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「あ、茜さんおかえりなさい。荷物持ちましょうか?」

「いえいえ、大丈夫です。これでもあたし力持ちなので!」

「それはまぁ、知ってますけど」


 茜の言葉に苦笑いを浮かべる静人を尻目に、茜は持っていた荷物を固めて置く。そのあとにかなでに連れていかれた桔梗を思い出したのか笑みを浮かべる。


「あはは、まぁ私のことなんかより桔梗ちゃんの心配した方がいいですよ」

「桔梗ちゃん? 何かあったのかい?」

「かなでさんが肩に担いで部屋に行きましたよ?」

「かなでももう若くないんだから無理はしないで欲しいんだけどね……。というかなんで肩に……? あ、いや、関係ないかな」


 なんで肩に担いでいったのか疑問に思いつつも、朝の出来事を思い出した静人はもしかしてと思いつつも首を横に振る。


「あたしも気になってたんですよね。なんか思い当たる節でもあるんですか?」

「思い当たるというか、朝、もみじちゃんを担ぐ約束してたなーと思ってね」


 困ったように笑いながら答える静人に茜は更に困惑したような表情を浮かべる。


「……なんでまた担ぐ約束を?」

「慌てたかなでが青藍ちゃんを担いで朝食を食べに来て、それを見たもみじちゃんが私も担いでほしいって言ったんだよね」

「う、うーん。なんというか理解はできないですけど、楽しそうならいいことですよね!」

「まぁ、そうだね」


 考えることをやめた茜が朗らかに明るい声で締めたことで静人も諦めたように頷く。


「そういえば桔梗ちゃんを担いで連れて行ったときに、私のほうを見て少し残念そうというか諦めたような顔をしていたんですよねー」

「もしかして茜さんも担ごうとしていたとか?」

「あはは、まっさかー。さすがにそんなことはしないでしょう」

「そう、だね。普通ならしないんですけどね。もしも、もみじちゃんとかにおだてられたりしてたら分からないかなぁ」


 静人の言葉をあり得ないと笑う茜だったが、続く静人の言葉に笑顔を固まらせる。


「え、ちょ、冗談ですよね?」

「いや、かなでだしね。変なところで楽観的だから。自分の体のことを無視して行動する可能性はあるよ」

「さすがに私を抱えようとしたら腰、やると思いますよ?」

「あはは、まぁ、その、気を付けてね」

「どう、気をつけろと!?」


 諦めた様子の静人の言葉に大きな声で困惑する茜。そんなときにみどりが帰ってきた。


「なんやどしたん? 急に大きな声出して」

「あ、みどりさん。おかえりなさい」

「ただいま、静人さん。茜もな」

「おかえりなさい。今まで何かしてたんですか?」


 茜の言葉にみどりは肩を落としてため息をついて答える。


「おん、急に会社から呼び出し喰らってな? あ、茜に伝言あるんやった。書類作成やり直しやって」

「え、嘘ですよね?」

「そんな嘘つかへんよ。印鑑の押し忘れと誤字があったらしいで」


 やり直しという言葉に愕然とした表情でみどりを見つめる。


「そ、そんな。三回は見直したのに」

「なんでそれで見逃すんよ。まぁ、そんなに時間かかるもんやないやろし、明日行ってきい」

「はい……」


 うなだれて頷く茜にみどりはにやりと笑い言葉を続ける。


「うちはもうやることなくなったはずやし、明日はゆっくりできそうやわぁ」

「く、みどりさんだけずるい。あたしもゆっくり畑作業とかしたかった……」

「そういえば畑を耕したりせんといかんかったな。機械は使えんから、まぁ手作業になるんやけど」


 畑を作ることを思い出したみどりが呟いた言葉に静人が反応する。


「手作業だと結構大変そうですね」

「まぁ、大変やけどなんだかんだで茜も楽しみにしとるみたいやし大丈夫やろ。腰壊したりする心配もないしな」

「まぁ、実際楽しみではありますけどねー。体力だけは自信ありますし!」

「確かに体力だけは勝てる奴おらんとは思うけど。ま、それはそれとして資料整理ちゃんとしなね?」

「はい……」


 本当に楽しみにしているのか急に元気になって力こぶを見せるしぐさを見せるが、そのあとにみどりから言われた言葉にまたしゅんとする。


「あ、みどりちゃん帰ってたのね! おかえりなさい」


 そんな話をしていると、ぐったりしてる桔梗と楽しそうにはしゃぐもみじを連れてかなでがやってくる。


「ただいまー。桔梗がぐったりしとるけど担いだん?」

「もちろん! あとは茜ちゃんだけよ。さぁ、どうぞ!」

「え、どうぞって言われても……」


 どうぞと言われて困惑した茜が助けを求めるように静人とみどりをちらりと見る。みどりは呆れた表情で首を横にふり自分の腰をさする。


「やめといたほうがええで? さすがに腰やるから」

「大丈夫よ! 根拠はないけど大丈夫!」

「ダメに決まっとるやろ。ほら、静人さんからもなんか言ってや」


 呆れた声で否定した後に隣にいた静人を肘でつつく。静人は肘でつつかれた後かなでの前に立ち諦めるように説得する。


「かなで、僕たちもう若くないから……。あとで後悔するよ。正確には動けなくなってもみじちゃん達と遊ぶ時間が減るよ」

「それは嫌だわ! く、ごめんなさいね茜ちゃん。次は体を鍛えてから待ってるわ」

「いや、頑張らなくていいですから……。体を大事にしてください」

「ありがと! それじゃあもみじちゃんを担ぐのまでにしときましょう。ほら、もみじちゃんおいで」

「うん! えへへ、たかーい!」

「ほら桔梗ちゃんも!」

「うむ、なのだ」


 嬉しそうに担がれて足をぶらぶらさせるもみじとは裏腹に、桔梗は諦めた目で肩に担がれまるで人形のように手をぶらぶらさせる。そんな二人を担いで部屋に戻っていくかなでを見て、静人達は意外に茜も担げるのではと脳裏によぎりつつ何も言わないで見送った。


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