の国にはプラスでしかないのが気に食わない。



「では勇者様、本日も我が家のとなりの屋敷をお使いください。私はこの後の準備がありますので。街にはいくらでも居ても良いです。再度申し上げますがとなりの国には魔王国を通過しないといけないので、もし行くのであればお気をつけください。魔王国には『もうよい。忠告感謝する。』左様でございますか。では」



「何か話していたけど、また聞かないで良かったの?」

「聞いたところで、俺たちには関係ないだろ。セドリックは前の世界でもそうだが気にしすぎる傾向にあるな」


そうかな。でも、あのバゼルはどうしてもいけ好かない。

ユーリスは勇者に対して人一倍執着している節があるから、今はそれに酔ってるだけ。

ちゃんとしてくれれば。前のユーリスに戻ってくれれば、大丈夫。

昔からそうなんだ。


とりあえず先に部屋に戻ろう、、

この辺りは魔物は出ないし、遅くまでやっている店が多くて割と明るい。


「僕は先に戻るね」

「そうか?ならオレも行こう!戻って1人で飲み直す!あの屋敷にある酒が美味い!」

「ふうん。ぢゃあ私も行こうかしら」

「なんだ、みんな戻るのか?なら俺も一緒に行こう」




そう。こんな感じなんだ

何だかんだでみんな一緒にいることが当たり前の

そんなパーティなんだ








******



第5話読んでいただきありがとうございます!


謎の勇者一行でました!

次回、畑への第1歩!

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