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 池と川を繋ぐ水路を完成させた茜は拳を高く挙げて満足そうな笑みを浮かべる。


「完成!」

「茜、お疲れ様。ほい、これ。お茶でも飲んでゆっくりせえ」

「ありがとうございます。それじゃあいただきます」

「おんおん。ゆっくりしときい。あとは桔梗の仕事やさかい」


 渡された熱めのお茶を両手で受け取りつつ礼を言う茜に、みどりは笑顔で下を指さし地面に一緒に座る。茜はみどりの最後の言葉に不思議そうに首を傾げる。


「桔梗ちゃんの仕事ですか?」

「せや。このまま一晩経つと元通りになってしまうから、そうならんように、な。まぁ、何をするのかとかは知らんのやけど」

「え、戻っちゃうんですか。それはそれで見てみたい気もしますけど」


 ただの好奇心なのか目を輝かせる茜に、みどりは恐ろしいものを見たという表情で顔を引きつらせる。


「戻ったら一からまたやり直しやで? 正気?」

「いや、見たいからって邪魔とかはしませんよ?」

「まぁ、それは知っとるけど。その話やなくてな……? まぁ、ええわ。そんなに時間かからんやろうからここで待っとこか」


 みどりの言いたいことを理解していない様子の茜を見て、首を横に振ったみどりはため息を一つはく。自分の分のお茶を紙コップに注ぎ、フーフーと冷ましつつ飲む。

 まったりとした状況でのんびりしている二人は、桔梗を待つ間もみじ達のいる家のほうを向きつつお腹をさする。


「お昼ご飯は何ですかねー?」

「お昼ご飯はなんやろなぁ。もみじが一人で作るみたいやし。そこは、帰ってからのお楽しみやな。まぁ、一人で作るのはほとんど初めてらしいけどな。静人さんらに食べさせたいとも言ってたから、気合入れて作るんやないかなぁ」

「おぅ……、実験台?」

「そういう言いかたしたらそう聞こえるけどなぁ。まぁ、もみじ自身にはそんな気はないやろけど」


 実験体と言いつつ苦い笑みを浮かべる茜は頷く。


「それもそうですねー。あ、あれって桔梗ちゃんじゃないですか?」

「おん? お、ほんまやな。結構早かったなぁ」

「ただいまなのだ。む、二人だけお茶を飲んでずるいのだ。わしも欲しいのだ」


 のんびりとお茶を飲む二人に頬をぷくっと膨らませてお茶を催促する。


「おんおん、あったかいお茶やけどええ?」

「ちょっと体が冷えてきたからちょうどいいのだ。ありがとうなのだ」

「おんおん、まぁ、もう少ししたらお昼ごはんやさかい、急いで飲むんやで」


 みどりは催促されたお茶を注ぎつつ、少し意地の悪い笑みを浮かべて桔梗に渡す。


「それは早く言ってほしかったのだ。熱いのだ……、そんな一気に飲めないのだ……」

「お菓子食べてるわけじゃないし、お茶ならご飯食べてる時にも飲めるんだから急がなくてもよくないです?」


 桔梗はみどりの言葉にうな垂れてお茶を急いで飲もうとして熱さに耐え切れず舌を出す。そんな桔梗を見た茜は苦笑いを浮かべつつ指摘する。


「は! そう言われてみればそうなのだ! むむ、みどり?」

「なんや? そんな目で見ても熱いお茶のお替りしか出ないで?」

「熱いお茶はもういいのだ……。それじゃあ、お茶を持ってもみじ達の所へ戻るのだ」


 みどりは桔梗のジト目にさらされても笑みを崩さずにお茶の入った急須を指さす。無駄だと思ったのか桔梗はジト目を止めて熱そうに紙コップをつかむ。そんな桔梗に茜はお盆を見せる。


