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戦えない魔王の息子ですが、種蒔きスキルで魔王国を救いたい  作者: NAar


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第25話 漆黒の翼を持つものだけが入れるうんたらかんたら

雲を抜けると、隣国の街が空から見えた。


巨大な城壁と壮麗な門が視界いっぱいに広がる。

赤茶の石で積まれた城壁は陽光を反射し、遠くからでも威厳を感じさせる。


バルド達が高度を下げるにつれ、下の街並みがはっきり見えてきた。


「うわぁ……門が大きい!!」


ルシアンの声はワクワクで上ずっていた。



バルドは風を読みながら姿勢を安定させ

「この国は“交易国家”でもありますから、門は大きく、目立つように造られているのです」


ロークは短く呟く。

「……派手」


「ルシアンちゃん、下も見ないと危ないわよぉ」

城門前の着陸場へふわりと降り立った。

石畳に着地した瞬間、乗っていた4人の足元に影が落ちる。

コウモリ達はまだ荷物を持ってくれていて、どうやら一緒に行動してくれそうだったから全員手ぶらで歩けることは有難い。


入国管理官が近寄ってきたので緊張感が走って俺は思う。

ここで異世界あるあるが待っている…!

そう!入国審査で躓き入れないというフラグ!


鎧をまとった入国管理兵たちにルシアンは一瞬身構えた。1歩1歩なにかこちらを値踏みするような鋭い目に俺はたじろいでしまう

ヴァイスに抱えられたままなので隠れることは出来ないがヴァイスの肩に乗せて掴むシャツに無意識に力が入る

「大丈夫よぉ、ルシアンちゃん」

めっちゃ恥ずかしい!

中身32歳がビビり散らかしてることがバレてしまっている!


「うふふ、バルドはこういうとこ抜かりないからね」


ゆっくりと近くによって手には書類?らしきものを持ち上から下まで確認されたあと

管理兵たちはすぐに深く頭を下げた。


「魔王国よりの伝書蝙蝠、確かに受領しております。

入国の許可はすでに通っておりますので、どうぞお進みください」




ルシアンはその場で肩の力が抜けた。

“国境イベントでトラブル”という絶望的未来のフラグが回避された瞬間だった。


バルドが微笑む。

「事前の手配をして正解でしたね」

伝書鳩じゃなくて蝙蝠なの、なんか魔王国っぽくていいなぁ

「ね?言ったでしょう?」

ふふんと誇らしげなヴァイスに、なんでヴァイスが誇らしげなのか良く分からないが、言ったことは確かだった。




「伝書蝙蝠は飛行速度と警戒性能が高いので実用的なのですよ」


ロークは淡々と頷いた。

「……有能」



入国審査も無事通り、さっそく街に足を踏み入れる。

赤茶の屋根が並び、噴水広場には人の賑わい。

通りには露店がぎっしり並び、服屋、香辛料、鉄製玩具……

色も匂いも音も、街そのものが生きているようだった。


「うわあっ……!めちゃくちゃ活気がある!!」


ルシアンが思わず声を上げる。

魔王国とはまったく違う、明るく彩度の高い文化が目の前にあった。


バルドは冷静に景色を見渡す。

「交易の中心というだけあり、やはり人と物の流れが大きい国ですね」


ロークは無表情のまま一言。

「……賑やか」




大通りを抜け、石畳の坂を登る。

建物が密集していた市街地から一変し、

坂の上には“職人街”が広がっていた。


鉄を打つ音、火の匂い、木材の粉塵。

中央にはひときわ目立つ大きな工房。


扉の上に誇らしげに刻まれている。


──《鍛冶工房・エルネスト・ロム》



「坊ちゃん、あそこに見えるのが今日の目的地になります。」

「すごい大きい!」

遠くからでも良く分かる。きっと俺の身長では近くに寄ったら更に見上げてしまうだろう。

「…?誰か立ってる?」

「………坊ちゃん。あまり深く考えずに今から起こること、会話の内容は流してください」

「え?どういうこと?」

「行けば嫌でも分かることになりますが、今から会う方は最早魔族ではないと思ってください。別の、未知の、生物です」


全く歩こうとしないバルドが珍しい。

そして会う相手はどうやら魔族だそう


とりあえず先に進まないと俺の米がどんどん遠のいてしまうので、半ば強引にバルドをロークと一緒に引っ張って連れていくという不思議な図が出来あがった。





近づくと巨大な工房の扉の前で、ひとりの男が それはもうドラマチックに立っていた。




片腕を扉へ当て、逆の手で顔半分を覆いながら笑っている。


「……はぁ……来てしまったか。運命の輪が、また回り出す……!」


誰だか分からないが勝手に話はじめた。

呆気にとられてとりあえず待ってみることにしたが俺たちに話かけているのか?


