1/7
プロローグ
目覚めれば、いつだって最初に目に飛び込んでくるのは錆びて元の色がわからなくなった古く、高さのある格子。薄暗い窓から見える空。私の手首かけられた、魔法によってできた手錠がついている限り、両の手はびくとも動かない。
そして、ただひっそりと存在感を消した古けれど品のある机に、メイドが用意したであろう綺麗に畳まれて、アイロンのかかった制服が置かれている。
少し日が昇った頃に、メイド長がこの地下牢までやって来て、私の手首にかけられた魔法を解く。
目に見えないような支配下に、今日もただ居る。
私に人間らしい感情はない。でも、憎しみや哀しみがあるのなら、いらないと思っている。それに、感じたくないという私の弱さの戒めでもある。感情なんて、きっと不純物。そう信じてきた。
あんな苦しみはもう感じたくなかった。
そして今日も、私は私であることを許されない。
まだ、太陽の日差しは、柔らかなものだった。私には不釣り合いなほどに。