第30話 巨大な敵
グモモモモモモッ
ついには敵のゴーレムが立ち上がった。
巨大な体躯。
光術を全身にまとって輝いている。
しかもさっきまでより心持ち大きくない?
「いやいやいや。あれはさっきまでより大きいぞ」
戦神が肯定。
マルチアーマーFT-ZXは旧タイプと比べれば随分と大きな機体だ。
10メートルを超える機体なのに、相手は見上げても顔が見えない。
子供と大人、いやいやアリンコと象も違うだろうか。
ボガン
気付いたらもう光の速さでぶん殴られた。
デカいくせに早い。
なんだか威力もマシマシ。
FT-ZXはそのままはるか遠くの山脈まで吹っ飛ばされ、壁からズンズクズンズン山をくりぬいてしまい。
長いトンネルを超えるとそこは・・・遠くに街の明かりが見える。
辺境を辺境たらしめるには理由がある。
「これでこの世界の流通にも革命がおきますね!」
おっさんヤムダ。
NO!天気!
欲しいものが欲しい時に欲しい量手に入る。
そのためには物流の改革が必要だ。
「いいんだけどよ?山脈を貫いたトンネル。あれ10キロ以上あるんだが。暗闇のトンネルを10キロ歩くなんてどんな修行僧だよ?」
「そこはホラ。敵のゴーレムが光属性ってことで。アレをコウしてチョチョイのちょい、みたいな・・・」
「おうおう。そういうことならワシの出番かの?どうせならバランバランのパキンパキンしてシュシュシュのポン、でどうじゃ?」
技術のことなら機械のことなら俺に任せんかい!
言わんばかりに機械神が口をだす。
「あら?あの核を使えばこの世界の魔法技術でも・・・」
魔法神
「いいからさっさと終わらせようぜ。予約の時間前にシャワー浴びたいし」
「ボクおかし食べたいっ!!」
わちゃわちゃわちゃ
いろいろな神の声が右から左から。
誰も聞いちゃいない。
みんな自分勝手にしゃべるだけ。
本来であればひとりだけ神ではないただの熱い魂ヤマダが右往左往する場面なのだろう。
だがその彼はあたりまえのように自分勝手にシャベリ続ける。
なんだかスッカリNAKAMA!仲間に神も魂もないのだ。
そしてアイデアが止まらないのは営業マンの性であろう。
「鉄道。通しちゃいます?」
「現実的といえるかのお。客車を魔力障壁で囲ってしまえば、どんな魔素も毒気も関係ないし」
「どうせなら光の橋を渡して物質の瞬間移動装置を置いちゃえば?」
「おおそれがいい。どうやらコイツの核はそれくらいの性質をもっておろうし」
そんな雑談がやむことないチーム山田。
チームワークがいいといえる。
新しいアイデアはこういう時に生まれる・・・こともある。
ぴこん
山田以外の存在、つまり神々はいっせいに注意を向けた。
「ホレきたぞ?」
「きたきた」
「さっさとやっちゃおうよ」
敵のゴーレムから数十キロは吹っ飛ばされただろうか。
しかしそんな距離なんて光の速さなら一瞬だ。
敵の巨大ゴーレムはまさに一筋の光線となり、まっすぐにFT-ZXを貫いて止めを刺すために向かってくる。
だれもあせらない。
他の神々の気持ちはわからないけど。これだけの神々に囲まれているのだ。
おっさん山田、なんにもわかっていないのに大船にのったつもり。
あとは皆さんのお邪魔にならないようにね?
「さあっいくぞ山田っ!そしてNAKAMAのみんなっ!!」
光の速さで突き進んで斬る敵のゴーレムの拳が届くほんの数万分のイチの時間。
ネジまげられ引き延ばされた空間で、FT-ZXのコクピットにおさまるおっさんの体は黄金に輝いたっ!
「「「「「合っ体ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」」」」
「え」
輝きはFT-ZXの内側から強烈にはじけ四方へ広がる。
その様はまるで、黄金に輝く光の激流がFT-ZXという『殻』を中から打ち破って脱皮する瞬間なのだ!
