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「こういうの調べてたんだな。洋服作りたいやつはいないのか?」
「私作りたい!」
「お、もみじは興味あるのか。だったらちょっと教えてやろうかね。図案も描き方知ってるか?」
「うん! お姉ちゃんに聞いた!」
「お、一回描いて見てくれ」
「分かった! ちょっと待っててね!」
「おう、ゆっくり描きな。青藍とか桔梗はやらねえのか?」
もみじが洋服作りに興味があることが嬉しいらしく笑みを作りもみじを見送る。そのあとに青藍と桔梗のほうを見て首を傾げる。
「私は服よりかも道具作りのほうが楽しいから」
「わしはそういう細かいのは無理なのだ」
「今更だが桔梗の役目って何なんだ?」
「うむ? わしの役目なのだ?」
「おう、青藍は物作り、もみじは料理だろ? 桔梗はいったい何してるんだ?」
「うーむ、そういう風に言われると何もしておらんのだ。とはいえ何かすることあるのだ?」
「あー? 静人、今更なんだがなんで物作りとか教えてるんだ? ここで買えばなんとかなるだろ?」
「買えばなんとかなるとは思うけどね。実は今この前行ったあの場所に村を作りたいって話が出ているんですよ」
「村? また急に話がでかくなったな。あ、つまりその村の中で生活できるようにしたいんだな」
グラはいきなり話がでかくなったことに驚きつつも、言いたいことが分かったのか納得したように頷く。
「そういうことですね。一応みどりさんもいるから少しならこっちのものを都合できるだろうけど、対価を支払わないのはさすがにまずいでしょう?」
「確かになー、ん? それじゃあ何か物々交換でもするのか?」
「少しだけですけどね。あっちで作った野菜とかを送ろうかなって思ってます」
「あー。でも、それだけで足りるのかよ?」
「ある程度あっちで作れるようになれば必要な物は食材だけですし、なんとかなると思いますよ。あっちの世界は虫とかもいないらしいので、ちょっと作る野菜とかには気を付ければ完全無農薬の野菜が作れますよ」
「はは、ちょっとしたブランドになるかもな。完全無農薬って難しいらしいし」
「そうなれば多少の出費はなんとかなりますけどね」
「確かにな。さて、話が長くなったから話を戻すけどよ、桔梗ができるようなことってなんかあるか?」
「そうなのだ。わしにも何かすることほしいのだ」
「それこそ、農業をする予定だから。その作業かな。結構大変になると思うから茜さんと一緒にね。力仕事も多いからね」
「うむ、分かったのだ」
静人からの忠告に真剣な顔で頷く桔梗の横で、初めて聞く名前にキョトンとした顔でグラが固まっている。
「茜さん? 誰だ?」
「あ、グラさんは会ったことなかったですね。えっとみどりさんに頼んだ力仕事要員です」
「お、それじゃあ力持ちなのか。わざわざ頼むくらいだし。そいつの分は洋服作らなくていいのか?」
「ふっふっふー。もちろん作るわよ!」
「変な笑い方しながら来るなよ。びっくりするだろうが」
「え、ごめんなさい。あ、デザインはこれね」
「おう」
いきなり出てきたかなではグラに謝りながらも出来上がったデザインを渡す。そんな二人の隣で桔梗が静人の所にパソコンを持って行く。
「農業について調べたいのだ」
「うん。農業は臭いがあるからそういうのも考えないとね」
「確かに臭うのは嫌なのだ。どこに作るのかとかは実際に見てから考えたほうがいいのだ」
「そうだね。虫も動物もいないからブドウとか作ってみるかい?」
「ブドウなのだ?」
「あれ、食べたことなかったかな。買いに行ったら売ってるかな。今日あったら買ってくるよ」
「うむ、食べ物なのだ?」
「甘い果物だぜ。粒が小さいし中にタネがあるけど美味しいぜ」
「そうですね。いろいろと処理をすると種も取り除けるけどまずは作ってみてからだね」
「種を取り除くのだ? 種だけを引っ張るのだ?」
「あはは、そうじゃなくてね。説明するといろいろと難しい話になるから省くけど、ちょっとした薬品に浸けるとタネが入ってないブドウが作れるんだよ」
「そうなのだ?! なんか面白そうなのだ」
「そうだね。農業はやってみると大変だけど楽しいよ。野菜とかはいろいろと作りたいから何を作るかはまた今度考えようか」
「うむ、みんなで一緒に考えるのだ」
桔梗はどんな野菜を作ろうかとパソコンでいろいろと調べているのを、横目で見ていた静人があることに気が付く。
「そうだね。あれ、そういえば桔梗ちゃんはたまにどこかに行くんだよね?」
