異世界サバイバル
人生で初めて小説を書いてみましたが、文章で表現するのがこんなに難しいとは思いませんでした。
最初は読みずらいかもしれませんがご容赦ねがいます。
書いてるうちにうまくなっていく予定です。
毎回ではありませんが、できるだけセルフケアできる健康法や養生法を盛り込んでいきたいと思います。
風邪や急性腰痛(ぎっくり腰)などのケーススタディは、症例〇〇という題名にします。
たぶんあと10話ぐらいはまとまった症例はでてきませんので、気長にお待ちいただければと思います。
異世界サバイバル
意識が戻ると森の中だった、熱くも寒くもない、頬をなでるここちよいそよ風が気持いい。
ここは?
「森!!?」
がばっと上半身を起こし、辺りを見回す、
さっきまで商店街にいたはずだ、いきつけの喫茶店で、お気に入りのふわふわのパンケーキとマスターこだわりの自家焙煎珈琲を満喫したところまでははっきりと記憶にある、で、店を出たら...
「森!??」
ゆっくりと立ち上がる、
これはいったいどうしたことか?
服装はまだ少し肌寒い春だからロングコート、その下にカーディガン、さらにその下に白の施術着を着ている。
そして鍼やもぐさ、カッサと呼ばれる石のプレートや、吸玉というガラスのまるいビンなどがはいった往診バッグを持っている。
財布とケータイを含め、なくなっているものはないみたいだ。
とりあえず情報収集のために歩き出してみる。が、嫌な予感しかしない。
職業柄植物には詳しいほうだけど、ほとんど見たことのない植物ばかりなのだ、
はたしてここは日本なのか?
意識を失って起きたら外国にいる?
誘拐された?
それならたぶんみぐるみはがされてるよね?
「どこここ?」
異常な状況で緊迫しているはずなのに、なぜか現実味がない、
ふらふらと歩みをすすめる。
とはいえ心の片隅で不安を感じていたためか、無意識に口笛を吹いていた。
だが悪い気分ではないな、森はアマゾンのように鬱蒼と木々が生い茂った密林ではなく、木洩れ日がさわやかで、風通しもよいここちよい林だ、鳥のさえずりさえも聞こえる。
リラックスながら気分は森林浴なのだが...
「遭難したことに、なるのかな?俺?」
ポケットのスマホを取り出して、淡い期待をいだきながら画面を見るも、やはり圏外である。
さて、どうしたもんか。
と、ふいに茂みからガサガサと音がした。
さすがに全身が硬直して身構えた。
「なに??」
腰を低くして茂みを注視していると、
勢いよくうさぎ状の物体が飛び出して、走り去っていった。
「おわっとと!」
「なに?!なに今の、あぶねー」
角が生えてたように見えたんだけど、そんなウサギいたっけか?
魚のイッカクとか実際に角はえてるじゃん?
ウサギも角のある品種いたかもしれない、昨今の科学技術で新し品種できたんじゃね?
でも角も可愛いかもだけどペットとしてはあぶなくね?
なんて、無責任なことをかんがえながら歩いていたら、
今度は唐突に木の上からある物体が落ちてきた、
あぁ、ここは現実世界ではなく異世界なんだな、なんかもう取り返しのつかない状況に追いやられてしまっているんだと確信させるはめになる、
だいたいどのRPGでも似たようなのが一番最初に出てくる、あのモンスターが登場した!
半透明で水色、ぶよぶよしたゲル状の動く塊、
といったらもうあいつしかいないでしょ?
「スライム?ですよねコレ? スライム!!?」
この世界のスライムはつの的なとんがりもなく、まんまるなわけでもなく、かなり流体でドロっとしているみたいだ。
だがまぎれもなくスライムである。
ビビった!!
鳩が豆鉄砲食らったような顔って表現使ったことないけど、今の俺が絶対それだ!
だが同時にちょっとニヤニヤもしていたと思う、小さいころゲームをやったことある少年少女なら誰もが一度は考えたことがあるだろう、ゲームの中の世界に行ってみたいと!
目の前に生きて動いているスライムがいるってことは、少なくとも元居た世界ではない。
このさい異世界だろうが、夢落ちだろうが、今の状況を楽しんでやろうと思い始めた。
核も内臓もなさそうだ、襲ってくる様子はないがどうやって倒すんだろう??
