008 人員異状なし。 機材・・・
さて船体の切り離し中、それはいきなり起こった。
戦闘ボットが全機切断作業を始めた後も、プローブドローンによる制御不能エリアの調査を続けていたのだが、エリア中央付近に居たプローブドローンの反応が消えたのだ。
直前まで何の問題も無かったのだが、コントロールを奪われたのか、破壊されたのか・・・
三浦は慌ててコンピューターにツーマンセルを指示、状況に対処したのだが・・・
今度は2機いっぺんに反応が消失、原因の手がかりを得る事は出来なかった。
「くそっ、中心部が怪しいが、今は手が出せないか・・・ コンピューター、ドローンは周辺エリアの調査に専念し中心部に近づけるな。」
「了解。」
「さて山下班長、戦闘のプロとしての意見が聞きたい。」
「はい、何でしょうか」
「地上基地から戦闘ボットを持って来れば、制御不能エリアの奪還はできるだろうか?」
「・・・中心部の様子が分からないので断言は出来ませんが、敵生体が居ても戦闘には勝てるでしょう。 しかしながら制御を取り戻せるかとなると・・・ 相手の手法が不明の為、無理だと判断します。
それより船の前半分は大気圏に突入させ、燃やしてしまうべきかと・・・ そうすれば、切り離した残りの部分が侵食される可能性を限りなく低く出来ると思うのですが?」
「・・・」
「船長は生粋の船乗りですからな、例え半分でも船を沈める事に抵抗がありますか・・・」
「いや、私も皆の安全の為ならば船を沈める事に否応は無いのだが・・・ 制御を取り戻し船を修理、『テラ19』へ帰還する事はほぼ不可能になるなと・・・」
「船長、いや三浦さん。 ここは腹をくくるべきだ。 下手な希望は全てをダメにする。 今は最悪を想定して行動すべきだ。」
「・・・確かにその通りですね。 切り離しが終わり次第、シャトルを使って大気圏に押し出しましょう。」
そして遂に切断完了の報告が・・・
すぐさまシャトルによる押し出しが始まった。 因みに、現場に投入されたプローブドローンは汚染の可能性に鑑み回収されず、船と一緒に処分される事になっている。
だが、すぐさま困惑する事に、
「船長、前部船体の移動を確認出来ません。」
「コンピューター、状況説明。」
「了解。 現在無人型シャトル2機が推力MAXで押し出し作業をしていますが、全く軌道が変化しません。 状況説明不能、未知の現象です。」
「「・・・」」
「くそっ ・・・シャトルは前部船体の押し出しを中止、直ちに後部船体をその場から引き離せ。」
そこに山下班長が、
「船長、距離を離したら後部船体の武器を使って前部船体を攻撃しよう。 あれはおかしい、少しでも早く破壊すべきだ。」
「そうですね。 地上基地のUCAVも全機爆装させ呼びましょう。」
しかし、完全破壊には至らなかった。 原因不明だが制御不能エリアの船体強度が跳ね上がっていたのだ。
しかも、中に行けば行くほど強度が高く・・・ 結局、現状での完全破壊は不可能と判断するにいたり、三浦達を乗せたシャトルとUCAVは地上基地と向かった。
残りの無人型シャトル2機は後部船体の移動と姿勢制御の為、宇宙に残された。 (後部船体には推進装置も姿勢制御スラスターも有るのだが、切り離された船体の強度や重量配分の再計算をしなければ何処に飛んでいくかわからない為、自立航行が出来ない。)
さて、地上基地では・・・
「皆、無事で良かった。 人的被害が出なかったのは不幸中の幸いだが、正体不明の敵から攻撃を受けたと見ていいだろう。
今後は防備を固め、テラ19からの救出部隊が来るまで生き延びる事を最優先とする。」
「「「了解。」」」
「ところでイブ班長、支援班の情報解析で何か分かった事はないか?」
「はい、前部船体ですが後部と切断された事でエネルギ供給システムから切り離されました。 しかしながら未知の波形のエネルギー反応が出ております。 理由は不明ですが、押しても船体が動かなかったことから空間固定技術に関係しているのではないかと考えています。
それと、どうやら自己修復機能がある様です。 こちらも未知のエネルギーが関係していると思われます。」
「「・・・」」
「やっかいだな・・・ イブ班長、分析を続けてくれ。」
「了解。」