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異世界ロボット珍道中 ~神に見込まれたおっさんが世界を救う~  作者: 水砲


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第11話 FT-ZX

エミールとサクは幼馴染だ。

二人とも両親が他種族同士の婚姻で研究者でもあるため共通点が多い。

それにサクもエミールも物おじすることがないタイプであり、種族を超えて二人はすぐに打ち解けた。


小さな子供であってもサクは大人の人間並みに力があったし、エミールは初級の精霊魔法を使うことができる。それに二人には守りの妖精がついていたので、両親は二人を好きに遊ばせるのだった。


その日はサクの住む家、ドワーフの武具製造の工房がついた家にエミールたちエルフ一家がやってきた。

子供たちは工房でできあがっていく魔法具を見たり、おとなりの納屋で製造器具を興味深げにみたり。


「ねえ、これって」


エミールが指さした先の棚にはスチール製の人形が鎮座していた。

ひざ丈くらいで人形としては大きめの何か。


サクでも女の子っぽい趣味があるのね?と考えたエミールはすぐにその考えを撤回することになる。

鋼で作られたその人形的な"何か"は愛玩動物や少女を模したものではない。

分厚い装甲の本体も太い腕や脚にも、そして空気抵抗を減らすためであろう扁平した頭部にも戦闘を行うための叡智が集結している。

鋼を活かした金属感のなめらかな曲線は光を鈍く跳ね返す。関節が曲げられるように工夫されていて曲げてみると噴射口のようなものが見える。


「ふふん。気づいたか?恰好いいだろう?」


鼻の麓を指でこすりながら自慢げに笑ってるから、サクにとってもかなりの自信作の様子。

元々この子はドワーフの娘で物を創作することに長けている。そしてこの場所には材料も機材もいくらでもある。


しかし、これは。

随分細部を省略してあるとはいえ。


「マルチアーマー・ファントムZX・・・」


思わずエミールの口からこぼれたのは、自分でも理解できない符号のような言葉であった。


そして言われたサクはビックリした顔でエミールを見つめてしまうが、さらに自分の口が勝手にしゃべる言葉にさらに驚く。


「そうだ。マルチアーマーのFT(ファントム)-ZXだ」


自分でも何を言ってるかわからない。

マルチアーマー?

ふぁんとむ?ぜっとえっくす?


何それ?


幼い美少女は二人して、お互い同じ名前を呼んだ。

お互いが意味をわからずに。でも一字一句同じ名前を。


「お、おまえ、何言ってんだ?」

「あんたこそ何よそれ?」


そしてお互いがその名前を呼ぶことに恐怖を憶え、おそるおそるふたりでギュウと抱き合ったその時。


ブインッ


金属加工で穴をあけただけのミニチュアFT-ZXのモノアイが光った。


「「ひっ!」」


お互いのほっぺとほっぺが変形するほどぴったりと引っ付きあったふたりは、恐怖で叫び声をあげることもできず縮み上がり、膝をつき・・・真っ白で何も見えない輝く空間に可愛らしいオツムを占拠された二人は、くっついたままで横にパタンと倒れてしまったのだった。


二人は夢をみる。


いつか、ここではないどこかの世界。

未来なのか過去なのか、この国なのか違う星なのか。

何にもわからない知らないどこか。


離れてむきあった二人の間でひとりの勇者が躍る。

顔はわからなくても強烈な印象、胸を打つ衝撃。

溢れる気持ち、与えられた感動や驚きの感情が伝わってくる。


勇者はリズミカルに踊り続ける、天へと伸ばした腕に自分達へのメッセージを込めて。


神騎兵をあやつり勇者を挟んで対峙する二人。そこに異変が起こる。

神の鉄槌が世界を包み、輝く世界が全ての視界も思考も奪いさり・・・


FT-ZXはあの時のエミールの神騎兵の名前。


サクが憧れ欲しくて欲しくてたまらなかった神騎兵の名前。



「・・・ねぇ・・・」


遠くから呼ばれている声で意識が浮上していく。

少しづつ自分の意識が体を登っていく。


「ねえ、あんた達」


ユサユサと体を揺らされて開いた目には、上から覗き込むように心配する二人の女性。


「「おおかっさん・・・」」


同時に母を呼び、ムギュとひっつけたお互いのほっぺの温かさに気付く。


「何やってんのよ二人して。いつまで経っても戻ってこないから心配したのよ?まさかこんなところで二人で昼寝なんて・・・あれ?」


母二人は、あらあらしょうがないわね、という顔をして微笑んだ。

二人のお尻の下には水たまりができて服を濡らしていたから。


「そんなにひっついて二人でよっぽど怖い夢でもみたのかしら。それとも神様か悪魔に出会ってビックリしちゃったのかしら?」


夢の中でどんな冒険をしたのかしら。

精霊の守りが穏やかに微笑んでいるから現実で危険な目には合っていないとわかる。ビックリした夢でもみたのだろうか。


「さあさあ、ふたりとも水浴びして着替えてきなさい?もうすぐごはんよぉ」


二人はこの後で大喧嘩するのだ。


どっちがお漏らしをしたかから始まり(ふたりともだったけれども擦り付け合った)、次に夢の中で敵同士だったせいでどちらが強いかの話になり(エミールの勝ち誇った顔にサクが食って掛かった)、最後に自分達に与えられた使命の役割についてもめる。そのまま取っ組み合いになったのだ。


この神託と呼ぶべき夢で二人は魂から理解した。

二人の前にいつかあの神騎士が現れる。操縦して勇者の助けとならなければならない。そのためには修理したり燃料を補給したりのメンテナンスも必要。


最大の問題は・・・このFT-ZXは主操縦者に対して動きが最適化されること。

つまりは「メインパイロットは誰か」をハッキリとさせる必要がある。


「アタイが絶対に乗る、乗りたくて欲しくてしょうがなかったんだ、アタイが乗るしかないんだ!」

「アンタね、あれはお告げの中でもアタシが乗ってたでしょうが!これはアタシに乗るように神様がお告げしてるのよ!」

「なにおう!」

「なによ!」


激しい言い合いの後から二人は何かにつけ張り合うことになる。


根っこは「どちらがメインパイロットにふさわしいか」


どちらが早く走れるか、どちらが早く登れるか、どちらが早く謎を説けるか、どちらが機械の修理が上手いか・・・・競いあう二人はある日同時に口に出した。


「先に千勝した方の言うことを一つだけきく」


別に10勝でも50勝でもよかったのだ。

でも「偶然のラッキーが続いて」決まるのはイヤだった。

そして口から同時に出たのが「千勝」。とにかく大きな数字、だって子供だから。


思い出にふけるサクは、結局はこうなったかとサッパリした気分であった。

お告げの中でこの神器を扱っていたのはエミールだ。

自分はいつまでもあこがれ続ける役割。

酷だなぁと思う。


結局二人の長いライバル関係は、パイロットとしてFT-ZXという機体の操作に慣れていたかどうかで決まったのであった。

おっさんが希望したのがSAKUの乗る陸戦アーマーであれば、勝ったのはまちがいなくサクの方だろう。


これもまた神の裁量なのであった。

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