しばらくスライムであろう生物をながめていたが、
「ま、襲ってこないならいいか」
君子危うきに近寄らず!
変に手を出して溶かされても困るので放置することにした。
しかし、モンスターがいるということは、このままここにいるわけにもいかないな、
日が暮れる前に安全な場所に移動しなければ!
「さてどうしたもんか?まずは安全な寝床の確保か?」
来ちゃったもんはしょうがねぇ、異世界!!
この時すでにもう、なんかあきらめを通り越してなのか、かなりドキドキわくわくしていた。
現実世界にもどる算段をみつけるまえに、まず生き延びねばならない、たぶん食べないと死ぬし、モンスターに襲われても死ぬ、よくある異世界ものの漫画みたいにチート能力が発現したわけでもなさそうだ、
力がみなぎってくるどころか、おっさんちょっと体力に不安を感じてるよ...
だが年甲斐もなくかなりテンションがあがっていた。
「そういえばチート能力くれる神様にあってないよなぁ」
ふとそんなことを思った。
異世界漫画だと大抵、神様とか女神様の手違いで主人公が死んじゃって、神様のいる空間に呼ばれて説明を受けた後、お詫びに特殊能力を授けてもらって転生するじゃん?
で、チートで大活躍してモテモテハーレム状態なわけですよ...
「あはは、まぁでも現実はこんなもんかね?」
って現実じゃなさそうなんだけども。
「ん?逆にもしかして俺死んでないのか??」
神隠し的ななにかだろうか?
それなら俄然東京に戻れる可能性が膨らむじゃないか!おぉ!
千尋ちゃんも湯屋でがんばって働いてたもんね、おっさんもまずは頑張って生き延びねばなるまい!
異世界とわかった以上、救助は期待できない。
日本で遭難したら水さえあれば、救助が来るまで、カロリー消費をおさえるために極力動かずにじっとしているのも手だが、今の状況では動かざるをえない。
できるだけカロリー消費を抑えるために、ゆっくりと歩く
脳も非常にカロリーを消費するためリラックスを心掛けて、歩きながら考える。
歩行と思考、歩考と思行・・・
サバイバルで最低限必要なもの
「水、火、食料、寝床...あとは健康、この世界だと武器もだな」
とりわけ水だ!食料は1週間ぐらい食わなくても死なないけど水はヤバい、最低でも1日に3リットルは確保できなければその時点でガチでゲームオーバーだ。
「最優先事項は、水の確保!」
幸い在宅訪問先でおばあちゃんから差し入れでもらったペットボトルのお茶とおにぎり3個、毎日3時のおやつがてらに飲む缶コーヒーとチョコひと箱、ちょと子供っぽいが昔から大好きで欠かさないラムネ菓子がある。
「ふむ、食料はちびちびいけば、3日はもつが...500のペットボトル一本はまずいな、」
「缶コーヒーは利尿作用があるからプラマイゼロ、はやいとこ池か川をさがさないとな、まぁこの森なら、少量なら朝露も集まりそうだ。」
それに川をみつければ遅かれ早かれ、少なくとも街道や村にはたどり着くはず。
日本の川のように滝がいっぱいなければの話だが...
登山の時ならば、遭難したら川に下らず尾根に向かって登る、その方が登山道を見つけやすいからだ。
しかしここはそんなに高い山あいの土地ではないみたいだし、茂った草木に行く手を阻まれるような熱帯雨林でもない。下りるのも登るのもそんなに苦にはならなそうだ。
そのほかの不安といえば、ここが恐竜時代のように、人類がまだリスみたいな哺乳類だった時代じゃないことを祈るしかない。
次に今ぐらいの時期だと夜までに火を起こさないと低体温症で死ぬ可能性がある。
昔バイクにテントを積んで旅をしているときに、春先なのに琵琶湖のほとりでテントを張ったが、寒くて一睡もできないどころか震えが止まらず、ついには夜な夜なバイクを走らせ一番最初に目についたコンビニにかけこみ、熱々のカップラーメンに命を救われたことがある。
いやほんと大げさではなく、底冷えの恐ろしさを初めて認識した時だった。
カレー味のカップラーメンはいうまでもなく泣くほどうまかった!
