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チートな少女の異世界記  作者: ナトセ
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城脱出と城のその後

途中から視点が変わります。

しばらくカムイがシャルを抱きしめているとだんだんと泣き声が小さくなり、次第に収まる。

それを確認したカムイはそっとシャルを放し、『収納庫アイテムボックス』から取り出しておいた綺麗な布を差し出す。

ちなみにこの布も一種の魔道具で大賢者作のものである。

この布の正式名称は〔涙に濡れた君の瞳にこのハンカチを〕というタイトルからしてツッコミどころ満載の品であった。コットンベアという魔獣の一種から採取した熊綿という素材を使った真っ白な生地。そして清潔化という常に清潔を保つという魔術とクールというほんの少し布を冷やす魔術、そして効果を腫れを治すという効果だけに限定して消費魔力をなくしたヒールの魔術が付与されており、涙で腫れた目元だけを拭く為に作られたといっても過言ではない品であった。

カムイはこの品の存在を知って大賢者はなかなか愉快な人だなと思った。


「シャル、これで拭いて?大賢者さんの作ったもので『収納庫アイテムボックス』に入ってたものだからちょっとかっこつかないけどね。ちなみに魔力を流しながら使うといいらしいよ?」


シャルは差し出された布を受け取り、カムイの言うとおりに魔力を流しながら拭いてみる。

するとどうだろう、涙で少し腫れた目元にひんやりとした布が当たり心地いい。しかもごわごわした感触が一切なく長時間触っていても飽きそうにない肌触りであった。

シャルはその感触に驚くがカムイの言った大賢者様の作ったもの、そして魔力を流すという単語を思い出し、何かしらの魔道具なのだろうと見当をつける。


「さてシャル、落ち着いたかな?・・・・うん、じゃあ早速脱出と行きますか。っとその前にこの机とイスもしまっちゃおうっと。」


「え?なんでそれもしまっていくんですか?机とイスなら私の部屋から一通り入ってますよね?」


「ああ、まあそうなんだけどね。これらも大賢者さん作でかなり貴重なものらしいんだよね?というか本来こんなものには絶対に使わないでしょって類の素材みたい。いやぁ、さすが大賢者さんだねぇ、いろいろと遊び心があるというか盛大に無駄遣いしてるよ。」


「ちょっとそれを聞いて確認したくなくなったんですが、もうどこまで聞いても同じ気もしますし教えてもらえるですか?その机とイスに使われている素材を・・・。」


「うん、いいよ?これはね・・・・・・世界樹って言われている木の枝を削り出して作ったものらしいよ?」


「せっっっっ、せっ、世界樹!?もしかしてあの世界樹ですか?」


「う~ん、どのあのかは知らないけど情報によると、世界に九本しか存在しないと言われているうえに、い一本を除いてどの樹もどこにあるか知られていないっていう世界樹だね。」


「そうです、その世界樹です。大賢者様はそんなものをこの二つに使ったのですか?」


「うん、そうらしいよ?情報によると旅をしていた行商人の変わり者のハイエルフから買ったらしいよ?」


「そう、ですか。今ではハイエルフが行商人をしていたという時点でかなり驚きですが、まあ大賢者様の時代は本当にいろいろあったといわれてるですし、そういうこともあるかもしれないですね。」


「うん、じゃあ一応机とイスもしまったことだし早速行こうか。」


「はいなのです。」


シャルも短時間の間に驚くことが多かったためか、カムイの言葉ですぐに考えを切り替え、さっきとは逆の扉へと向かうカムイについていく。

カムイはそのままその扉を開け入っていく。

部屋に入ると二人は部屋を見回す。さっきの部屋のように机やイスもない、何も手の付けられていない部屋である。ただ一つあるとすれば部屋の中心に円が書かれているだけである。