パアアアアッ
バレリーナのように両手を天に向けてのばし、左右の足は交差して折り曲がり。しかし体幹の強さをかんじさせるピンッと筋が通った裸のおっさんの姿。
あえてもう一度書こうではないか!
若く筋肉質でピチピチの青年ヤムダの姿ではない、50を過ぎたるんで疲れ切った悲哀がただようおっさん、そう山田!おっさん山田、魂の姿なのだった!!
その体は全身から黄金の奔流をほとばしらせており、体中の皮膚も寂し気な毛髪もたるんだお腹も全てがゴールデンッ!!!
なんとおっさんは熱い魂を携えて生前の姿のまま神々の力で黄金に全身コーティングされたのだ。
さあ名乗りを上げろおっさん山田!
「「「「「FTヤマダここにブラリ参上っ!」」」」」
「え」
熱く燃え盛っていたハズのおっさんヤマダの魂、しかし瞬間で氷漬け。
凍ったバナナより固く冷たい。クギが打てる。
ちなみに参上の口上を述べたのは神々であってヤマダではない。戦神ほか神のみなさんだ。まるで5神がどこかの戦隊もののヒーローのように声をそろえたのだ!
ぶらり?
そっと下を見る。
たるんだお腹のさらに下。
ちなみにお腹はゴールデンだがつまんだらプニリと音がした。
うん。・・・ぷらり。
なぜだかおっさん山田の頭にはお花畑。
金色に輝く裸の自分。
子供のように無邪気に笑う。
走るたびにペチンペチンと太ももの内側を叩く
右に左に
ダンスダンスっ
お花畑の花弁が巻き上がり、おっさんを祝福してくれてるよう。
キャハハハハ
ウフフフフフ
楽し気な妖精たちの声が響くのであった。
はっ!?
完全に現実から逃避していたおっさん。
意識を飛ばしている場合じゃない、ここは戦場だぞ!
岩石に深く埋まっていたFTヤマダ、クルクルと片足で回ると周囲の障害物なんて一瞬で消えてなくなる。
もちろん武闘神がヤマダの体を操りいい仕事をしているのである。
思わず内またになり股間を隠そうとした手のひら、しかしおっさんの意思なんてポポイのポイ。指先までピンと伸びてフィギアスケーターのような美しいポーズ。
伸びた体で片足は水平まであがっている。
そう。
神々の見た目も動作のひとつひとつ、ふるまいの全ては美しい。
神々にはタプンタプン揺れる中年太りのお腹も、薄くたなびく毛髪も垂れ下がったお尻もシミだらけの皮膚も想像すらできない。
もちろん現在進行形でプランプランと空中を漂い居場所を探す哀愁ただようナニのことも!
「トウリャア!!」
そのまま空中で一回転すると地面に着地。
せまる光の拳に腕をのばすと
ドゴオンッ
世界中に超重量物同士が光速でぶつかりあう轟音が響き渡り、その衝撃は世界中を、そしてこの星全体をゆさぶったのである!!
かたや白く光る巨体ゴーレム
対するは黄金の輝きがまぶしい巨大なおっさん
手四つ。
真正面から互いの手を握って相手の手を握りつぶそうと力を籠める。
正面からの力比べ。
グイグイと握る姿勢は前傾していき、ついには互いの頭が激しくぶつかり合う。
それでも握る力を緩めることはない。
ふぁいっ!!!!
両手を広げたレフリー、いや創造神。なぜだか白黒のTシャツに黒いズボンですっかりレフリーの正装をしている。
試合開始のゴング前にいきなり始まった闘い、あわてて試合開始を宣言するかのよう。
ボディチェックも握手もなし。
だがそれもしょうがないだろう。
かたや岩石で出来てあらゆる金属に変化するゴーレム。言うなれば全身凶器。
かたや全身黄金に輝くおっさん山田。
ボディチェックでタイツの中に凶器が隠れされていないかチェックすることはできない。はいてないものはチェックできないのだから。
「さあ山田、本気の熱血魂だっ!」
「ヤマダっ!」
「やまだっ!」
「やまだーーーーーっ!!!!!!!」
スースーする股間が熱い魂を冷却する。
え?
ムリムリ。
せめてタイツくらい。
せめて。
いよいよクライマックスが近づいてきました




