第12話 神々同士のとぼけあい
もくもくもく。
輝く雲の平原で人型の何かが二つ向き合って打ち合わせ中。
雲は雲のように見えるだけであり、何かは男のように見えるだけであり、結局すべてはそう見えるというだけの虚像である。
「じゃあ悪いけど頼むよ?あなたにしか頼めないんだから」
ニッコリ微笑む男は穏やかだが発する言葉は強制的だ。
まるでどこかの経営者かなにかのような。
「そりゃあ創造神様からの依頼とあっちゃヤリますけどね。ええ、拒否権なんてワタシにはありませんけど。でもずいぶんと肩入れしますね」
「そりゃあそうだよ。なにせこの時空世界の危機なんだもの」
この男トップである。
世界を造った神である創造神。
山田が勝手に雇用主で認定している相手。
「ヤマダくんが元に居た技術世界のモビルアーマーだよ?この魔法全盛のレトロ世界で動くわけないじゃない。キミに頼むしかないんだって」
全く違う時代の科学。動力源もないしAIも役にたたない。修理するパーツもないし、内部コアは人間が作れる技術ではない。
そのまま持ち込んでも動かせるハズもない。
創造神はそんな無理を"できる男"に依頼中。
「これは反発したり拒否したりしてるんじゃないですよ?そこは間違えないでくださいよ?」
漫画なら汗をかきながら必死で、という効果表現を使うところだ。
短気で強引な上司の押しに対して釘をさそうとする優秀な部下という場面。
「つまりこの世界の機械すべてを統括する機械神である私が、そのモビルなんとかに降臨すると。そして人間たちの操縦する通りに動かして音声ナビもして、壊れたらさも「そういう機能付き」に自分で直す、そういうことですか?」
確認という体で不平を言っているのだ。
この創造神ってば、ワシが永遠ともいえる膨大な機械たちを管理しているのを知らないはずがないのに。
あらゆる世界のあらゆる時系列に発生し朽果てる機械たちを管理し見守るのだ。
そんな目の回る忙しさの中でふって湧いた新しいタスクなのだ、不平のひとつも出る。
だがそんなことはわかった上で踏み倒すのは経営者の常である。
「目的はもっと壮大だよ?ヤマダご一行を導いて世界を救ってよ。ほら、あなたも神だからそういうの得意でしょ?」
ニッコリ笑っても目が全然笑ってない。
むしろ「これ以上グダグダ文句言わないよね?言ったらわかってるよね?」
オーラがパチパチと放電を放っているのは気のせいではない。
いや、いいけど。
でも俺は機械の神であって戦いの神とかじゃないんだけど。
機械で世界を革新するならやるよ?でも戦闘ロボットで世界救うって、ちょっと役割違うっていうか適所適材がズレてるよな創造神様も。
機械神、うかつであった。
内容が衝撃的で機械神の頭から抜けていたのだ。
相手の思考を読み取る技は圧倒的なレベル差が無ければ成立しない。
そして機械神は創造神とも直で会話するほどの上級神。できる神。
思考を読み取られることなんてまずない、だからこそ忘れていた。
その数少ない「読み取られる」相手が目の前の大神であることを・・・
「で?じゃあどうしろっつーの?んんん?」
腕組みして不機嫌そうにこめかみをトントンとたたき始める創造神。
機械神の心の中での不満を叩き潰すかのように、代案あるならあげてみろよオラと脅迫する。
あちゃあ、しまったなあ。
タラリと魂核に汗をかく機械神。取り繕う手段があろうはずもない。
相手にはこちらの心が読めて、自分は機械を愛する機械神。技術者系であり無骨なタイプ。うまいこと言って何とかするのは得意ではない。
「この世界で件のモビルアーマーを活動させられるのはキミしかいないんだから。それにあの機械を前の世界で見てたけど、人間にしてはなかなかどうして頑張ってるし。役に立つのじゃないかな?」
創造神は表情を和らげて前向きな発言を促した。
アメとムチのアメなのだが。
言われた方は「ハイやりますやってみせます」としか回答できないヤツ。
「そ、それでは私だけでなく戦神の力をお貸しいただきたい。魔法神と武闘神に守護神のお力もぜひ。私にできるのはそのモビルなんとかの力を万全に引き出すことだけす!戦いについては凡庸でございます!」
創造神の心は誰にも読むことはできない。トップだから。上がいないから。
だがもしそれができる存在がいるならば、神にあらざる「チッ」という舌打ちが聞こえただろう。もちろん顔に出す創造神ではない。
「ああ、それなら・・・そうするよ。「チームやまだ」には一人オーバースペックが混じってるしメンバーこれでいいよね?その子もほとんど神だし、神器を貸し出しておくから。今キミの言った神々には連絡つけといておくよみんな忙しいだろうけど。みんな忙しいだろうけど。機械神からの願いだからしょうがないよね!うーん、なかなか面白いチームだな」
右手的な何かを差し出す創造神、何となくシブシブとその手を握る機械神。
創造神の顔からは「商談成立っ!」オーラが輝いたが、機械神はドンヨリ。
2回言った。
みんな忙しいだろうって2回いった。
いや俺だって忙しいんだけど。
それになんだろうか。
忙しい神々に無理して手伝ってもらう、それはワシの願いのせいってことになってるし。
いつも通りの流れである。
そして創造神は押し付けと責任転嫁の上で機械神が物足りない顔をしていることは歯牙にもかける気がない。
だが機械神の感じる不安と違和感は当然だろう。
オーバー・スペックは人間も獣も魔獣も竜を含めても、普通に存在する生命体の限界を「超えた」存在だ。人間から見れば単騎で世界を滅ぼせる存在ではあるのだが、神から見れば初級神にも至らないひよっこでしかない。
この「チームやまだ」実際の闘いでは神未満のオーバースペック一体、創造神から派遣されるただのおっさん魂ヤマダ、そしてそのモビル何とかだけ。
このメンバーで「勝利させる」のが自分たちの仕事。相手次第では大層やっかいだ。
「勘違いしているんじゃない?これは次元間の大戦とかじゃなくて、現世の生命体たちが自分たちの世界の危機に立ち向かうだけの話だよ?」
いつの間にかティー・カップで湯気の立つ紅茶的な何かをすする創造神は、この話にすっかり興味がなくなっている。
「え?そういう話でしたか?それであればまあ・・・相手するのは数百年姿を見せていない魔王あたりですかな?」
「異次元の神族が灼熱魔人と暗黒竜を率いてこの時空を壊滅させようと攻めてくるってだけの話だから。きみも心配性だよね」
「それを次元間戦争というんじゃないですかね!!」
はてな、と首をかしげて笑う創造神は当然スルーなのであった。
いつも「珍道中」ご覧いただいてありがとうございます。
水砲3作目となる新作はじめました。
「神様に辿りつく少年 」
https://ncode.syosetu.com/n3839ki/
もともと珍道中はこの作品に合流させるつもりで書き始めたものだったのですが。テイストがずいぶん違う作品になりました。
「辿りつく少年」毎日更新してますぜひご覧下さいませ。




