第26話 しゅらばらばんば
ヒュインヒュインヒュイン
FT-ZXのコクピットでは目まぐるしく画面が切り替わり、コンマ数秒で次々と情報が処理されていく。
さきほどまでのゲヘヘヘ顔はなんとやら。
すっごくマジメで精悍な顔をしたパイロットがすべてを分析し高速で指示を出す。
そうだ。
エミイは前の世界ではエースパイロットで優秀なのだ。
画面をいくつも標準マークがうろついて、そのすべてが灼熱魔人を中心にとらえた瞬間。
「3・・2・・1・・FIREっ!」
いつかの月面コロニーでの膨大な光量とは異なり、まさに魔人ひとりをすっぽりと捉えた光の環が灼熱魔人を通り過ぎる。
バチュンッ
何かが瞬間で蒸発したような、弾ける音が聞こえただけ。
灼熱魔人がいたその場所には、底が見えない深い穴が空いているのだった。
ふらふらと降下いくFT-ZX。
全ての機器がオーバー・ヒート。赤い点滅がビービーとうるさい。
それでもパイロットを安全におろすため、思い出したように着くジェット噴射が落下の勢いを押しとどめて無事に着地。機体からは煙がシュウシュウあがり中の機器も限界の様子。
ハッチが開くとエミイは空を見上げた。
「さあ私たちにできることは終わったわ、あとはあなた次第よユーリ・エストラント!」
全てを完璧にこなす超人になんて興味ないの。
アタシに必要なのはオバカでどんくさくて恥知らずなおっさん成分なの。
シュルルルル、シュタン。
くるくる回って腰のホルスターにバチンとセットされたのは銃ほどの大きさだが四角い部品のよう。
機体から離れる際は携帯するようにAIから言われている。
ササササササッ
早い足取りでエミイが目指すその先には、すり鉢状に空いた穴と飛び散った暗黒の肉片。
その中央には頭から体を地中にさしこんだかのような人間と思われる物体がつきささっていた。
衝撃と摩擦熱で衣服はふっとび、素っ裸に鎧をつけた状態の男。
ハダカにエプロンではない。
ハダカにヨロイ。
なぜだか足はガニマタだ。
ズササササッ
滑り込んだロウアングルから携帯端末を構えるエミィ。
ピッと音がしたかと思うと、肩にとりつけた小型カメラのテッペンが赤く光った。
もちろん録画中。
腹筋バッキリからきわどい股下、太ももにフクラハギから足の小指の先まで。表から撮りながら上へとあがると、裏側をさがっていく。
たっぴり録画が終わると太ももからフクラハギへツツツッと指を這わす。
ビクンッビクンッ
条件反射で足が反応し、平泳ぎのようにガニ股の足が伸びては縮むを繰り返す。
その様をまた録画。
「さあ目覚めるのよ!いつまでもチンタラ眠ってんじゃないわっ!」
ヒュウウウウ
吸い込む空気が体中に気の力を練り上げる。
振り上げる腕。
「ハアッ!!」
振り下ろされる拳はまるで瓦割りのようにヤムダの股間を直撃したのだ!!
「アキャイイイィイィン!!!!!」
「安心して。峰打ちよ」
まるで推しと握手した手を洗いたくないように。ナニを殴った拳に純白のグロープをはくエミイ。感触を味わうかのように布越しにホホ摺りしてニヤけるのだ。。
誰か彼女を止めてほしい。
意識を取り戻させるため?そんなことしたら永遠に意識が戻らなくなるだろうに!!
拳を叩きつけるのは瓦。手刀で切り裂くのはビール瓶と相場が決まっている。やっていいことと悪いことがあるのだよ!
しかも峰打ちってどういう意味で言ってるのですかあなたは!
ついにはビクンビクンと震えるヤムダの足が力尽き、そのままダラリと垂れさがり地面に倒れこんだのであった。
・・・もちろんその様も録画。
「ホントにあれが創造神のよこした援軍?なのか??」
空中で呪文の詠唱が終わった魔導士は見てないフリをすることに決めたのだった。




