第九話『2年ぶり』
「ここ…どこだ……?」
気づけば、そこには真っ白な天井があって、少し癖があるけど心地いいなと感じる香水の匂いがした。
なんでここにいるのか、というかここはどこなのか。少しだけ気のダルさが気になるところだが、無理矢理にでも横になって居る体を起こした。
「あ……そっか」
「俺、多分熱中症で倒れちゃったんだ」
体を起こして、ふと目についたドアに貼られている"保健室"のポップを見て自分の状態を把握した。
あと、ここまで運んできてくれた方々には申し訳ないのだが、倒れちゃったんだから救急車ぐらい呼んでくれていいんだよ? 俺ヤバイんだよ? なんて思っていた。
「(熱中症か……2年ぶりだっけ?)」
早く教室に戻らないと。先生はどこにいる?
「あ、トオルくん! 大丈夫ですか体の具合は」
「え? あーはい。大丈夫ですよ」
なんと駆け寄ってきたのは、あのいつき先生だった。あれ、でもこの人って毎授業うちのクラスに付き添ってくれるんだよな。なんでここにいるんだ?
「保健室の先生じゃないんですか?」
「え?」
「あーいやその。いつき先生って毎授業うちのクラスにいるじゃないですか。それなのにここにわざわざ来たのは何でだろうなーって」
別にそこまで気になることでもないから、なんでもないですよ〜なんて言えば良かったのに、深堀りをしてしまい、少しだけやらかしたと思ったが、もうそう思った時には言い終わっていた。
「えーっと、保健室の先生というのは入江さんのことでしょうか。入江さんなら本日は別の用件で職員室にいらっしゃるので代わりに私がここで保健室担当になっているんです」
「あー、なるほど……」
実はまだもうちょっと突き詰めたかった。"あの時、確かにいた"のだ。まぁいいか。
「教室戻ります。あの……この冷えピタ貼ってくれたのもいつき先生ですよね? 看病ありがとうございました」
そう言って、おでこにある冷えピタを剥がしてゴミ箱に捨てた。
「いえいえ。安静でいてくださいね」
「よいしょっと」
立ち上がり、再び教室へ戻った。