エピローグ
天臨の盾を渡すことと引き換えにサイラス殿下との結婚を、と条件を出されたエムルエスタ国王陛下。
そんなことを引き合いにして結婚というのも間違っているような気がしますが、神具を使って強力な結界を作ることが出来れば沢山の人が救えるのもまた事実です。
「親父殿! これはフェアじゃない! リルア殿の弱みにつけ込んでいるではないか!」
「サイラス殿下……」
「大丈夫だ。リルア殿、君はゆっくりと自由な生き方を決めれば良い。俺に縛られる必要などないのだ。神具だって、必要ならば使えるようにしよう」
サイラス殿下は私のために怒ってくれました。
自由に決めていい。縛られる必要はないと。
「サイラスちゃーん。そうは言っても今はピンチなのデース。アストリア王国に魔物の大群が押し寄せて、国家消滅の大ピーンチ。この状況をレスキュー出来るのはリルアちゃんの祈りだけデス」
「「――っ!?」」
「隣国がいきなり滅びるとミーとしても大変困りマス。ハートもベリーベリー痛いネ」
アストリアに魔物の大群が!?
それを救えるのは私だけ……。私が神具を使って、祈れば――。
「もしも、サイラス殿下さえよろしいのであれば、私は殿下と結婚します! ですから、天臨の盾を使わせて下さい!」
「いや、待て! 結局、親父殿はリルア殿に天臨の盾を使わせたいのだから、結婚とか関係ないんじゃないか!?」
「えっ? あっ? そういえば」
「ハーハッハッハ! サイラスちゃんのツッコミ、ナイスだけど、ちょっと遅かったネ! 使いたまえ。今日から天臨の盾はユーのものだヨ! リルアちゃーん!」
豪快に笑いながら、玉座の後ろから金でも銀でもない神具特有の不思議な輝きを放つ盾を取り出しました。
えっ? い、今、私は騙されてサイラス殿下と婚約みたいなことをしてしまったのですか?
いえ、それについては後で考えましょう。とにかく今は祈ることが先決です。
私は親指を噛んで、盾にそれを付着させ跪きます。
「主よ! 我に力を――!!」
盾と共に私も不思議な光に包まれました。
いつもなら、この時点で倒れてしまいたくなるくらいの疲労感が襲ってくるのですが完全な神具だからなのか寧ろ心地よい気すらします。
純粋に自分の力が数倍にも上昇するようなそんな感覚――。
「いきます! 大破邪結界――!!」
この瞬間、周辺諸国から魔物たちがすべて浄化されました。
新たな結界を張ることに成功したのです――。
◆
「サイラス殿下も付いてきてくれるのですか?」
「ああ、もちろんだ! 君の家族にも挨拶がしたいからな!」
結界を張って、五日目の朝。アストリア王家から直接の追放処分の取り消しの報告を受けた私は一度、故郷に戻ることにしました。
もちろん、エムルエスタ国王の許可は取っています。
どうやら、ミゲルは失脚したみたいです。それどころか平民に落とされて投獄中なのだとか。
公爵家も爵位を剥奪されて下流貴族となり、聖地の管理は父が引き継いだみたいですね。
「聖女は君の妹が代わりとなっていると聞いたが……。君が望むのなら」
「マリアなら私以上の聖女になれますよ。私はもう故郷で祈る必要がなくなりましたから」
父と妹に、サイラス殿下を紹介します。
彼と結婚すると。
隣国に住むことになるけれど、遊びに行く許可はもらえると。
祈ることが出来なくなって、絶望もしましたが、私は新たな人生を歩みます――。
婚約破棄された聖女はもう祈れない
~完結~
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