しかし二人がその円の中にへ立つと部屋の様子がガラリと変わった。

二人の乗った円を中心として魔法陣が形成されていく。それも一瞬の出来事で最終的には道場でカムイが見たものや中庭でシャルが見たものと似た光景が二人の足元にあった。

まあその光景を生み出している魔法陣の色や内容、一部の形などが違っているが・・・。

その光景に二人は少しの間見入っていたが、気が付くと声が聞こえる。


『登録された魔力の波長を確認。召喚された勇者とその召喚者であることを確認できました。特定のアイテムを持っているため緊急事態により城からの脱出を希望と判断。主である大賢者様の指示通り該当者の転移および城への緊急措置を発動します。登録者二名はその場でしばらくお待ちください。条件に合う場所を発見次第転移します。』


そんな声が聞こえ二人は一瞬警戒するが、それが大賢者の仕掛けの一部であると理解できると警戒を解き指示通りにする。


『発見しました。現時点での世界の情報が不明の為、方角と地形のみ報告いたします。方角はここより遥か東の地、転移する地点は森の中ですが近くに雨露をしのげるものの存在は確認できるようです。どうかあなた方の行く先に光がありますように。転移します。』


そう二人が聞いた後視界が真っ白に染まる。カムイは本日三回目、シャルは二回目となる転移の際の光である。

魔法陣の光が収まった時すでに二人は転移し残りは魔法陣が残るのみであるがそこに声が響く。


『該当者の転移を確認。これより城への緊急措置を開始します。すべての動力室にある魔導炉の平常稼働を確認。うち一部屋を自動人形オートマタ稼働に回します。自動人形オートマタ全て起動しました。各機構の平常稼働を確認。オールグリーン。続いて・・・・・』


その声が合図となり大賢者の仕込んだ仕掛けが順々に発動していく。

声は城が亜空間に溶け込むまで続く。










少し時間をさかのぼりカムイ達が荷物整理をしている頃、とある執務室に一人の男が駆け込んできた。

執務室で仕事をしていた男は入ってきた男をにらみ怒鳴りつける。


「何事だ! ノックもせずに入るとは礼儀を知らんのかっ!」


「失礼しましたグラブ様、緊急の連絡があり急ぎ参りました。」


「緊急だと?要件をいえ。」


怒鳴りつけた男・・・十魔将第一位グラブ・ネロイは緊急と聞き眉に皺を寄せながら要件を促す。


「はい、先ほど中庭にて眩い光が発生したとのことです。それを発見した侍女が近くの者に確認したところ、その時点で王女がその少し前に中庭に向かったとのこと。その上運悪くスレイ様に聞かれたらしくスレイ様は近くにいた騎士十数名を連れ中庭に急行。雰囲気からして王女で遊ぼうとしているようでしたとのことです。その時はいつもの事と思い放置していたのですが、その後少し間を開けて侍女が確認しに行ったところスレイ様以下13名が地面に埋まり拘束されていたのを発見。再度私に報告に来ました。その際王女の姿はなかったとのことです。それと変わったことが一つありガゼボの柱が四色の色に変わっていたそうです。それらと光の事から判断するに例の召喚陣が発動したものと思われます。」


「なんだとっ、アレが発動しただと!それが事実だとすると王女が勇者を召喚したということか!?王女が逃げ出したやもしれん。すぐに王城及び城下に兵を放ち王女とそれが召喚したであろう勇者を確保しろ。我は今から索敵魔術を使い王女の居場所を探す。ただし、スレイが負けたとすれば勇者はそれなりに腕が立つと見える。決してに一人では行動するなと伝えろ。最悪居場所が分かれば我がでる。」


「はっ、かしこまりました。では失礼します。」


グラブが指示を出すと伝令の男は返事をし、執務室を出ていく。

それを確認したグラブは一度深くイスに座り息をつく。


「ふう、我も計画の成功が目前に迫って気を抜きすぎていたようだな。まさか土壇場で王女が勇者召喚を発動させるとは思いもしなかったわ。だがまだ計画が破綻したわけではない。むしろ勇者を討てば王女がより絶望し扱いやすくなること間違いなし。ふはは、まだ我の命運は尽きていないようだな。」


