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社畜の俺が転生したら愛され王子になったので、魔王国を救います  作者: NAar


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17/23

第17話 設定盛り盛り





昨日は色々あったな。

あまり良いことばかりでは無かったが、この国での自分の立ち位置を改めて確認できたのは勉強になった。

人からどう思われようと知らんというのは、ブラック企業にいたらそんなのいちいち構ってらない感覚があるからだろう。俯瞰してみれるのはこれまたブラック企業にいたからか…

なんだかそれはそれで思うことあるなあ


第2部隊の処罰はどうなったのかすごい気になるが、ヴァイスとサイさんが任せてほしいとのことだった

俺に出来ることは今も種蒔きの準備なのでとりあえず報告を待つことにした。



今日は、田んぼに向けてもそうだが途中までになってた花の方とニジンとはまた別の野菜を植えたいので拡張された畑を1人でならしていた。

メイは




「オイ」

後ろの方で何やら聞こえたが、もくもくと土を耕していた。

ここまでやったら最後までやらないと、明日もまたやりたいことあるしな。

名前を呼ばれた訳ではないのでまあ、いいか。


「オイ貴様。」

口悪いな。


「おい。貴様、そこのお前だ。こっち向け」

え。俺?

自分に話かけられているとは思いたくなくて振り向かないでいたらどうやら俺に話しかけていたようだ。

そもそも6歳に対してその呼び方どうなの。とか、後輩に対して目上に対する態度とか、お客様に対しての気遣いとか口うるさく言ってたなあと過去を思い出す。


「聞こえてるのか。オイ貴様!」

なんかうるさいな。


振り向くか悩むところだが、このまま放置してもだんだん大きくなる声に作業が進まなそうなので、応えることにした。

桑を地面に置いて、ふぅと一息。


「…なんでしょう?」

ゆっくり振り返えって、被っていた麦わら帽子を軽く上げるとこれまた綺麗な顔した長身の男が、目の前に立っていた。


薄いピンクの綺麗な髪に長いアシンメトリーの前髪はやや目にかかってはいるものの そこから覗く濃いピンクの瞳は口の悪さが無ければ整った顔に良く似合っていた。

少し猫目気味の目と頭にはふよんと頭のてっぺんから一束触覚が揺れていたのはなんだか可愛かった。


「貴様だな、俺の可愛い妹を誑かしているやつは。万死に値する」


否。全く可愛くない

むしろ俺のハーレムフラグの無さといったら、転生してから1ミリも無いことを嘆いているくらいだ。

そんな俺が誑かす?どうやって?誰を?

どこ!フラグ立ってるなら教えてよ!


「聞いてるのか、貴様。オイ」


この人、これしか言えないのかな

「すみません。大変申し上げにくいのですが、人違いかと思われます。畑を耕して種を蒔くことしかしてきてないので」

困ったように眉を下げて、頬をかきながら伝える。


「…ふん。分かりやすい嘘だな。」

シャキンッと細くて薄い剣を突きつけられた。

バルドが見たらこの人死んでしまうんぢゃないか?


「貴様が妹を誑かしてる証拠ならある。そこら辺にいる魔族に聞いたからな、それでもしらばっくれるのか?」

「話、聞いてます?」

この手のイケメンはダメだ。転生漫画でもたまに出没する”何故か全く聞こえない設定”が発動している気がする。


魔族とやらは、俺の事を知っている人物なのか。

ふむ。と口に手を当て

「ではまず、その方々にお会いして誤解を解いた方が良さそうですね。案内頼めますか?」


「…貴様、俺が嘘をついているとでも?」

キラリと切っ先を眉間に近づけて見下したように近づけてきた


ダメだ。オートで話しが聞こえない設定が発動している。なんだかめんどくさいな。

「とんでもありません。ですから状況確認をした方がより明確にその”妹”さんとやらが誰なのかが分かるかと、、、」


「妹と呼ぶな!妹と呼んでいいのは、兄の俺ただ一人!」


めんどくせーっ!!だいぶめんどくさいぞこれは!


「話し合いは無理そうだな、貴様をここで倒して妹とくっつけないようにしてやる!」


だめだこりゃ。

話し合いが無理そうなのは激しく同意だ

それこっちのセリフだけどな!!と内心突っ込みながらも、言えないでいると向こうから何やら音がする


「ここであったが100年目ー!今日こそぶっ〇す!!」

物騒な言葉と、転生先でもこのセリフ聞くとは思わなかったと感動していたら周りを囲まれた。

知らない部族だな…


「逃げられたと思ったのか、この野郎」

「フン。こんな所までよく来たな」

どうやら、こちらのイケメンのお客様らしい。俺には関係ないから去りたいが、さっきまで耕していた畑を踏み荒らされ内心穏やかではない。


3メートルはあるかと思われる、大きな男は棍棒のようなものを振りかざして轟音と共に振り下ろした。

その瞬間、何が起きたか分からないが俺は誰かに抱えられたらしく攻撃を免れた。

「ここにおりましたか。探しましたよ、坊ちゃん」

「バルドっ!!」

優しい口調で、ニッコリと

片手で俺を支えながらジャンプすると、少し離れたところに着地した。


攻撃から逃れたところで、ことの次第を見守ると

イケメンが地面に埋まっていた。

「って、えーー!だいたい話聞かないイケメン設定は戦闘がバカ強いと相場は決まってるんぢゃないのか?!」


立ったまま垂直に地面に叩きつけられたらしく頭のてっぺんにある触覚だけが出ている。


「あわわわ。バルド、あれ誰だか分かる?」

「あぁ。あれは…」


こちらは動揺が隠せず、少し素が出てしまっていた。設定という単語もバルドは聞き流して(さすが俺の執事)淡々と状況を説明しようと言いかけたところで、埋もれた体を触覚を掴んで引き抜く魔王軍近接系最強メイド




「名をリーイン。メイの実の兄にあたります。」



え。兄??!お兄様??!

