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 餃子の材料をもみじ達の家に持っていき開けるともみじがびっくりしたような声をあげる。


「わわ、なんかすごい匂いだね!」

「あ、うん。ごめんね。やっぱりにおうかな?」

「臭いわけじゃないけど刺激的? 今日の晩御飯?」

「うん。作り方というかほとんど作ったものなんだけどね。今日は餃子を作ります」

「ぎょうざ?」


 聞いたことない響きだったのか首を傾げたまま止まるもみじに笑みを浮かべながら餃子のタネと皮を見せる。見たことないものだからか興味津々な感じで皮を見つめる。


「まずお手本で作るから見ててね」


 静人は手を洗いながらもみじ達に話しかけもみじ達が頷き返すのを見た後目の前で餃子作りを実演して見せる。


「この皮にこんな感じで真ん中にポンっておいて包むんだ。包んだ後はこうやって少し水を付けながら皮を折りたたんでいく。はい、準備はこれだけだから二人もやってみて」

「この後どうやって食べるの?」

「この後は焼いて少し蒸す感じかな。その時になったら教えるね」

「うん!」


 もみじが元気に返事するのを見届けた後和気あいあいとした雰囲気で餃子を包んでいく。最初は苦戦していたもみじは少しずつ慣れてきたのか皿に積みあがるほどの量を作る頃には慣れた様子で餃子を包んでいた。青藍もこういう作業は好きなのか黙々と皿に積み上げていく。


「結構作ったからもうそろそろ焼いていこうか」

「うん!」

「音がうるさいけど気にしないでね」

「ひゃっ」


 パチッと油のはじける大きな音を聞いてビクッと体を跳ねさせた青藍は声をあげながら離れて桔梗を盾にする。


「なんなのだ!? なぜわしを盾にするのだ!?」

「ごめん。驚いてつい」

「つい、でわしを盾にしないでほしいのだ……」

「ごめんごめん。痛いの嫌だし」

「わしも嫌なのだ……」


 罪悪感があるのか謝りながら目を逸らす青藍に、ジトっとした目で見つめつつ桔梗が呆れた声で首を振る。そんなやり取りをしていた桔梗の鼻にお腹を空かせる匂いが届く。


「ん? 何かいい匂いがするのだ」

「ホントだ。美味しそうな匂い」


 クンクンと鼻をひくつかせる桔梗と青藍はもみじと静人に近づいていく。油のはじける音に驚いて少し固まりながらも少しずつ近づいていったが、水を入れてからふたをした時の音にまた驚いて後ろに下がる。


「ふたをしてるから大丈夫だよ」

「油が跳ねる心配はなくても音が大きいのはびっくりする」

「そうなのだ。大きい音はびっくりするのだ」

「えへへ、私は慣れてきたかも。何回も料理のお手伝いをしてると驚かなくなってきたよ。青藍ちゃんも一緒にお手伝いしてたら慣れるよ? 桔梗お姉ちゃんも一緒に作ろうよ」

「多少は手伝うけど本格的なのはヤダ」

「わしは遠慮しとくのだ。どうしても料理はちゃんとした物が作れないのだ」

「あれ、桔梗お姉ちゃんって料理作れないの?」

「うむ、恥ずかしい話なのだが昔張り切って作って振舞ったら皆が体調を崩したことがあるのだ」

「あ、うん。桔梗ちゃんは基本的なところから教えていこうかな」


 桔梗のカミングアウトに静人は顔が引きつらないように注意しながら優しく声を出す。


「でもさばくのは得意。だから切る作業は任せて。料理作るのはもみじちゃんに任せる」

「分かった。料理は好きだから任せて!」

「いっそのこと役割分担してみる?」

「役割分担なのだ?」


 話を聞いていたかなでは会話に加わり提案をする。桔梗は単語の意味が分からなかったのか首を傾げる。かなではそのしぐさに頷き会話を続ける。


「そう、料理はもみじちゃんでしょ? だったらお風呂掃除とか洗濯とか……。そういえば洗濯とかしているの?」

「うむ、なにか勘違いをしておるような気がするのだ。わしらの体は存在する限り何も変わらぬのだ。……だから、その、料理も食べなくても大丈夫なのだ」


 桔梗は言いにくそうに最後の言葉を呟くが、かなではそんな桔梗に優しく微笑み頭を撫でながら語りかける。


「でもおいしいとは感じるのでしょう?」

「うむ。いつも美味しいと思っておるのだ」

「それならもっと食べないとね。あれ、ということは汗かいたりトイレしたりしないの?」

「うむ。お風呂に入るのも別に体についた汚れを落とすためのお風呂なのだ」

「じゃ、じゃあ……、耳かきとかできないの!?」

「え、そこなの?」


 少しずれたかなでの言葉に静人が思わずといった様子で突っ込む。桔梗はかなでに対してはそういうものだと認識しているからか特に反応せず会話を続ける。


「別にやるのは構わんのだ? でも、何も出てこないと思うのだ。まぁ、今更言うことでもないと思うのだが、わしらは人の姿をしているだけで人ではないし動物でもないのだ」

「あ、そういえばそうだったわね。なんだか忘れてしまうわ」

「忘れるのは普通無理だと思うのだ。まぁお姉ちゃんならしょうがないのだ」

「かなではもう諦められてるのか……。そこまで長い付き合いでもないのに諦められるってある意味すごいよ」

「しず君。人とのつながりは時間だけが決めるわけじゃないってことだよ」

「あれ、そんないい話だったっけ……」


 静人はかなでの言葉に何か違うと思ったが、わざわざ蒸し返す話題だと思わなかったのか頭を切り替えて焼いていた餃子に集中する。パチパチと音が聞こえてきたところでふたを外し若干残った水分を飛ばす。