あとは、モンスターがいることも考えると、安全な寝床も必要だ。
火おこしはキャンプで何回かやったことがあるからやり方はわかるのだけど、実際にゼロから木をこすり合わせて火をつけるのはかなり骨が折れる、というか体力的に自信がない。
若い時ですらきりもみ式では手にできた豆が破れてしまい断念した。
最低でも弓切式用の道具づくりのために、植物のつるか、木の樹皮を割いて縄をつくるところからはじめなければいけなくなる...
日が暮れるまでにまにあうか?
夜には得体のしれないモンスターが現れる恐れがある、せめて火はほしいところだ。
だが幸運なことに、今回はお灸をするために用いるライターを持っていることに気が付いた。
「ヒュウ!ついてる!」
おもわず口笛がでた。
ありがとう文明の利器!
江戸時代の人でさえ100円ライターみたらきっとその透明でカラフルな未来ガジェットにテンションぶちあがること請け合いである。
しかし心配なのは薪だ、おそらくここ最近雨が降ったようで、地面に横たわっている薪はそのままだと湿っていて使えなさそうだ、
長いこと水につかってなければ中は乾いているため、割れば使えるのだが、薪割のための斧がない、現代の都会で斧なんて持ち歩いていたら、ひょんなことから速攻でテレビで有名人になれる。
いまのところ手で折れるぐらいの細い枝ぐらいしか燃料として使えないか?
「うーむ斧か、ナイフ」
武器をかねて石器をつくろうか?
だけど異世界に黒曜石ってあるのかな?現世にだってめったにあるもんじゃないし...
「寝床はどうする?」
特にここはモンスターが出る、生態系もわからない異世界だ、開けた場所でのキャンプはまずい、
できれば奥が狭くなっている洞窟か、木の上?
「ダメだ、スライム落ちてきたの木の上からだよな」
やはり奥まで続いていない、崖の下のひさし状になった浅い洞窟が良い?
入口付近に火を焚いておけば大抵の獣は近づかないだろう、そう思いたい、そうであってほしい、お願いします。
現時点でとりあえずの水は確保している、であれば谷を下って水源を探すよりも優先すべきは、まず高台に上って遠くを見渡し、できるだけ広範囲の情報を収集することだ。
川や湖がみえるかもしれないし、ひょっとしたら人が住んでいる村がみえるかもしれない。
「よし!まずは山登りかね」
方向性がみえてくると俄然やる気が出てくる。
ほら、勉強や仕事もそうだよね、多すぎて何から手を付けていいかわからなくてやる気が出ないときは、まず目の前のできそうなことから手をつけてみる。
とりあえず歩き出せば今見ている風景が少し変わって、次の変化をみたくなってくる。
というわけで目についた一番近い高台をゆっくりと登っていく、汗をかくと冷えてのちのち面倒なので、焦らずゆっくりと行く。
しかしあまり見たことのない植物ばかりだな、
ピンポン玉ぐらいの緑の球体がたくさんついていて、オレンジ色の葉っぱのような形をしたものがところどころについている植物がめについた。
この世界では光合成をするための葉緑体が緑ではなくオレンジ色なのか?
それにしては葉っぱ状のものが少ない気もする、比率的にはオレンジ色の葉っぱが果実に該当しそうなほど緑色の球体のほうがたくさんついている。
それに球体の葉っぱでは上はともかく底面に光は当たらないだろうから光合成効率が悪そうで不自然だ。
さすが異世界、よくわからん!
いずれにしろ今のところ目下食料はあるので食べたいとは思わないが...
途中サンタクロースのひげのような地衣類が木から垂れ下がっていたので採取しておく、しっかり乾燥させれば着火の時にやくにたつからね。
30分ぐらい歩いたかな、モンスターにも遭遇せず無事に山頂までたどり着いた。
「やぁ、これは絶景!」
この辺りは高い山はなく、凸凹と丘が連なって地平線まで続いているようだ。
春先にしては寒い地方のようだけど
生き生きと生命あふれる緑と、ちらほらみえる色鮮やかな花、澄み切った青い空、そして鏡のように煌めく池が点在している。
「遠くのは距離を考慮すると湖かね?なんにしろ水の心配はなさそうだ」
太陽が地平線に接するまでの距離を手のひらを閉じて測ってみる。
指幅4本分で約一時間とするから、日没まであと約4時間といったところか?