グラブはそうつぶやき、索敵魔術を発動させる。


『魔よ、我が元に戻り位置を教えよ。』


発動対象は王女に付けた己の魔力。

索敵魔術にも種類はあるがこの魔術は対象に事前にマーカーを付けそのマーカーが持ち主のもとに戻ることで方向と距離を割り出すという効果であるため確実に対象を見つけるのならこの魔術が最適である。

欠点は一度しか使えない点だがどうせ捕まえることは確定しているのだから捕まえた後にまたマーカーを付ければいいとグラブは考えていた。

詠唱を完了してしばらくするとマーカーが戻ってくる。

反応は城内。グラブはそれを城の構造と照らし合わせ場所を特定すると驚くことに場所は王女の部屋であった。

グラブはそのまま立ち上がり武装していく。

相手は己より弱かったとはいえ十魔将で第三位の実力を持つスレイを返り討ちにした者である。

それを考慮し完全武装で王女と王女が召喚してであろう勇者と対峙しようとしていた。

グラブは装備を整えると王女の部屋へと向かう。

しかし王女の部屋の前へ到着しいつでも戦闘に入れるように構えてからその扉を開けた時、グラブは放心する。


そこにあったのは何もない部屋。

グラブは混乱した。今朝王女を政務に連れ出すため部屋に訪れた時は今まで見ていた普通の部屋であった。

それが今はどうだ。王女が三歳の頃に自室が設けられてから約十年特に変わりはなかった部屋の面影は今は跡形もない。

王女が持っていた小物はおろか家具さえもないそんな部屋にグラブは立ち尽くした。



どれくらい時が経っただろうか。グラブは放心状態から回復する。

そこで自分が何のためにここに来たのかを思い出し行動を起こそうとする。

その時異変は起こる。突然グラブの足元に魔法陣が描かれていく。

とっさの判断でその魔法陣から出ようとするが、その瞬間足元から放たれた魔力によって拘束される。

グラブは抵抗をして拘束を逃れようとするがそれが成される前に追撃が来る。

グラブの全身に絡まり着いた魔力に電気が走る。さすがのグラブも全身に電気を流されてはひとたまりもなく、そのままの姿勢で意識を手放すのだった。




この時転移部屋にはすでに二人の姿はなく、仕掛けの第一段階が始まっていた。

カムイがシャルに語った仕掛けは大本のものではあるがそれでも大まかにであり、あえてカムイに情報を与えなかったものも存在していた。

グラブに発動したものもその一つで魔法陣から逃れようとしたものに施されるものである。

そしてそういうものについては問答無用で更なる処置が施される。


『城内の者すべてに拘束陣の展開、発動を確認。陣が展開された時点で抜け出そうとした者の無力化を確認。今後、登録者の妨げ及び危険分子になる可能性を考慮し転移前に呪いの付与を行います。』


危険分子に課せられる処置は呪いの付与。この呪いも大賢者の作成したものであり、効果は対象の魔力回路の閉鎖。対象の魔力回路五割ほど閉ざし対象の魔力総量及び魔力行使力の低下を引き起こすものである。

これらのカムイに与えられなかった情報は危険度が高すぎた。万が一悪用でもされたら国どころか世界さえも滅ぼしかねない物もあるのである。そう考えた大賢者は流し込む情報にそういうものは含んでいなかったのだ。

そしてしばらくすると城の地面に城全体を覆う魔法陣が展開され発動する。

その魔法陣が収束すると城内に残っているものは誰もいなくなっていた。


『危険分子と判断された六十七名全員に呪いの付与成功を確認。残りの者たちを無力化後、強制転移を開始します。・・・・・・全員の強制転移を確認。これより城は防衛モードに移行します。自動人形オートマタ全体が配置についたのを確認しました。続いて結界の展開を開始します。』


