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「というわけでもみじ。教えるから静人から渡された本を持ってきてほしいのだ」

「うん! 待ってて!」


 静人達が帰った後手渡された本を大事そうに抱えて走ってくる。その後ろから青藍もついてくる。


「そういえば結局、あの袋の中身は何だったんだろうね?」

「お姉ちゃんも静人も教えてくれなかったのだ。変なものではないと思うが……、気になるのだ」

「今度見せるって言ってた。それまで待つ」

「そうだね。楽しみにしとこう! それより、文字教えて!」

「そうだった。えっと」


 桔梗がもみじから本を預かるとその後ろで青藍も一緒に読み進める。読み仮名がふってあり、写真が付いているからかすんなり読めたらしく安堵していた。


「これなら、大丈夫なのだ。青藍はどうなのだ?」

「私も大丈夫。これぐらいなら読める」

「それじゃあ、もみじに一緒に教えるのだ!」

「うん。教える」

「よろしくお願いします!」


 もみじの元気な返事に二人は頷いた後、一緒に読み聞かせる。文字を書くための紙などはなかったので地面に書くことになったが、それでも覚えることが楽しいのかもみじは泣き言も言わず着実に覚えていった。


「次はこっちの本も読むのだ。本は数冊しかないから丁寧に扱うのだ」

「難しい字は使われてない。多分そういうのを選んでる」

「そうなの? それなら、すぐに覚えてお兄さんたちを驚かせよう!」

「うむ、その意気なのだ」


 もみじが静人達のやさしさにやる気をみなぎらせていると、そのことに気をよくした桔梗のやる気も上がりどんどん文字を覚える速度が上がっていく。文字を覚える過程で何回も同じ箇所を読んでいるおかげか料理の知識も増えていく。


「うむ、意外と早く覚えてしまったのだな?」

「えへへ、桔梗お姉ちゃんたちのおかげだよ。どうせなら、他にも覚えたいけど、もう本がないし……」


 はにかむもみじはまだまだ物足りないのか貪欲な姿勢を見せるが、手元には静人から渡された本が数冊のみ。桔梗は助けを求めるように青藍のほうを見る。


「うむ、青藍……? 何かないかのう?」

「うーん、家に帰ればあるかも。探してみる」

「あ、だったら私たちも一緒に行く! たくさん持ってくるなら人数多いほうがいいもん!」

「そう? 桔梗は?」

「無論、わしも行くのだ。お姉ちゃんたちは今日の夜も来るのだ?」

「毎日夕方は来てくれるから来るはずだよ!」

「それなら急いで帰ってきたほうが良いのだな。行ってすぐに戻るのだ」


 やることが決まってからはすぐに動き出した。何せ青藍の家は地味に遠い場所にある。本を持って帰ってくるためにのみ往復するとはいえ、急いでやらなければ静人達がやってくる時間になってしまうからだ。一人よりも二人、二人よりも三人という考えになっているからか、誰かが残るとは考えつかないみたいだ。


「しゅっぱーつ!」


 もみじが元気よく掛け声を出すと三人は走って青藍の家まで向かう。もみじの家まで毎日通っているだけあって先にたどり着いたのは青藍だった。次に桔梗。最後にもみじの順でついた。


