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報告書4ページ「脱出」




 目的。地下からの脱出。


 ……警告。活動限界まで38分00秒。


「狭いけど、本当に大丈夫なの?」


 私がずっと持ち運んでいた金属製の十字架に空間を設けるよう指示を出し、地下ここで見つけた女の子を入れる。私の専用充電器棺だが一番安全な場所はこの大気圏突入にも高重圧にも耐えられ威力ある武器も防ぐこの十字架だけである。


「激しく揺れるとは思いますがそれだけは我慢して下さい。」


 返事はないが聞こえているはずだ。私も本当なら過度な接触や技術の提供や利用をしてはいけないがこの子の魔法は私に必要。自身の問題が解決すれば関わる事はなくなるから、あまり会話をしなくて良いかもしれない。


 十字架を背負い、私は走り出す。


 地下から階段。階段を上がり隠し門へ。


 隠し門へ出ると、通路は火の海となっていた。この建物は決して小さくはない。火の手を早くする為に点火薬や魔法などをも併用して隅々に火を放ったと、人工衛星の画像から推論できる。


 数十分前は薄暗かった通路が灯りをともし、ただし通れるなら通ってみろと火の海が訴える。アンドロイドは皮膚の火傷を恐れて考える。


「…………強い衝撃がきます。耐えてください。」


 返答有無関係なく十字架を前に突き出し、近くの木壁に向かって勢いよく地面を蹴った。


 木繊維が折れる音、そして壁を破壊した瞬間の音が辺り中響き、同時に私は外へ出る。


 死ななかった勢いは外に出てからの飛距離が大きい。着地するもそのまま生かし、一息休まず次の足を一歩大きく前へ前へ。


 外の風景も村に入った時と違い、夜景は青黒く星空。そんな中ほぼ全ての建築物は火の嵐の影響で村の地上周りは紅く熱のある光を放っていた。


「おい! まだいたぞ! 捕まえろ!!」


 火を放つ犯人の1人が声を上げる。目的を発見達成した為、後は逃げるだけ。見つかっても問題はない。


 逃走経路は建物まで来た道を遠回り無しにただ戻るだけ。途中で拾い物もあるからだ。


 火事犯達が私を捕まえようと接近しようとするがアンドロイドの速度に追いつける事は不可能。右へ左へ、十字架で振り払い回避しながら駆ける。何人かは私の速さに追いつける人間もいたが問題はない。


 場所は商いある市場。ここも火を着けられ売り商品にまで被害が及んでいる。それでも私はいくつかの品を拾う。それは人間の食べ物。加工された肉、果実、パン、十字架の中の人が口にできるのをあらかた手に入れて雑に十字架の中へ放り込んだ。


「え? ちょ? 肉? 酸っぱ!? さっきからな――。」


 十字架の扉を開ける度に彼女が何か言っているのだが今は反応ができない。そろそろ火事犯の目から巻かなければならない。


 市場を抜ければすぐそこは村の玄関出入り口。村から出るとすぐに林の中へ。できるだけ足跡を残さず、草や木にも傷を一切傷つけず痕跡も少ないまま遠くへ逃避。


 ……警告。活動限界まで4分04秒。


 私はようやく川がある場所へ足を止める。村からの距離も十分遠く追いかけて来ても私が()()するまでの時間猶予はある。


「おまたせしました。外に出ても良いです。」


 十字架の扉を解放。少々ムッと怒りを表す態度で彼女は十字架の暗闇から外の暗闇へ現れる。


「ちょっと……果物が潰れたりしてベトベトだよ……。それになんでお肉も一緒にされたから油でさらに気持ち悪い……。」


 彼女の事を気遣って十字架を振り回して怖い思いをさせないようにしていたが、流石に食料までは計算していなかった。十字架の中を見ると汁や肉油まみれで後で清掃しなければならない。


「お腹が空いておりましたら、それらを食べてください。……お願いがあります。あなたの魔法、電気系魔法を私に使ってください。」


 ふらふらとしている彼女は私の声を聞くと振り向き、片腕の指先が私の腹部に触れるまで探すような素振りをした。


「? なんでそんな事を?」


「詳しい事情は後で説明します。私は後1分で活動……気を失います。電気治療が必要な体なのです。」


「? 意味がわからないよ……。」


 警告。活動まで24秒。


「地下で起きた事を再行動して下さい。ただし、威力を下げた魔法を所望します。」


 ……活動限界。待機状態移行。情報報告は自動で送信します。




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