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もみじを担いで部屋まで運んだかなでの方から降りたもみじは嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「楽しかった! もう一回担いでほしい!」
「もう、しょうがないなー。担いであげましょう。うふふ、ほーら高い高い」
「えへへー、体をプラプラさせるの楽しい!」
「そこまで喜んでもらえると嬉しいわ。よし、もみじちゃんだけじゃなくて、桔梗ちゃんもしてあげましょう!」
この場にいない桔梗に矛先が向き、もみじも桔梗なら喜ぶと信じ込んでいるのか笑顔で頷く。
「うん! 桔梗お姉ちゃんも喜ぶと思う!」
「茜ちゃんは……、さすがに厳しいかしら。いや、私ならきっと……!」
「お姉さんならきっと、茜お姉さんも担げるよ!」
「そう思うかしら。もみじちゃんが言うならきっといけるわよね! よし、二人とも帰ってきたら担いじゃおう!」
「喜んでくれたらいいな」
茜のことを思い浮かべてさすがに自分の腰のことが心配になったが、根拠のない自信を見せてもみじも肯定するように頷く。もみじは二人とも喜んでくれると無邪気に笑う。
ところ変わって別の世界にいる桔梗は体をぶるぶると振るわせて空を見上げる。
「うむ? なんか寒気がしたような気がするのだ」
「え、桔梗ちゃんも? あたしもなんか一瞬寒気がしたんだよね。なんというか何かを止めないと不味いことになるみたいな寒気」
「ううむ、わしらは病気にかかるはずもないし、多分この寒気は茜の言ったことが正しい気がするのだ……、まぁ、今気にしてもしょうがないのだ。あ、ピザ窯のめんてなんす? とやらは終わったのだ?」
「終わったよ。ここだと生物がいないから、そういうのは考えなくていいのは楽だね。あ、そういえばあたしってここで畑作るんだよね? どこで作るのとか決まってるの?」
茜の言葉を聞いた桔梗は茜を手招きして縁側から外に出て庭に降りる。
「うむ、一応決まってるのだ。こっちなのだ」
「結構近いの?」
「うむ、というかこの家の裏手に作る予定なのだ。最初にここで小さく畑を作って試してみる予定なのだ。ちゃんと作れそうだったら少し離れたところに作る予定なのだ」
「離れたところに作るの? 近くに作ったほうがよくない?」
わざわざ家と畑を離れさせる理由が分からないのか首を傾げる茜に、桔梗は頬をかきながら苦笑を浮かべる。
「うむ、まぁ、別に近くに作ってもよいのだが……。肥料とか撒くとき結構臭いが酷いらしいのだ」
「あ……、それはしょうがない。ご飯ここで食べるんなら遠いところに置いてた方がいいよね」
茜は桔梗の説明に納得したのかうんうんと頷く。それを見ていた桔梗が思い出したかのように手をポンッと叩く。
「そういえばなのだが、一応ここは二つ目の家として作ったのだが、茜たちもここに住むなら、青藍に新しく家を作ってもらうことを考えたほうが良いのだ」
「え、家作ってもらえるの? しばらくはここでお世話になりそうだし助かるけど。それならここの近くに建てて密集させた方がいいよね。あとは畑の横に、農具置き場の小屋を作ってもらえると嬉しいかも」
「確かに密集させた方がいいと思うのだ。小屋は小さい畑を成功させたら大きい畑の横に小屋を建ててもよいのだ」
軽い感じで家を建てる話をする桔梗に茜は呆れた声を出す。
「でも、結構大変だよ? 小屋作ったりするの」
「青藍の気分次第なのだ。とはいえ嬉々として作ってすぐに終わらせてしまいそうなのだ」
「そういえばこの家も青藍ちゃんが作ったのよね」
今目の前にある家を作った青藍のことを思い出した茜は感心した声を出して唸る。
「まぁ、そこらへんはまた後で考えるのだ。よし、ピザ窯のめんてなんすも終わったことだし朝ご飯なのだ」
「お、待ってました。今日は何かな」
「サンドイッチと小さいハンバーグ、ウインナー、卵焼き、唐揚げ。結構いろいろと入っているのだ」
「サンドイッチもハムレタス、卵サンド。あ、カツサンドも入ってる! 小さめに入ってるから食べやすくていいね。いきなりだったのにここまで用意出来るのすごいなぁ」
「もぐもぐ、美味しいのだ。この小さいハンバーグも美味しいのだ」
朝、静人に作ってもらった朝食をもぐもぐと美味しそうに食べ終えた桔梗たちは、かごを片付けてから手を合わせる。
「ごちそうさまでした。全部美味しかったよ」
「うむ、ごちそうさまでした、なのだ。あと少しの間ここに滞在してから戻るのだ」
「そうだねー。そういえば、桔梗ちゃんが来た理由の管理者云々って話ホントに必要なの?」
管理者がいないといろいろとめんどくさいことになるという話を聞いていた茜は、その話が信じられないのか疑わし気に桔梗を見る。そんな視線にさらされた桔梗は困ったように頬をかき首を横に振る。
「うむ、分からんのだ。でもここは元々わしが作った場所なのだ。だから、この世界を離れてしまうとここがなくなってしまう気がするのだ。なんでそう思うのかは分からんのだ」
「そっかー、でも、そういう勘ってバカにできないからね。少し離れるのは大丈夫なの?」
「うむ、正直一週間くらいは大丈夫だと思うのだ。だから、正直帰ってこなくてもよかったのだ……、まぁ、いろいろと心配事もあったからの。それに着替えもここに置いておるからそれも持って行こうかと思ったのだ」
桔梗にただの勘と言われた茜は真面目な顔で頷きバカにすることは無かった。ついでのように言われた着替えのことに興味をひかれたのか聞き返す。
「着替え? あ、静人さんたちに貰ったってやつ?」
「そうなのだ。もみじと青藍の分もついでに持って行こうと思うのだ」
「自分のだけ持って行ったら怒られそうだしねー。運ぶの手伝ってあげるね」
「うむ、そんなに量は多くないけどお願いするのだ」
「任せてよ」
茜は自分の胸を叩いて任せてと胸を張る。しばらくして桔梗も安心できたのか帰る準備を始める。
「もうそろそろ帰るのだ。茜、お願いしてもいいのだ?」
「もちろん。荷物これだけなら私一人で簡単に運べるよ」
「それならお願いするのだ。でも、なんでか寒気がするのだ」
「私はこの荷物持ったら治まったかなー。まぁ、早く帰ろう」
「うむ、晩御飯に間に合わんのは困るのだ。早く帰るのだ」
帰ることになった桔梗はまた寒気を感じたのか自分を抱きしめるが、さっきまで同じ寒気を感じていた茜は荷物を見えるように掲げて首を横に振る。
「ただいまなのだ」
「おかえりなさい、桔梗ちゃん!」
「うぇ!? なんでいきなり担ぐのだ!?」
「高い高いをするためよ!」
「意味が分からんのだ!」
帰り着いた桔梗を待っていたのは手をワキワキさせて待機していたかなでの姿だった。いきなり肩に担がれた後に、高い高いをされた桔梗は戸惑いの声をあげながらされるがままになっていた。茜は荷物を持っていたためにかなでが諦めて難を逃れた。




