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社畜の俺が転生したら愛され王子になったので、魔王国を救います  作者: NAar


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第22話 バルドのおつかい①


謎の宴が闘技場で開催されていたので、部屋に戻ってきた。



バルドにおつかいを頼んだのは

田んぼが成功して稲作った後、どうやって脱穀するかだ。

脱穀というのは稲の穂からお米の粒だけを外す作業のことをいう。

このあと精米して白米。という流れ。

脱穀する方法でちょっと昔の方法だけど臼と杵、その後に米を炊く為の飯盒をどうにか作れないか。とバルドにお願いしていた



頼んでおいてなんだが、自分の語彙力の無さのせいでバルドの想像力に頼りきりでちゃんと説明できた気がしない。



そのおつかいの結果を今、部屋に戻って聞いていたところだった。

「……飯盒というものは作れそうです。鍛冶屋が“似たようなのを昔見たことがある”と言って、なんとか形にできそうです。しかし──肝心の籾の殻を外す工程が問題で」


「え!飯盒作れるの?!あの説明でよくバルドも伝えてくれたね」

「ええ、坊ちゃんが一生懸命でしたので」

「そ、そんなに一生懸命だったかな?とにかく美味しいもの作る為にここは重要だったからかな」




バルドは真面目にうなずきつつ説明を続ける。

「殻を外すには、“うす”と“きね”が必要ということでしたね。思い浮かんだのは小麦を粉にする時と同じだったということです。」


「おお!パン作るときのアレか!」

ルシアンの目がぱっと明るくなる。


どこから出したのか分からなかったがバルドの両手には粉々になった何かの破片がたくさんあった。

…いつ出したの?


バルドがゆっくり説明する。

「臼というのは、こうして穀物を入れる“器”のようなものですよね?大きな鉢のような形で、中に麦や米を入れ──」


バルドは別の何かを手に取って見せた。


「そして、杵で上から突いたり、押し潰したりして、殻や粒を砕く道具。…合っておりますか?」


本当は稲刈り・脱穀・籾摺りを一度にできる機械があればいいんだけどなー


「合ってる!人の力で殻を一粒一粒むくのはとんでもない時間がかかるからね。こうやってまとめて力を加えることで一度に処理できるのは大事だ」


ルシアンはうんうんと大げさに頷く。


「実はですね、坊ちゃんからいただいた稲で試してみたのです。」


「おお、仕事早い!結果は?」

さすがだよバルド!おつかいだけではなくて、俺がやりたいことを汲み取って行動してくれるなんて!



すっと、俺の目の前に両手をひろげて

「……すると臼と杵が砕けました」


「ええぇぇぇぇぇぇぇ!?」

臼と杵が砕けるの?稲ぢゃなくて?



「ん?待って。その手に持ってるのって…」


バルドは破片を見つめながら続ける。

「麦よりもこの坊ちゃんが作った稲というものの殻は硬いらしいのです。麦用の臼と杵は力のかかり方が違い、耐えられなかったのでしょう」



「えー、まさかそんな硬いとは思わなかったな。

…ってそんなことある?!」

どうやら臼と杵だったらしい


「…もしかしたら力加減を間違えたかも、しれません」


全然バルドと目線が合わない


これは…どっちが原因か分からないな

稲が強かったのか、バルドの力が強かったのか


まあでも

「じゃあ“米専用の臼と杵”が必要だってことだね」


壊れてしまったものは仕方がない!

前の会社でも後輩がどれだけやらかしたのを責めずに耐えたか。むしろ責める時間が惜しい!とさえ思うようになったのがここにきてまたその気持ちになるとは。



粉々になった臼と杵だった破片をポケットにしまい見なかったことにしてほしそうだった。



ウンウン、分かるよ。俺もそういうことあったよ。

粉々にしたことはないけどな!


気をとりなおして。

「麦のときは、“殻を叩き割って粉にする”のが目的だけど──米は違うんだよね?」


「…はい!米は“殻だけ外して、中身は粒のまま残す”必要があります。

麦は粉になるまで砕きますが、稲はこの中身もそのままにしたいのですよね?」


「そうか。目的がそもそも違うのか。だから麦用の臼では壊れちゃったのか」


「!!!!ええ。“力のかけ方”が全く違うのです!坊ちゃん!」


なんだか前のめりなバルド。

ルシアンは腕を組み、納得したように言う。


「つまり──米は“優しく外側だけ壊す”、麦は“中まで全部砕く”。用途が違うから装備も違う」


「まさにその通りでございます」

流石坊ちゃん!となんだかすごい褒めてくれる


「しかし──問題は作れる職人が今の魔王国にはいないのです」


「……いない?」


「昔はいたのですが、戦で失われてしまいました。木工も、石工も……」


さっきと違い少し俯いて話すバルドは、どこか切ない感じだった

他国との争いのことは俺には分からないが、魔王国に攻めて来た勇者といい 何度も大変な時をくぐり抜けぬけてきたバルドが、亡くなってしまった民を思う気持ちがなんだかその分だけ、今の民を守ろうとする強さになっているように感じた。



「うーん、臼に変わるものを考える?…他の国に頼むことってできるの??」


「でき…ます。」

口に手をあてて考える振りをするバルドはなんだか歯切れが悪かった。


「バルド?」


「頼めるには頼めるのですが…うーん」


これが、さっき闘技場付近でバルドみせた神妙な顔に繋がると悟った。


「あんまり会いたくは無いのですが、致し方ないですね。」


どうやら作れる人物に心当たりがあるらしかったが渋々という感じだ

「結構、変な人だったりするの?」


「変、どころではないです。変人です。」


顔から笑顔が消えて、その変人のことを思い出すバルドの顔は青ざめていた




……なんか会うの嫌だな。

会ったことないのに申し訳ないけど。



今日はもう遅いとのことで、夕飯を食べてまた明日ということになった




******

第22話読んでくださりありがとうございます!


米食べたいだけなんですけどね!


次回もよろしくお願いします!

評価、暖かいコメントいただけましたら幸いです!

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