「……聞け。

この扉の向こうは、“ただの作業場”じゃない。

俺の魂が削れ、砕け、燃え尽きてなお光を放つ“美の地獄”だ……!」


「え?なに?誰?地獄なの!?光なの!?どっち!?」


「両方ということでしょう」

もう慣れているのか、バルドにはこの言葉の意味が分かるようなので無表情で淡々と通訳し始めた。

バルドの目が死んでるの初めてみたな


「俺の名は――エルネスト・ロイ!

鍛冶の闇に選ばれし《宿命の造形者クリエイター》だ!!」


「要は鍛冶職人です」


「臼と杵……フッ、あれはただの道具ではない!“世界の理ことわり”を噛み砕き、文明を切り開く《牙》。俺の封じられし右手が疼いてやがる……完成を望んでいる!!」


「右手!?」


「やる気がある、という意味です」


エルネストは髪をかきあげるようにして振り返り、ルシアンへビシッと指を向けた。


「貴様……!その瞳……読めるぞ……!

“作りたい”という純粋な願望ッ!!

その強さ!!悪くない!!いい魂だッ!!」


「何その魂査定!?初対面でまだ何も言ってないけど!」

「坊ちゃんの目的が純粋で良い、と言っています」


ねぇ、いつ入れるの?ずっと外なんだが?


エルネストは片足を踏み込み、 ドラマチック に扉に手を押し当てる。


「急いではいけない…この扉の向こうは《禁忌の工房パンデモニアム》……!炎が咆哮し、鉄が軌跡を描き、木が魂の歌を上げる!!

“漆黒の翼”を持つ者だけが辿り着ける、創造の闇ッ!!」

「漆黒の翼って何!?そろそろツッコミ入れるの大変になってきたんだけど」


「腕のある職人だけが入れる場所という意味です」

「そ、そうなの?ロークってこと?」


「…入る」

宿命の造形者の事は無視して、勝手にギィィと扉を開けようとするローク

「開けるなァァァァァァァ!!!」

それをバァンッと勢いよく体当たりで閉めた


「演出をしたかったそうですね」

「……長い」


エルネストは叫びながらも、すぐに気を取り直し


「だが!!いいだろう!!!演出をぶち壊すその冷徹!!《漆黒の翼》を持たずとも闇に踏み込む、その胆力……存分に振る舞うがいい!!」

「ああもう!!」

分けが分からなすぎて頭をかきむしっていたらバルドに宥められた

「ローク殿の無駄のない行動力を気に入ったという意味ですよ、坊ちゃん」


魔王国でここに来るのを渋ってた理由が分かった

死んだ目をして遠くを見つめるバルドを見て、自分も心を閉ざして向き合わなければいけないんだと悟った。

「…分かったよ、バルド」

目を瞑ってから現実を見るためにまた開く


「よし、来い!!!」


「さぁ!!工房へ入れ!!臼と杵という“文明の牙”をこの世に解き放つ!!

《創造の契約クラフト・オブ・オーダー》を結ぶのは……闇より舞い降りた造形者の俺と貴様だ、少年ッ!!!」


「バルド、通訳!」

「一緒に作りたい、と言っています」


一緒にやりたいだと?それはきっとえーっと

「や、闇より出でしあのー、えー…漆黒の…鎧を纏いし…うーん」

「坊ちゃん。無理に合わせる必要はないですよ」

ふるふると首を振るバルド


「…うん、だよね」

俺にはそっちの世界には行けそうにもないが、多分この人が会う予定の人物だということは間違いなさそうだ


とりあえず中に入れてくれるのを待つことにした。


ロークは無言で歩き始めたが

エルネストは髪をなびかせながら叫ぶ。


「今日から俺たちの《牙の革命クラフト・ドミネーション》が開幕する!!」


「入れと言ってますね」




「…うん。ぢゃあ行こうか」

こうして俺達は《禁忌の工房パンデモニアム》に足を踏み入れた




「これから見るものは決して目を開けてはいけないうんたらかんたら」




「目を開けられなかったら見れないんだが?」






******

第25話

読んでくださってありがとうございました!

もし今回の展開が「気になる!」「次が見たい!」と感じてもらえたら、

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