た、たしかにあの触覚 なんだか既視感だなーとか思ってたけど兄?!


「…あ。妹は触覚2本なんだ。」

そこに兄妹の繋がりを感じて納得した。


触覚ごと引き抜かれてさぞや痛いだろうと。

あれだけ話を聞かず、すぐ戦闘に持ち込もうとするくらいだ。妹とといえど戦いがはじまるのではとあわあわする。非戦闘員の俺からしたらドキドキが止まらない。



だが、引っこ抜かれた瞬間の当の本人はなんだか口角があがり満更でもなさそうな顔で身を委ねているようだった。



あ。こいつ”話を聞かないイケメンこじらせシスコン”だ。

設定盛りすぎだろ!!濃いわっ!!!!



一斉に襲いかかる謎の種族を見事な連携で完膚なきまでに返り討ちにする兄妹。

先程までの残念イケメンが何やらカッコよくみえる。1発で地面に埋まったのはどうやら見間違いだったらしい。



「大丈夫ですよ、あの種族は皆強いですから。ただリーインはそうですね。…メイの近くでないとただのゴミクズです。」

こっちの執事も口悪いな!!

俺を抱えて結界を貼りつつ、飛んでくる残党を結界で弾きながら教えてくれた。




「あぁ。畑がめちゃくちゃだ…」

戦闘で耕した畑がぐちゃぐちゃになるのを見て、終わったら耕し直してもらおうと決めて、ことの次第をみつめた。



「お労しい、坊ちゃん」

よよよと泣くそぶりをして目頭を抑えているが、この後貴方も もれなく直す側ですよ。といつ伝えようかと考えていたらどうやら戦闘は終わったらしい。


20人くらいはいたであろう輩は全て気を失っていた。


「ルシアン様!!!ご無事ですか!!!」

ピンクの双葉を揺らしながら駆け寄るメイドの姿がみえた。


「メイこそ、怪我は無かった?」

うん、大丈夫そうだ。

「私のようなものの心配を!!!懐の深さに恐れ入ります!!」

バルドの腕から流れるように自分の胸に抱きよせられるが、ミシミシッと骨が軋む音が聞こえてこちらはこれからご無事では無くなりそうだった。


「なんだ。やはりそいつも断罪対象だったか。よこせ、俺がトドメを刺す!」

「誰のことです?」

ギロりと何を言うんだこのバカ兄は。という目で見るが自分の腕の中で白目を向きかけているご主人様に途端にあわあわして

「っきゃーーーー!ルシアン様ー!お気をたしかに!」

高く掲げてガクガクさせながら揺らすが、 更に悪化させていることに気づかない。

「…まったく。脳筋馬鹿メイド、それ逆効果です。」


神よ、今加護使うべきぢゃない?と思いながら意識を手放す前に一言言わせて

「畑を、、、頼みます…。」ガクッ


「ルシアン様ーーーーー!!」

「とんだ猿芝居だな。軟弱者め」

「ハァ。いいからやりますよ。馬鹿兄妹、ここ一体を綺麗に耕すまで今日のご飯はありません。」

メイドからすかさずルシアンを奪いお姫様抱っこの形で抱えた。


「「??!!」」

「なんなのだこの者は!鬼のようなことを言うやつだな!」

「…私の上司。にして魔王城の最恐執事バルドさんです。馬鹿兄。ですが鬼なのは否定しません」

「脳筋駄メイド。聞こえてますよ。明日の朝食も要らないということでよろしかったでしょうか?」


「最高にして最上の上司!バルド様です!!」

「フン。妹がそういうのであればそうなのだな。仕方がない、俺もお前の元で働いてやる」


この兄妹、ほんと似てますね。


「…………寝言は寝て言うんですよ。メイ、落ちてたところに返してきてください。」

「だそうです。馬鹿。お帰りはあちらです。」

「??!兄だが?!馬鹿ではないわ!」

「自覚、あるんですね」

「俺が働くと言っているのだ!これほど心強いものはないだろう?!」

「戦闘力には全く困っておりませんので。そこだけ飛び抜けているので」

「んな!?」





そっと木の横に王子を寝かせて、枕を敷き、寒くないように薄手の掛け布団をお腹にかけ言われた仕事をさくさくこなす執事。

久しぶりの再開とは思えないほど、サバサバした感じで兄をいなしながらこちらも仕事を始めた。

聞いているのか!オイ!とずっと煩いが妹がやっているのをみて自分も手を動かす。

なんだかんだで妹がいたらできるのだ。




「この寝ているやつ、結局 誰なんだ?」

「このヴァルデンシュタイン国の第一王子であらせられるルシアン・アッシュ・フォン・ヴァルデンシュタイン様です。」

「?!!」

途端に口をパクパクさせて信じられない!あいつが?あれで??という顔で王子を見た。


今さらですか、このアホは。

ざくざくと手を休めることなく動かしながらため息をつく。



「また、騒がしくなりそうですね。坊ちゃん」

桑の棒の先端に顎をのせてチラリと、スヤスヤ眠る我が主の顔を見る。

彼が目を覚ました時、執事がもう一人増えているとは知る由もないだろう。と








******




第17話 読んでくださりありがとうございます!


全然種蒔けてませんね!


次回もよろしくお願いします!

評価、暖かいコメントいただけましたら幸いです!

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