第34話 不穏なお茶会
ヴァイスが連れてきた男の治療が終わり、とりあえず聞きたいことがあるので目を覚ますのを待つことにした。
傷を負った人を助けに行く行動といい素晴らしい
勇者(仮)→勇者様(仮)にしよう
勇者様(仮)も、バルドの申し出にどうしようかと迷っているのか街に行くと話ていたが一緒にいることになったようだ。
嬉しいような、もしかしたらこの人達が本当に勇者一行の一員だとしたらココで捕まえることになるのだろうか。
王子の立場としては、断罪しなくてはいけないのだろうか
だがしかし!
先程のあの優しさを見ただろうか
こっちの執事と室長は率先して助けるわけでもなく、こちらが指示をすれば動くが人の死に対して反応薄くない?
俺の知らない過去で、人間との何かしらの関わりがあったとはいえ!ダメだろ!
治療が終わって、どうしたものかと思っていたら徐にバルドは持っていたレジャーシートを敷いてその上でお茶の用意を始めた。
「え?バルド?ここでお茶飲むの?」
「はい。皆さんはこの男が目覚めるまで待つのでしょう?どうせ待つのならお茶を飲みながらでも構わないのではと思いまして。」
どうしたの。バルド
いきなり空気読めないキャラになっちゃって。
そんなわけで、勇者(仮)、リュシアさん、ヴァイス、俺、バルドがレジャーシートに円になるように座り始めた。
木の擦れる音、カチャカチャといういつもは気にならないお茶を入れる時にする音が怖いぐらいとても響く。
「空気が重いわねえ」
口を開いたのは室長のバルドだった。
「仕方ないでしょう。良く分からない者に襲われた上に目が覚めないのですから。」
執事のバルドが淡々と、お茶を入れる手は止めず言葉を返す。
俺からしたら空気重くしてるのお前達なのだけれど?
「ん?どうかしましたか?」
バルドは何か感じたのか斜め上を見あげてその気配がする方を見る
視線の先には目の冷めない男と一緒に連れて来られた男がレジャーシートに座らず、立ったままこちらを険しい顔で見下ろしていた
「いや、あんたらおかしくねぇか?人ひとりが襲われてさ、さっきまでは生死をさ迷っていたんだ!それをこんな、ピクニックみたいな…っ!どうかしてるだろ!!!」
俺たちを見下ろしたまま怒鳴って、この良く分からない状況についてこられていないようだ
いや、ほんとその通りですよ。
俺もそう思う。
「ですが、どうにもすることが出来ないでしょう?」
バルドは冷めた口調で返す。
「いやだからって、な、何も茶を飲むことねぇだろ!」
やり取りを見ていた勇者様(仮)が間に割って入ると立っている男の方に向いた
「そうだな…お前の意見ももちろんだ。俺たちはたまたま居合わせただけだが、そこの執事の言う通りでもある。今はこの者の回復を待つ他ないと思う…いきなり巻き込まれたのだから難しいと思うが、男の顔色は良くなっているしただ眠っているだけだろう、」
草の上で横たわっておる男の方を見てから、規則正しい寝息か聞こえるのを確認しているようだった
「この者が目覚めた時にお前が落ち着いていた方が良いのではないか?」
座ったまま、男を見上げて優しく諭す。
微笑みこそないが口調が優しい。
その言葉を聞いて、腑に落ちはしないが
深呼吸をしてからドカッとレジャーシートの上に座った
「あんたらは人間か?」
「あぁ。」
「…そうか。まぁ種族なんて小さいことを気にしている訳じゃあ無いが、あんたらが人間で良かったよ。」
「あらぁ?私達はダメみたいな言い方じゃない?」
「ヴァイス」
バルドが低く名前を呼んで圧をかけたので、ここで争われたら困ると思って自分しか止める者がいないことに不安が過ぎる
かと言って、誰がこの2人を止められるのかと思うともうお父様に頼むしかないのでは?
