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「さてと、焼き芋の準備始めなきゃ」


 そう言いながら静人は調味料棚を漁り塩を取り出す。そのほかにも洗い物をしている、かなでの隣に置いてあったアルミホイルや竹串などを取り並べていく。


「他に必要な物って何があるの?」

「うーん、他には何もいらないかな……一応水は持っていくけど、あ、トングと軍手は持っていこうか持つときにやけどしちゃうから」

「うーん、そうだ。他の焼き方とかあるの?」

「うん。ネットで調べたら石焼がおいしいって書かれてたけど、今回は普通の焚火のほうが面白いかなって思って、おいしさも大事だけど面白さも大事だし」

「焚火って面白い?」

「え? 面白くないかな? 僕が子供のころは火をつけるのとか、どうやったら燃えるのかとか考えながらやって、火が付いたときは楽しかったし嬉しかったよ?」

「なんか発想が放火魔みたいな……、というか何を燃やしてたの?」


 かなでは静人の話にちょっと引いた顔をしながら話を続ける。


「え? あー、家のお風呂がこう、下に火をつけてその火でお風呂を沸かすんだけど。その時の火をつける係を僕がやってたんだよ。木を交互に組むとか空気穴をあけるとか、いろいろ考えながらやって火がちゃんとついたときは嬉しかったよ」

「なるほどねー。達成感的なことで考えたらわからなくはないのかな?」


 静人の話を詳しく聞いたら納得できたのか頷いている。


「そんな感じだね。自分で全部やって最後においしくいただくって感じで終わりたいよね」

「そうだね。ふふふ、もみじちゃんが美味しいって言ってくれたらいいね」

「うん。そう言ってくれたら嬉しいよね。よし、そう言ってもらえるように頑張って準備しようか」

「他に何か必要な物ってある?」

「あー、そうだね。……新聞紙とか、あとはマッチとかかな?」


 他の必要な物って言われて腕を組みながら俯き悩んでいたが、思いついたのか顔を上げて提案する。


「そうだ! もみじちゃんって巫女服を着てたのよね?」

「え? うん。そうだけどどうしたの?」


 静人はいきなりの話の変わりように驚いた様子で首を傾げる。


「それじゃあ、今日は持っていかないけど今度洋服持っていこうかな。サイズ測れるようにいろいろ持っていこうっと」

「うん、まぁ、嫌がるようなことじゃないしいいのかな。おっと結構時間たってるね。おひるごはんの準備しようか」

「え?! もう、そんな時間!? そういえばもみじちゃんって夜ご飯とかどうしてるのかしら」

「そういえば聞いたことなかったね。次、会うときに聞いてみようか。というか今更なんだけど洋服のサイズ測るって自分で作るの?」

「そんなわけないじゃない。ちょっと知り合いに頼むのよ」

「オーダーメイド?」

「さすがにオーダーメイドとかじゃないわよ。ちょっと友達に頼むのよ。あの人なら多分すごく張り切って作りそうなのよね。かわいい洋服作るの大好きだから」

「そんな知り合いいたかな?」

「ただの洋服屋の店長だから。さすがにしず君は知らないかな?」

「それなら知らないのもしょうがないのかな? というかそんな人とどうやって仲良くなったのさ」

「なんか、なんとなく波長が合ったというか……」

「まぁ、それももみじちゃんに許可取ってからにしてね?」

「分かってるわよ。ふふふ、楽しみ。早く会いたいなー」


 かなではもみじに会ってからのことを考えてるのかニコニコしている。そんなかなでを見ながら不安げな顔をする静人だった。そうして、お昼ご飯を食べた後ついに約束の時間が近づいてきた。


「それじゃあ、行こうか。変なこととかしないでね?」

「しないわよー。しず君こそかわいい子だからって変なことしないでね?」

「もちろんしないよ。かなで、準備できた?」

「ばっちり! いつでもいいよ!」


 静人はかなでを連れて約束の場所に向かう。そこは時間の割には暗いが澄んだ空気が気持ちよく感じる場所だった。かなではニコニコしながらも少し不安なのか、静人の服の裾を軽く握る。静人はそんなかなでに気付き軽く近寄りながらあたりを見渡す。少し時間が経ってから静人から離れた場所にちょこんと座ってる狐が見える。


「あ、もみじちゃん。約束通り遊びに来たよ。知らない人がいて出てきづらいなら帰ってもらうけど」

「え!? 少しくらいは説得してくれてもいいんだよ!?」

「いや、無理強いは良くないし」

「く、くぅ」

「お兄さん、私は大丈夫ですよ?」

「しゃべったー。かわいい! 声も可愛いわ!」

「いいのかい? こんなんだけど?」


 かなでは狐の姿のままでかわいらしい声で話す姿に体をくねらせたかとおもうと、すごい速さで胸に抱きよせる。もみじがなすがままになっているのを見ながら静人は呆れた顔になる。もみじは抱きしめられたのが嬉しいのか嫌がらずに抱きしめられたままになっている。


「えへへ、大丈夫です。お姉さんは優しい匂いがするから」

「ふふん。というかしず君? こんなんって何、こんなんって」

「かなでは小さい子供を見るとテンションが上がるからね。そのまま抱き着いたりするからそれを止めたりしようと思ってたんだけど。嬉しそうだしいいかな」

「人の姿にはならないのかい?」

「うん。あっちに行ってからにする!」

「あ、それじゃあ、かなで……。あ、この女の人の名前ね。一緒に連れて行っても大丈夫かい?」

「うん! お姉さんよろしくね!」

「この子可愛いわ。連れて帰っていい?」

「ダメ。それじゃあお邪魔します」

「むむ、お邪魔します」


 そんなやり取りを聞きながらクスリと笑ったもみじは、自分の家に戻るために先頭を進んでいく。






 静人達がもみじの家にお世話になっているころ、山の奥に誰にも見つからないようにひっそりと建てられた小さい鳥居と古びた家で少女の声が響く。


「たまにはどこか行く……、あ、もみじちゃんの所に行こう」


 鳥居の奥の家の縁側で暇そうに足をプラプラしていた一人の女の子は、無表情で少し考える素振りを見せた後、一人の少女のことを思い出したのか、プラプラさせていた足で地面に立つとすぐさま駆け足で走っていった。なぜか走っていく途中で猫の姿に変わっていたが……。


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