「うん、いい匂い。いい感じに焼けたね」

「美味しそう!」

「あはは、美味しいよ。熱いうちに食べるのが美味しいから皿に盛って食べようか。残りを焼くのは残りが少なくなってきてからでいいかな」

「うん!」

「お腹空いた」

「この匂いはお腹に来るのだ」


 餃子の香ばしい匂いに我慢ができないのか、皿から離れようとしない三人娘に苦笑を漏らしつつ皿に盛りつけて先に食事をすることにした。


「たくさんあるからどんどん食べてね!」

「全部は無理かもとは思ってたけど意外にいけそうだね。よし、みんな手は洗ったかな?」


 静人の言葉に元気に頷いた子供たちに笑みを見せる静人は手を合わせる。


「それじゃあ食べようか。いただきます」

「「「「いただきます!」」」」


 元気な声を出した三人娘とかなでは餃子に手を付ける。大きく開けた口で我先にと食べた青藍を見て慌てた様子で静人が口を開く。


「あ! 結構熱いから気を付けてね!」

「あふっ!」

「うむ、大丈夫なのだ? あ、涙目なのだ」

「せ、青藍ちゃんお水いる?」

「ありがとうもみじちゃん。舌やけどするかと思った。ふーふー」


 青藍は涙目になりながら口をハフハフさせて餃子を飲み込んだ後他の餃子に息を吹きかけて熱を冷ます。今度はそこまで熱くないものを食べたからか味がしっかりと分かったようで美味しそうに飲みこんでいた。


「うん。おいしい。他の二人は食べないの?」

「いや、熱いと聞いておったから冷ましておるだけなのだ。熱い思いをしたはずなのに気にせず食べれるのに驚くのだ」

「こんなにいい匂いをしてるんだから食べないともったいない」

「はぐはぐ、うん。おいしい!」

「で、ではわしもいただくとするのだ」


 桔梗は自分だけ食べないままなのを嫌がり、息を吹きかけて冷ましている最中の餃子を口いっぱいに頬張る。外側は十分に冷えていたが中はまだ熱いままだったからか吐き出しそうになっていたが涙目になりながらも飲み込んでいた。そんな桔梗を見た青藍はそっと水を差しだす。もみじは目の前の餃子に夢中になっているためにそんな桔梗の様子に気付いていなかった。


「うむ、助かったのだ青藍」

「熱いから一つを丸々口に放り込まないほうがいいよ」

「うむ、身に染みて感じたのだ」


 冷やすためか口から舌を出した顔でうんざりした表情をする桔梗だったが、美味しそうな匂いには抗えないのか熱を冷ました餃子をちびちびとかじっていた。


「美味しいかい?」

「うん! えとね、外はカリッとしててね。でも、中はもちっともしててなんというか美味しいの!」

「うむ、おいしいのだ。程よい温かさだとさらに良いのだ。ご飯が進みそうな味なのだ」

「そう? 私はこれだけでもいいよ?」

「味が濃い感じがするのだ。そういえばこれには何かかけたりしないのだ?」

「刺激がほしかったりするならラー油も持ってきたけど、あとはゴマダレで食べたりもするね。今回はポン酢だけど」

「ポン酢なのだ? 酢、ポンって何なのだ? ラーも何なのだ?」

「え? そういえば調べたことなかったね。当たり前のようにあるから気にしたことなかったよ。あ、醤油と酢とラー油を合わせたものとかで食べたりする人もいるらしいよ」

「酢とこしょうを合わせたものに浸けて食べたりする人もいるわよ。私の親がその食べ方だもの」

「僕はポン酢以外で食べたことなかったな。今度持ってくるときはいろんな食べ方をしてみようか。って、もう食べ終わっちゃったんだね。新しく焼いてくるけどまだ食べれる?」

「まだまだ入るよ!」

「私はこれだけでいいかな」

「わしはもう少しだけ食べたいのだ」

「分かった。それじゃあ作ってくるね」

「しず君。私も手伝うよ」

「そうかい? それならお願いしようかな」


 まだ皿に少しだけ残っている餃子を少しずつ食べる子供三人を置いて大人二人は餃子を作りに調理場に戻るさっきまであった餃子は跡形もなく食べつくされており、お腹を空かせた子供が待っているだけだった。


「やっぱりたくさん食べるね。熱いから気を付けて食べてね」

「食べるときは注意だからね?」

「なんで二人して私を見るの?」

「だって、青藍ちゃんさっき真っ先に食べ始めて舌火傷しそうになってたし」

「いや、もうお腹いっぱいで食べられないから……」

「あ、そうだったね。それじゃあ危ないのはどちらかというと桔梗ちゃんの方か……」

「も、もう口いっぱいに頬張ったりしないから大丈夫なのだ!」


 桔梗はさっきのことを見られていたことが恥ずかしいのか少し顔を赤くして力強く断言する。


「青藍以外は気が付いておらんと思っていたのだ……」

「あはは、さすがに一口で食べたりする子を見たら目が吸い寄せられちゃうよ」

「もみじは気が付いてないみたいだけどね」

「ほへ? どうしたの青藍ちゃん?」

「なんでもない。そんなにたくさんどこに入るの?」

「お腹の中だよ?」


 違うそうじゃないとでも言いたげな顔で引きつる青藍だったが、のほほんとしたもみじの顔を見て言葉を重ねるのをやめる。桔梗はそんな青藍たちの会話の様子を見ながらちびちび餃子をつまむ


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