第31話 俺の情緒が!
木の間から光が燦燦と降り注ぐ。
森の中の大きな空間に静けさが余計に目立つ
あまりにも突然に起こった出来事に頭がついていかない。
スローモーションで膝から崩れ落ちて項垂れた俺をとても心配そうに話かけくれたこの2人組の顔が見れない。
さっきまでは木を植えることだけを考えたが、幸いにも日本語で書いたからか落書きでもしていると思われているに違いない。
チラリと上を向くと、金髪サラサラストレートで綺麗な紺色の瞳のイケメンと目が合った。
散々 顔面偏差値高めの方たちに囲まれているから、もう慣れたもんだと思ったが この人が勇者かもしれないと思ったら特殊効果が発動して、終始キラキラエフェクトが掛かっていた。
腰に手をあててるだけなのにかっこいい。
サラサラと靡く髪。腰の剣。佇まいが最早勇者。
「少年、」
「な、なんでしょうか」
勇者(仮)に話しかけられてしまった!
声までイイ!なんでだ!
確かに俺も顔はイイ。魔王の子だし!王子だし!
だがまだ6歳!この綺麗な女性は愛でてはくれるが愛してはくれないだろう。
せめてあと20年くらい後に会いたかった…
いや違くて!俺が勇者になりたかったんだけど?!
「何処からきたんだ?1人で迷いこんだのか?」
「あ、いえ。さっきまで一緒だったのですが離れたというか。」
心配してくれてる!勇者(仮)が!俺を!
ダメだ!絆されるな!
どうしてもミーハーな気持ちが抑えられない…
「そうなのぉ?来るまでは誰とも会わなかったけれど…1人で怖かったんぢゃなあい?」
ほんと美女!胸大きい!ありがとう神様!胸大きい!神様ー!!
魔王国に転生してから顔がいい男ばっかりで唯一女性といえば母上とメイくらいだったから、この国って女性いるの?って疑ってたんだよな!
「あ、え、いや。自分から離れたので全然、大丈夫、です」
くぅ。
転生前で話してたのはお母さんみたいな人たちばかりだったから、女性の免疫がない
むしろこんな美人と話せる世界線が存在したことに感謝しかない
もしかして恋愛ターンあったりする?
…あー待てよ?勇者パーティだとしたらもうここで成り立ってるのか
…やっぱり俺がそれやりたかったんだけど?!
こんな美男美女でカップル成立したら無理ぢゃん!
どっちかの性格が破綻してくれてないと無理ぢゃん!
ちくしょおぉおお!
そっち!俺が行きたかったのそっち!そっち側!
明らさまに落ち込んでしまっているがそれどころぢゃない。こっちは転生に夢みて日々を過ごしてきたんだからな!
ダンッと地面を叩いて、悔しさをぶつけた。
「うぉ?!どうした少年!」
「今どきの子は情緒不安定っていうからねぇ」
「そうなのか?悩みがあるなら聞くぞ?言ってみろ。」
ぐっ。
心までが勇者だというのか?
カッコよすぎる
…だがまだ望はある。自分が勇者と思ってるだけで実はただの通りすがりのカップルだったという世界線も捨てきれないだろう。
よし。
そう思えば割と気持ちが楽だな
「それにしてもぉ、なんだか変わった子ねえ」
「ん?どういうことだ?」
勇者(仮)は腕を組んでいたが、いつまでも打ちひしがれている俺を放っておけないらしく、手を差し伸べてくれた
この手を取れと?
こっちは悔しくてちょっと距離を置きたいとか考えているのに?
だがこの状況も傍から見たら良くないので、お言葉に甘えて手を取ることにした
ゴツゴツとした手。
俺は剣を持ったことは無いが、手にマメがたくさんあることは見た目6歳の俺でもわかる。
剣でできたものかは分からないが、こんなサラサラ金髪イケメンで 苦労もせずに成り上がったわけではないと知ってしまった。
転生して無双でヒャッハーを想像していたので、なんだか恥ずかしい気持ちになる
まだ勇者だとは確定していないが、もしこの人達が魔王国に青い土を撒いた張本人なら胸が苦しくなるから、出来れば別人であってくれと願わずにはいられない。
「坊ちゃん!!!」
すごい剣幕で執事がやってくるが、そんなの今の俺には何の脅威でもない。
「ぼぼぼぼ坊ちゃんっ!!」
目が血走ってる執事にすごい速さで脇の下に手を入れて抱きあげられた。
ガクガクと揺さぶられて脳が揺れるが、もうそれどころぢゃない
「泣いてるんですか?!誰にやられたんですか?!〇しましょう!」
理由も聞かずに〇すってなんて理不尽なんだろうか、この執事は。
いつもの冷静さが全くなくて考え方が物騒だな
勇者になりたかったけど現実突きつけられて涙が出るんです。なんて通じないだろう
2人のやり取りをみている勇者(仮)達は蚊帳の外だった。
「なんなんだ?」
「うーん、全く分からないけどぉ。保護者なんぢゃない?」
自分の前からすごい勢いで抱えていってしまった男に怪訝な声で聞いてみる。
「オイ、その少年の親か何かか?」
ギロリと勇者(仮)達を睨みながら、ほぼ白目のルシアンをぎゅっと抱きかかえて
「…親だなんて恐れ多いです。私はこの方の世話役に過ぎません。貴方たちはなんですか?どうしてココに?」
圧を分かるように向けて凄むように話す
「私たちはあ、ちょうどバルゼルムに向かう途中だったのよぉ。そうしたらなんか光ってるのが見えたから魔物かと思って来てみたらそこの少年がいたのよお。」
「あぁ。魔物であれば倒さねばならんからな。少年が1人だったので保護しようと思ったまでだ。」
くぅう。優しいぃいぃ
半泣きな俺はバルドに抱えられながらも耳だけはバッチリで、なんでいるんだろうと思っていたが俺が誰もいないと思ってスキルばんばん使っていたから気づかれたのか。
「…そうでしたか。思い違いをしてしまい申し訳ございません。我が主を保護しようとしてくださり大変ありがとうございました。」
先程とは180度態度を変えて、バルドは深々と頭を下げた。
その対応にピリピリしていた空気も少し和らいでユーリス達も顔を見合せて頷く
「問題ない。もう迷子になるなよ!」
「そうよぉ!気をつけなさいねぇ」
去り際まで完璧…勇者の去り方…
頭の1部をくれる主人公みたい
「貴方方はこれからバルゼルムに向かうのですよね?」
俺らに背を向きかけていた勇者(仮)達に俺を抱えたままのバルドが話かけた
「ん?あぁ、そうだが?」
「何をされに行くか聞いても?」
お互いに目で合図を送って大丈夫だと判断したのか教えてくれた
「知り合いを探しに行くのよぉ」
「ほぅ。知り合いですか」
何かを確認したいのかバルドは少し考えこんでいる
その間、勇者(仮)達は先を急ごうとせず、バルドの問いかけにハテナマークな顔をして待っているようだった。
あぁもうほんと、この優しい方達がどうか勇者でありませんように!!
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ここまで読んでいただきありがとうございました!
ルシアンの情緒が大変なことになってまいりました。
勇者であってほしいような、犯人ならなってほしくないような。
そんなこんなで次回はヴァイス編です。
そして、たくさん応援していただき大変恐縮です(泣)
応援を励みにこれからも頑張りますので、引き続きよろしくお願いいたします!
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