その声とともに外側の結界から展開していく。

一つまた一つと城の周りに結界を展開されていくとそのたびに各属性の色に光り、それを見た王都の住民たちは何事かと城に注目していった。


『外層結界各属性三枚ずつの展開を確認、続いて中層結界複合属性結界展開中。現在の進行具合は四属性複合結界展開中・・・・・・・完了。同時に内層部全属性複合結界展開確認。全結界正常に稼働中。第三段階に移行します。城の浮遊を開始いたします。城塞浮遊システム起動。同時に亜空間移行システムの準備を開始します。準備完了後、一定の高度に達した時点で移行システムを起動します。各場所の自動人形オートマタはそれまで警戒を怠らないようにしてください。』


城に組み込まれた仕掛けが発動する。それと同時に城を中心に地響きが起こる。

そして徐々に王城の敷地内が浮かび上がっていく。

それには見ていた住民は心底驚き城で何が起こっているんだとざわめきだしていた。

そのまま城を見ていた住人はある程度の城が高さに達したと同時に城が消えるのを目撃したのだった。




城から強制転移させられた者たちは城から1キロほど離れた場所にまとめて放り出されていた。

そのまましばらくたった後、どこからか地響きが聞こえてきて徐々に目を覚ましていく。

一番最初に目を覚ましたのはグラブであった。

グラブは目を覚ますと気を失う前に感じた電気の影響はなかったが、それ以外に自らの身体の違和感に気づく。しかしそれを確認する前に地響きの聞こえる方向を見て愕然とした。

なにせ先ほどまで城にいたのに城外に放り出されていたから、というだけではない。その城が各属性の色に光を放っていたからである。そしてそれを見ているうちにさらに驚くことが起こる。

城が徐々に上に上っていっているのである。

それにはいつの間にか目を覚まし絶句していた周囲の者も騒然としだす。

それを見てまずいと思ったグラブはこの場をまとめ城へと戻る判断を下した。


数分後グラブの一喝で混乱が収まった集団は城へと隊列を組んで進んでいく。

そして王都の入口に近づいたとき彼らは住民と同じく目撃するのだ。ある程度の高度に至った城が忽然と消えるのを。

それに動揺しながらも城のあったところに戻った集団が見たものは城の敷地の大きさにぽっかりと空いたクレーターのみであった。

それを見たグラブは両膝をつき、さらに呆然となる。

彼の計画が何であれここまで大騒ぎになっては計画の遂行どころではなくなる。

それに気づいたグラブは数日間心神喪失状態となる。その後自分に呪いをかけられていることを確認しさらに数日ほど長引くことになる。


その後スラッド魔王国内では城についての話が国中に流れ、しばらくの間混乱する事態が続く。

これはのちに魔王国王城消失事件として歴史に残ることとなる。

ただどれだけ長い年月をかけてもその原因を発見することはできなかったという謎の事件としてであるが。







『亜空間への移行完了しました。現時点より警戒レベルを下げます。全自動人形(オートマタ)に連絡。現在警戒レベルを一に設定。各員事前通達により伝えられたとおりに行動お願いします。警戒レベルが一になったため私の本体は休眠状態に移行し工房にて待機します。各員先ほどの行動で不具合の見られたものは工房まで来てください。点検及び必要に応じて修理も行います。』


そして空中に浮かぶ城は無人のまま自動人形オートマタに守られ亜空間を漂うのであった。


誤字脱字などありましたらご指摘お願いします。


ちなみに魔法関連は詠唱、名ともに『』で、魔道具に付与されているものも含む

魔道具の名前は〔〕で記載していく予定です。

ただ今話にあるアナウンスのようなものに関しては少々迷っています。

その辺りについてなにかご意見ありましたらお願いします。

あともし魔法関連や魔道具で「あれ?これはかっこが必要じゃないかな」と思う部分もあればご指摘お願いします。

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