「お盆使う?」

「使うのだ。ありがとうなのだ、茜」

「どういたしまして、そういえば池が戻らないようになんか仕事してたんですよね? どんなことしてたんですか?」


 みどりの言っていたことを思い出したのか、興味津々な様子で聞く。そんな茜に桔梗は困ったように頬をかく。


「どんなことって言われても困るのだ……、その場所でお願いするだけなのだ」

「えー、それだけー? 他にも何かしたりしてないの?」

「そんな不満そうな顔されても困るのだ。両手を合わせて目を瞑って目印を思い浮かべて、ここら辺は池にしたのだ。よろしくなのだ。と願うだけなのだ」

「えー? なんか木の枝振り回したり、お経唱えたりしないの?」


 茜の言動に桔梗は更に困った様子で苦笑いを浮かべる。


「どんな想像してるのだ……? さっき言ってたこと以外は何もしていないのだ」

「えー、期待してたのにー。うん? なんかいい匂いします!」


 茜はがっかりしたように肩を落とすが、すぐに顔をあげて鼻をひくひくさせる。みどりはがっかりとする茜を見て呆れたように笑う。


「変な期待やなぁ。おん? 確かにいい匂いするなぁ……」

「あ、桔梗お姉ちゃん達帰ってきた!」

「おー、もみじの料理の匂いだったのだ。ただいまなのだー」

「ただいまやでー。美味しそうやなぁ。もみじ、何作ったん?」


 家にたどり着き、いい匂いをさせている方向に向かうと、もみじがエプロン姿でお出迎えをしてくれた。


「今日は豚肉の塩焼きに梅醤油っていうのをかけたやつ! 梅醤油と大根おろし、ミョウガでさっぱりした後味になるってこの料理本に書いてあったの!」

「ほほう、これはなかなか美味しそうですねー。ご飯大盛りでお願いします!」

「分かった! はい! ご飯大盛りだよ!」


 目の前の料理に釘付けになった茜は、希望通りに大盛りでよそってくれたご飯を嬉しそうに受け取る。


「おー! 本当に大盛りで出してくれるとは思ってなかったんですけど、言ってみるもんですね! これはこの野菜で巻いて食べる感じなんです?」

「はい! 豚肉の上に大根おろしとミョウガを乗せてるからそれを巻く感じです!」


 焼いた豚肉の上に大根おろしと刻んだみょうがを乗せ、その上から梅醤油をかけている料理の横にあるサラダ菜を巻いて食べられるように横に置いてある。そんな料理を見て我慢できなくなった茜は目をキラキラさせて手を合わせる。


「うん、美味しそう! では早速食べましょう!」

「食べるのは良いのだが……、青藍のやつはどこに行ったのだ?」

「青藍ちゃんならすることないから寝るって言って今も寝てるよ。ご飯できたら起こしてって言ってたから今から起こしてきます!」

「それなら一緒に起こしにいくのだ」


 桔梗は茜の今にも食べてしまいそうな様子を見て苦笑いを浮かべつつ、この場にいない青藍をきょろきょろと探すように周りを見渡す。


「青藍はまだ寝てるんか……、まぁ、することないならしゃあないんやろか」

「あたしも休みの日はお昼まで寝てる日ありますし、このぐらいの時間まで寝るのは普通だと思いますよ?」


 呆れたように呟くみどりに茜はキョトンとした顔をする。キョトンとした茜の様子を見たみどりは自分のほうがおかしいのかと首を傾げる。


「そういうものなんやろか? まぁ、必要な物もないしなぁ。作りたいものもないから今は暇なんやろなぁ」

「青藍ちゃんの場合は物を作るとき、今度は朝まで起きるような生活になりそうで心配ですけどね」

「確かになぁ。まぁ正直寝るのも、うちらからするとただの娯楽の域を出ないしなぁ。寝なくても体壊すことないし、そこまで心配せんでもええんやけど」


 朝まで起きるような生活になってしまったとしても心配する必要ないとみどりは笑う。


「まぁ、そうですけどねー。肌に影響が出るとかそういうのすらないですしね」

「楽だからええんやけどな。さてと、もうそろそろ来る頃やろか」

「確かに楽ですよねー。あ、来ましたよ。……物凄く眠そうですね」

「おん、睡眠は必要ないはずなんやけどなぁ。まぁ、疲れとるんやろ。ご飯食べたら眠気も覚めるやろ」


 必要のない睡眠のはずなのに眠たそうな青藍を見て、みどりは不思議そうに首を傾げつつも料理を指さして笑う。


「ご飯……、いい匂い……」

「おん、目、覚めたん?」

「ん、おはよう。いただきます」


 眠たそうに眼をこする青藍は料理の匂いを嗅いで眠気が覚めたのか、挨拶をして手を合わせる。


「わしらも食べるのだ。いただきます。うむ、美味しいのだ!」

「ホント? 良かったー」

「おんおん、確かにおいしいなぁ。これなら静人さんらに出してもええんやないかなぁ」

「美味しいって言ってもらえるかな!?」


 皆の好評な様子にもみじは嬉しそうに周りの表情を見る。そんなもみじの様子を見た周りの人は皆、笑みを浮かべて頷く。


「静人達にも美味しいって言ってもらえると思えるのだ」

「むしろ、美味しい以外、何も言わないと思いますけどね。うん、おいしい」

「まぁ、静人さんらやしなぁ。うん、おいしいわぁ」

「おいしかった。お腹いっぱい。満足」


 満足そうにお腹をさする青藍にみどりが話しかける。


「お腹いっぱいになったなら良かったわぁ。あ、そうだ。この後暇なら物作り頼みたいんやけどええ?」

「うん。暇だからいい。何作るの?」

「さっき池を作ったからその周りに物置小屋と、あとは机とか椅子とか、ご飯食べられるようにしたいなって思てな?」

「分かった。それならあとで作ってみる。……池を作ったの?」

「おんおん、よろしゅうな」


 池を作ったというスケールの大きな話のはずなのにさらっと軽く流すみどりに、青藍も軽く流しそうになりつつも疑問符を浮かべる。だが、みどりはそこを深く話そうとせずに手をあげてその場を離れていく。そんなみどりを青藍は見つめていたが、まぁいいかと深く考えることを止めて道具を持ってみどりについていく。


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