「む? うむ、わしらのようなものを見つけるためにたまに出かけるのだ」
「農業をやるときはこまめに確認しないといけないから、あまり外に出かけられなくなると思うよ?」
「む? それは困るのだ。どうにか出来ぬのだ?」
「まぁ、出かける時期には作らないように計画すればいいかな。収穫までの時期を計算して計画を立てていけば出かけることは出来るよ」
「なるほどなのだ。でも初めて作るからさすがに分からんのだ」
「まぁ、そこは調べてみればある程度は分かるかな?」
「ならいろいろ調べてみるのだ」
そんな会話をしながらいろいろと調べていると急にグラが時計を指さして静人の名前を呼ぶ。
「おっ、もうそろそろ昼だぜ」
「おや、もうそんな時間ですか」
「昼飯は何にするんだ?」
「あ、一緒に食べますか?」
「おう! 出来れば一緒に食べたいぜ!」
「いいですよ。何か食べたいものとかあります? ちなみに夜は魚ですね」
「夜は魚なのか、だったら肉が食いたいぜ」
「お肉ですか。簡単な物でもいいですか?」
「おう! 食べさせてもらえるだけでもありがたいぜ!」
「それなら豚肉の生姜焼きとかでいいですか?」
「俺はいいぜ? 子供たちはどうよ?」
「わしもそれでいいのだ」
「お魚が夜に出るならそれでいい」
「私ももちろんいいよ!」
「それじゃあ作ろうかな。もみじちゃん手伝ってもらっていいかな?」
「うん!」
「しず君私は?」
「かなではお客様の相手よろしく」
「わかったわ!」
親指を立てて見送るかなでに軽く手をあげた後、静人達はキッチンにたどり着く。
「それじゃあ先にキャベツの千切りを作ろうか」
「分かった!」
「よし、終わったね。キャベツの千切り作るの早くなったね。すごいよ。それじゃあ次はこの豚ロースに薄力粉振ってもらっていいかい?」
「えへへ、なんか慣れてきたの! 振るのってこんな感じでいいの?」
「うん、良い感じ。それが終わったらフライパンを中火で熱してもらっていいかな。こっちはたれを作るから」
「分かった!」
たれの材料を用意しながらある程度目分量で混ぜ合わせてたれを作る静人の横で、真剣な表情でフライパンを見つめるもみじ。途中で何か足りないと思ったのかサラダ油を指さしながら静人のほうを向く。
「お兄さん、フライパンにはこの油を入れるの?」
「今回はごま油を入れようかな。そのあとにさっきのお肉を入れて、最後にたれを入れて焼き上げて完成だね」
「ふわー、いい匂いだね」
「そうだね、お腹がすく匂いだよね。よし、フライパンも温まったし、それじゃあ焼いていこうか」
「はーい!」
熱したフライパンにごま油をひき、豚ロースを入れて両面に焼き色がついた頃合いにたれを加える。調理場に生姜焼きのいい匂いを充満させながら全体に味が馴染んだのを見計らいフライパンを火から離す。
「完成! あとは盛り付けるだけだね!」
「うん。もみじちゃんの料理も危なっかしいところがなくなってきたし、次からは一人でも作れるかもね」
「えへへ、そうかな? 作れるようになったらお兄さんたちに最初に作ってあげるね!」
「本当かい? それは嬉しいな」
「えへへ、楽しみにしててね!」
「うん。その時が楽しみだ」
静人に褒められて嬉しそうにはにかむもみじと、もみじの言葉に嬉しそうに微笑む静人がお皿に料理を盛りつけ終えたタイミングに凪がやってくる。
「なんか、いつの間にか料理を御馳走になる話になってたみたいで、すみません」
「あはは、いいですよ。凪さんもグラさんも今日はお客様ですし、料理はもう完成しましたからいらないと言われた方が困りますよ?」
「ふふ、ありがとうございます。でも、なんもしてないのにもらうのもあれなので運ぶくらいはやらせてください」
「そうですか? それならお願いします」
「凪お姉さん、これ私が作ったんだよ!」
「そうなの? こんなに立派な料理が作れるなんてすごいわね。えらいえらい」
「えへへ、お兄さん! 褒められた!」
「あはは、良かったね」
「うん!」
三人で料理を運ぶとリビングには全員がそろっている。
「全員揃ってますね。それじゃあ、いただきます」
「「「「「「いただきます」」」」」」
「おう、うまいなこれ!」
「お口にあってよかったです」
「えへへ、私が作ったんだよ」
「もみじは料理上手なんだな! 美味しいぞ」
「えへへ、ありがとう」
グラは本気で気に入ったらしくすぐに食べ終わり、凪のものをこっそり食べようとして手をはたかれてたりしていた。もみじは褒められたのが嬉しいのか食べている時もずっと嬉しそうに頬を緩ませていた。しばらくして食べ終わりお昼からの話になる。




