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何もなかった

作者: なべしま

父が捨てなかったチョコパイのゴミ

父が消さなかった洗面所と食卓の電気

父が閉めなかった玄関の鍵

父が使って洗わなかった包丁まな板フライパン

父が食べてしまった私と弟のぶんのお菓子の一つ


母が気づいてまたいら立ちのこもったため息と文句と怒りがこぼされる前に

黙って静かにサッと始末する。


今日もまたできるだけ気がついていないうちに、気がつかないように片付ける。

母も父も弟も気づいていない。気づかれなければ無かったも同じ。これで正解。



チョコパイのゴミはもとからゴミ箱にあったように

洗面所と食卓の電気は消されていたように

玄関の鍵は閉められていたというように

包丁まな板フライパンはきれいに洗って乾かされていたように

お菓子は待ちきれなくて私が食べちゃったといったように


振る舞う。




誰にもバレないようにやった片付けや我慢は、誰にも褒められることも労われることもない。

当たり前だ。誰にもバレないようにやっているのだから。





 ………それでも、少しだけほんの少しだけ誰かに気づいてほしかった

   褒めてくれなくてもいいし、労わなくてもいい。

   ただ気づいてほしかった。

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