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HERO/ヒーロー  作者: 牙/キバ
第一章 【ヒーロー】
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第六話『沸点』

 「(また喧嘩、か……)」


 トオルの両親は、会うと必ずと言っても良いほどひ喧嘩が勃発する。理由は殆ど父が母に対して無頓着かことが原因だ。


 こんな時、既に独り立ちをしている兄はこんな誰もが嫌な気にしかならない喧嘩に巻き込まれないので本当に羨ましいと切に思う。


 「あのさぁさっきから、その態度何? ずーっとテレビばっかり見て会話する気いっさいないよね」


 「え? あるって」


 「あるわけないじゃない! そんなに私の話に興味がなわけ?」


 はぁ……。喧嘩したところでネガティブになるだけなのに、自己中気味な母、そして母に対して無自覚な無頓着の父、どちらにもウンザリする。


 「またテレビ見てたのかよ、アハハ……」


 場を和ませるために、トオルはいつも気を利かせて、笑い話のようにするが、両親はそんなトオルの気の遣いを踏みにじるかのように、喧嘩を続ける。


 「そんなに私の話がどうでもいいの? 何? テレビにしか興味ないわけ?」


 「だからそんなことないって……」


  「だから態度がそうって言ってるじゃない!! いい加減自覚しなさいよ!」


 「自覚してるって……」


  「何その態度。怒鳴らされてうんざりしてんの? 私の気持ちは置いといて?」


 「うんざりしてないって……はぁ…」


 「今のため息もそうだわ。完全に私を馬鹿にしてるよね」


 「してないって言ってるじゃん…」


 「だから。その態度がしてるってことを自覚しろって何回も言ってるよね」


 「だからちゃんと聞いてるじゃんか…」


 「今だけね。あなたはいつもそうだわ。こういう時だけ聞いてる。本当にズルいわ。」


 「ったく…」


 「どんだけネチネチ言ってくるんだよ……」


 「ネチネチ言わせてるのは誰?」


 「…いい加減うるさいんだよ!!!」


 「待って!!」


 ドアが開いて閉まる音がした。父が母の罵倒に耐えきれず家出したのだろう。母は母で言うことが『いちいち』痛いし、父は父で50手前だと言うのにみっともない。


 と、こんな場面は何年かに一度は必ずと言っていいほど起こってしまう。父が母にくだらなさすぎる論争で押されて、耐えきれずに家出するのだ。仕事のストレスもあるので仕方ないと言えば仕方ないが。トオルのトラウマにならないかというと、トオルは昔から両親に対してあまり興味がなかったため、こんな場面を見てもトラウマにはなりにくい。が、小学生だった時の兄は両親に甘えっぱなしの人だったので、当時のこのような場面がトラウマになっているらしい。


 「(はぁ。俺の気持ちはこの人たちにとってどうでもいいんだろうな。)」


 そうして心の中で呟いた。両親が喧嘩をして一番に嫌な気持ちになるのはトオルだ。何故なら単純に一緒に居づらいから。母親が怒りを我慢するか、父親が母親にもっと興味を持てばいいものを、どちらも頑なに変わらないので、結局は喧嘩の方向に行くのだ。


 「…また家出しちゃったね。流石に言い過ぎたんじゃない?」


 「私が悪いの?」


 そしてこれが母親の嫌なところ。普段は「自分の意見が絶対に正しいなんてことはないから、色々な人の意見を聞くべきだよ」というふうに言っているが、どうやらキレるとそんな理論はなくなるらしい。


 「別に悪いって言ってるわけではないよ。ただお父さんが何も言えずにただ罵倒されていたところを見たら、なんかそう思っちゃっただけ」


 まぁ論争するのもいいのだが、母は相手の話す隙を与えないため、論争するだけ無駄なのだ。なのでいつも正直に引く。


 「あぁそう……。あの人またどこ行ってるんだろうね」


 こんな誰も望まない状況に立たされれば、もちろん早くこの家を出ていきたいと思うのだが、楽しいときは本当に楽しい家族だし、大学への進学希望も一応あるため100%出ていきたいわけではない。でも俺だけじゃ解決できないことだから、やっぱり出ていきたい気持ちもある。


 「(こういう時って息子としては、どうすればいいんだろうな……)」


 喧嘩が起こる度に友人のユウキにも相談するが、ユウキは家族と上手くいっているため、対したアドバイスを貰うことは出来ない。


 「とりあえず、もう2階で勉強するよ。お母さんもそう気に病まないようにね」


 「あぁもうゴメンね。お母さんすぐ怒っちゃうから」


 「まぁまぁ。仲が良いからこその喧嘩だろうし」


  「ありがとう。迷惑かけたね、勉強頑張れ。」


 そうして、トオルは再び二階へと戻った。


※※※※※※


 「いや、もうこんな状況嫌だなぁ……。というか離婚とかすんのかな」


 いい加減、息子としての俺も嫌な気持ちにしかならないから誰かに相談したいものだが、もちろんユウキに相談しても意味はないし、他の友人も対したアドバイスをくれないためダメだ。


 「誰に相談すればいいんだろ……」


 LINEで昔の友人に相談……?

 いや、こんなこと相談出来ない。


 「……」


 「……ん?」


 ……あっそうだ。思い出した。今日初めて来た「いつき先生」の話を。


〜〜〜


 「相談なんかにも乗りますので、何かあったら気兼ねなく相談してください。一緒に悩みましょう」


〜〜〜


 「相談してもいい、なんか言ってたけど、こんなこと相談してもいいのか……? で、でもまぁ『気兼ねなく』って言ってたし、ダメ元で相談してみるか」


 そう考えトオルはダメ元で明日、いつき先生にこのことを相談する事を決めた。もちろん真に受けてはもらえないだろうが。

ということで3日連続更新完了しました!

まぁこれからはまたマイペースに更新していきますが。


さてさて、6話どーでした?

まぁTwitterでも言ったことなんですが、この話、実は2ヶ月前に書いたときの話なんでして


その時の感情や情景なんかを脳内にあった構図のまま出せたな、といった感触があり非常に満足してます。


自信話…とは言えないけど、それでもHERO/ヒーローでやりたかったことが出来たことは嬉しいですなぁ。

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