「そんなことで喧嘩売らないで!」
「そうですよ。この方達と揉めたところで良いことなんてありません。」
何でこんなにもトゲがあるのか分からないけれど、何か思うことがあるのだろうか
お茶を入れる姿は相変わらず様になってるし、人数分のティーカップを出して慣れた手つきで1つずつ丁寧に淹れる。
なんで人数分あるの?とか細かいことはもう突っ込まないでおこう
「坊ちゃん、どうぞ」
「ありがとう」
うん。知ってはいるけどいい匂い
これが魔王国の地下にあとどれくらい残っているんだろうか。
早いとこ米作って、この茶葉も他のものも作りたい
とわいえ、なんとも言えない顔合わせと真横に横たわる男がいるという謎の組み合わせでお茶を飲む日が来るとは。
だがしかし、勇者様(仮)とまさかお茶ができる日が来るとは思わなかったので、正直ウキウキしている
さっきの諌め方見ました?
最高に勇者でしたよ。もうこの際、自分が勇者になれないので推すしかない!
「ん~良い香りねぇ」
「あぁ。作法は分からないので申し訳ないがそのままいただく」
「構いませんよ。美味しく飲んでいただければ」
「相変わらず美味しいわね」
「こんなの初めて飲むが、身体が温まるな。ホッとする」
推しが!同じもの飲んでる!
バルドグッジョブ!
なんだかんだで空気が良くなったんじゃないか?
「…あんたらに助けてもらったのに、さっきはすまねえな。」
「なあに?懺悔タイム?」
「ヴァイス!喧嘩を売らないの!」
「私は何もしてはいませんが、全ては坊ちゃんのお力ですので。坊ちゃんに感謝してください。」
「え?そうなのか?このガキが?」
シャキン
「のぅわぁああーーー!?」
凄い速さで何処から出したのか分からない剣と、毒々しい長い爪が男の首にあと数ミリで到達しそうだった
むしろ剣の方は少し刺さってるっぽかった。
「もう一度言ったら首とさよならですよ」
「ほんとよお?私達わりと短気よ」
「やめろー!誰もがお前達が短気だと思ってるよ!」
「坊ちゃん。止めないでください」
「あらでも後ろから抱きつかれてるのは幸せよ?」
本当、何なの?!
バルドって止める側じゃなかったの?
この従兄弟達は全くもう!
俺は必死に2人を止めようとして引っ張るがビクともしなくてショックだ!岩かよ!
「わ、悪かったな…。えーっと坊ちゃん?」
「ルシアンと言います。家の者達がすみませんでした。お怪我はないですか?」
少し血が出てる気がするが顔面蒼白な本人はゴシゴシと拭いて自分で止血しはじめた。
本当に申し訳ない。俺がなにか治癒しようとするとあの二人がまたうるさそうだから
心の中で土下座した。
「あぁ。大丈夫だ…。俺はドンゴ。名前で呼んだ瞬間首が飛びそうだから坊ちゃんと呼ばせてもらう(まだ睨まれてるしな)。あんた達魔族だろう?」
「そうです。魔族は初めてですか?」
「いんや、俺が商売してる国にもたくさんいる」
「そうですか(なんだかホッとするな)」
他の国に行ったこと無かったし、この国に着いてからは変人にしか会ってないしな。
魔族の立ち位置が自分の中ではまだ分からないので、人間と呼ばれる人たちにはどう思われているのか不安だった
…あれ?何か忘れてる?
「ちょっと待ってくれ」
「あ、ぁあ貴方達って魔族なの?!」
「そうよぉ?なあに?今更?」
ん?なんだか様子がおかしい。
俺たちのやり取りを見守ってくれていると思っていた勇者様(仮)とリュシアさんが、魔族という単語に反応しているらしかった
なんだろう。
やはり恐れられる存在なのか?俺の思うとおりこの国では場所によっては討伐対象なのかもしれない
「見たら分かるでしょお?」
「そうだな。俺も詳しくはねえがこの耳といい目の色といい間違いないだろ」
ヴァイスは如何にもな顔で、むしろ勇者様(仮)たちを怪訝な目で見ていたしドンゴさんは当たり前のように魔族の特徴を口にしていた
「ちなみにこれは魔王国で採れた茶葉でいれたお茶です。」
「「え?」」
どうしよう。ザワつく
俺が1番恐れていたことが実現してしまうんじゃないだろうか
読んでくださりありがとうございます!
久々の更新になってしまいましたが、これからまた更新再開していきますのでよろしくお願いいたします!
次回も是非よろしくお願いします!
評価、暖かいコメントいただけましたら幸いです!