どう頑張っても一番近い池まで行って、火の確保と基地を設営することができる時間ではない、走ればいけなくはないかもしれないが、池の水が飲めるとも限らない、無理して大量の汗をかけば万が一池の水が飲めなかった時点でアウトだ、モンスターの死骸でも浮いてたら、煮沸しても飲むのははばかられる、リスキーすぎる。
健康第一!
「まぁ今日は近場でキャンプだな」
さっそく設営場所をさがそう!おてんとさんは待ってくれない、懐中電灯などの照明器具など持っているはずもないので、日が落ちるとほとんど作業ができなくなる。
「あ、そういえばスマホの電源切っとくか」
電源を落とす際に一応電波のマークをちらみしてみたが、当然のように圏外になっていた。
はい、なんかの時に写真とかムービー使うかもしれないし電力温存しとこう。
というかこの世界に電気ってあるんだろうか?
「お!こいつはよさそうなとこだな」
一番近い水場にむかって下りだして少ししたところに、適度な浅さの洞窟をみつけた、洞窟というより、ひさし程度のものだが、一晩のねぐらにはちょうどよさそうだ、ここにしよう!
さっそく鞄をおいて、木材集めに出かけた。
まずは薪の確保、できるだけ乾いてそうなものをみつくろって何度も往復する。
斧がないので太い薪は入手できない、ぶら下がったりして体重で折れるぐらいの枝までの太さの物がほとんどだ、何本かは葉っぱのついた状態のまま枝ごと折り取って寝床の部分に敷き詰めた、地面と直接接触していなければ底冷えも多少はましになるはずである。
ためしに寝転がってみると感触もふかふかで良いではないか!
お次はキャンプファイヤーだ!
ライターもあるし、なんたってA4用紙がある、地衣類も歩きながらいくつか採取してコートのポケットにいっぱい入っている、小さいものから順々に火を移していって順調に太めの薪に火が移った。
これでしばらくは安定するだろう、とはいえ細い薪じゃ朝まで到底持たない、得体のしれない獣がいることを考えると、2~3時間ごとに起きて薪をくべ続けなければなるまい。
とはいえ無事に火と安全かはわからないが寝床を確保できたので、急に腹が減ってきた。
さっそく鞄から患者さんの差し入れのおにぎりとペットボトルのお茶を取り出す、おにぎりはアルミホイルにくるまっていたので、そのまま火の近くにおいて少しあたためておく。
そのあいだにペットボトルのお茶のキャップを開けてはやる気持ちを抑えながら口元にはこぶ。
「あー!うめぇーー!!くぅーー」
作業中ものどがカラカラだったが、貴重な水を温存するために、こちらの世界にきてからはじめての水分だった、喉をうるおし食道を通って全身に染みわたっていく感覚、ただのペットボトルのお茶がこんなにうまいなんて!
ほどなくあったまった梅干しのおにぎりも涙が出そうなほどうまかった!
ありがとう!おばあちゃん!ありがとう!
そうこうしているうちにすっかり日が沈んでいた。
夜はほんとうに心細い、視覚からの情報が極端に減る分、聴覚が鋭くなるためか、森の音だけがやたらと耳につくようになる、虫の音、風の音、植物のざわめき、なんかモンスターの鳴き声っぽいのも聞こえる、
右も左もわからない異世界の森の中にひとりぼっち、不安で心細すぎる。
こういう時は、左右の手のひらの真ん中あたりで棒の両端を挟んで、篭球「労宮」というツボを刺激する、不安な時、緊張してリラックスしたい時はここを刺激するとよい。
学校や職場だったら、ボールペンの両端を使うとよい。もちろん芯はしまった状態でね。
場所は、てのひらを握って中指と薬指の間が当たるところであり、
(手掌、第2、第3中手骨間、中手指節関節近位陥凹部)
発表会など大勢の前に出るときに緊張したら、てのひらに「人」という文字を3回書いて飲み込めという迷信があるけど、あれは「労宮」を刺激しながら息を吸うことで、昂った交感神経を落ち着かせるものではないかと思っている。
昔ながらの一見眉唾にみえる迷信の中には、あながち間違っていないことがけっこうあったりするのだ。
しばらくすると、呼吸が深く吸えるようになり、おだやか気持ちになってきた。
とりあえず右も左もわからない世界だけれど、今日という一日は生き延びられそうだ。
明日はとにかくできるだけ移動して村を探そう!
人間の村かわからないけど、とにかく歩くしかない。
明日の体力確保のために早々に寝ることにした。