「一位」

「昔より早くなっている気がするのだ……。師匠としての面目が……」

「今は師匠じゃない。……昔もだけど」

「桔梗お姉ちゃんも青藍ちゃんも早いよー! わー、久しぶりに青藍ちゃんの家に来た気がする!」

「そうだっけ?」

「ちゃんと掃除してる? 私の家みたいになるよ?」

「こまめにしてる。大丈夫。今は本のこと」

「あ、そうだね。持っていったらダメな本とかある?」

「別にない。でも、役に立ちそうな本はそんなにないと思う。待ってて」


 青藍はもみじ達と別れ家の中に入り、少しして本を抱えて戻ってくる。


「これぐらいしかなかった。あとは昔の文字すぎて覚えても役に立ちそうにない。これなら山の中で拾った比較的新しい本だから役に立つと思う」

「ホント!? これくらいなら一人数冊ずつだから一往復で済みそうだね!」

「うむ、わしはお姉ちゃんだから何冊か多く持つのだ!」

「大丈夫? 意外に重いよ?」

「う、うむ。大丈夫なのだ! ……大丈夫なのだ」


 桔梗は二人より数冊多く持ちお姉ちゃんアピールをするつもりだったが、持ってみると予想よりも重かったのか少し引きつった顔になっていた。それを見て青藍が呆れた顔になる。


「だから言ったのに。肉体的にはそんなに変わらないんだから平等に持つ」

「う、うぐぐ、お姉ちゃんとしての威厳……」

「無理しても威厳は生まれない」

「むぅ、それならどうすれば」

「というか、私は桔梗の友達。それなら威厳なんていらない」

「ハッ! その通りなのだ。わしが間違っていたのだ」

「うん。とりあえずこれ持って、もみじちゃん誰が先に帰れるか勝負ね?」

「え? 分かった! 負けないよ!」

「次はわしが一位なのだ!」


 結果はさっきと変わらずだったが、みんな走って疲れていたが、楽しそうに笑いあいながら家に帰り着き、本を部屋に置き自分たちの体を見てまた笑いあう。


「さすがにこの格好でご飯は食べたくないよね?」

「うむ、ということでお風呂なのだ!」

「お風呂、お風呂」

「あ、桔梗お姉ちゃんは知らないんだっけ? こっちこっち」

「うむ? なんなのだ?」

「お兄ちゃんたちが作ってくれたの!」

「ほう! これは何なのだ?」

「お兄ちゃんは用水路って言ってたよ? 近くに水があったほうが汲むときに楽だよね。って作ってくれたの」

「一人でか?」

「ううん。お姉さんも一緒に!」

「ほわー、すごいのだ! あとでわしからもお礼を言うのだ! だが今は、お風呂なのだ!」

「うん、お風呂大事。すぐに準備する」

「せ、青藍はお風呂が好きすぎなのだ。前あったときはめんどくさがりだった気がするのだ」

「お風呂は別。早く入りたい」


 表情を変えず棒読みではあるのだが急かしてくる青藍に気圧されたのか、それからは何も言わずに黙々と水を汲み浴槽に水を運んでいく。途中からもみじが薪を燃やし下からお風呂を沸かしていく。さすがにそのままだと熱いからか、ちょうどいい温度になるように川から水をつぎ足していき、ちょうどいい温度になったところで我慢ができなくなったのか三人で一緒にお風呂に入りだした。体を洗い、綺麗になったところで浴槽に仲良く三人で浸かる。


「うむぅ、いいお湯なのだ……」

「気持ちいいね……」

「いいお湯……」


 三人は冷えた体をお風呂で温めて気持ちよさそうに目を細める。独り言をつぶやいただけで会話はなく冷え切った体をほぐしている三人だったが、静人達が来る時間が近づいてきたのが分かり名残惜しそうにお風呂から上がる。


「よし! 綺麗になったし服着て待っとこうね!」

「今日はどんな料理なのだろうな……」

「おいしいのは間違いない」


 湯冷めしないように体から水をよくふき取り、巫女服に着替えた三人はまた会話に夢中になる。会話に夢中になっている途中、静人達がやってきたのを察知したもみじがパタパタと走っていく。


「あ、お兄さんたち来ました!」

「ふむ、分るのがもみじだけなのはあれなのだ。風鈴でも作っておくのだ」

「なんで風鈴?」

「なんとなくなのだ。他の物でもいいのだ?」

「他の物……、特に思いつかないからいいや」

「じゃあ、作っておくのだ!」


 桔梗は家の中に入って作業を始めた。青藍はそんな桔梗を最初は観察していたが飽きたのか外でもみじ達が来るのを待つのだった。


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