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チートな少女の異世界記  作者: ナトセ
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宝物庫の中で・・・・

カムイとシャルは宝物庫に入って唖然とした。


「ねえ、シャル。」


「はい、何ですか?カムイさん。」


「ここって本当に宝物庫だよね?」


「はい、そうなのです。ここは間違いなく宝物庫なのです。」


「決して元宝物庫とか第何宝物庫とかじゃないよね?」


「はいなのです。この城にはここが唯一の宝物庫ですし、新しく作ったことなどもないのです。」


「そっか、なぁんにもないねぇ。ここ。」


「はいなのです。何にもないですね、ガラクタすらも。」


ちょっとした確認になってしまったが二人の会話の通り宝物庫には物が一切置かれていないのである。


『宝物庫の中はもぬけの殻であった。』


宝物庫に入ったカムイとシャルがみた光景を言葉にするならその言葉が一番合っているだろう。


さっきシャルは宝物庫の中身は持ち去られガラクタしか残ってないと言っていた。

しかしそれすら間違っていたのだ。

ガラクタさえも残っていない、もう宝物庫とも物置とも呼べないただの空き部屋であった。


「以前宝物庫を確認した時にはガラクタくらいは残されていたんですが、さすがにこれらは価値がないので持ち去られることもないだようとそれ以降気にしたことはなかったのです。それがまさかそのガラクタさえも持ち去ってしまうとは、あいつらの欲をなめていたのです。」


「もしかしてだけどそのガラクタを王城の宝物庫にあった品物として闇オークションとかで出してるとかだったりして。どう思う、シャル?」


「さすがにそんなことはあの考えなし達でもないと・・・、ないと・・・・言い切れないのです。もしかしたらあるという方が納得しやすいのです。」


「「・・・・・・・・・・・。」」


カムイの立てた推測を否定しきれず、逆に肯定ともとれる返答するシャル。

それほどにこの国の上層部は腐っているというか残念なようだ。

それを想像したカムイ、そしてその一部を見てきたシャルは顔を見合わせ少しの間沈黙が流れる。


「・・・ま、まあそれについては今話しても何もならなそうだし、本当の目的は隠し部屋の方だからそっちに行こうか。シャル今からいう場所に手をついて合図で魔力を流して。こっちも同じタイミングで流すから。」


「・・・はい、わかったのです。カムイさん指示をお願いするのです。でもカムイさんは魔力を扱うことができるのですか?」


「うん、それについては大丈夫。それも情報の中にあったから歩いてるときに魔力の使い方は覚えた。」


「ふえ~、すごいです。普通は魔力を感じることはできても意図して動かすには最低でも三日はかかるといわれているのです。それを中庭からここまでの数分間で、しかもわたしと話しながらできるようになってしまうなんて、いくら知識だけあってもできることじゃないのです。さすがはカムイさんなのです。」


「そうかな?まあ素直にほめてくれるのはうれしいな。ありがとうねシャル。・・・さてと、じゃあ早速始めようか?」


「はいなのです。」


考えてもしょうがないと割り切った二人は隠し部屋へ向かおうと動き出す。

シャルはカムイの指示通りに入り口から左に入って奥へ向かい、カムイはガゼボから送られた情報にあった道順を通り宝物庫の奥を目指す。

そしてたどり着いたのは宝物庫に存在する照明の一つ。その下の床にはじっくりと見なければわからないような他の床とは違う模様が二つあり、そこに二人は並んで立つ。


「うん、ここだよ。宝物庫に何もなかったからかなり簡単に隠し部屋に入れそうだね。じゃあ、シャル。前の壁に手をついて魔力を流してくれる?」


「はいなのです。でもカムイさん。なんであんなにあっちこっちに行っていたのですか?最終的にここに来るなら二人で一緒に行けばいいと思うのですが。」


「ああ、それはねシャルの動きとボクの動きその二つがこの足元の紋章を見るための鍵になっているんだ。さっきボクは隠し部屋に入る条件に付いて少し話したでしょ?これがその一つだよ。この床には隠蔽魔法がかけられているらしくてね。あのガゼボで登録した魔力の持ち主が一定の道を通ることでこの床の紋章にかけられた魔法の対抗魔法が二人に施される。詳しく言えばシャルの通った道順が魔法陣の円の部分、ボクの通った部分が魔法陣の中の部分の一部。あとは元から床の下に組み込まれていた魔法陣の残りの部分と組み合わさってこの対抗魔法が二人にだけ発動するんだ。で、最後はその魔法がかかった状態で魔力をこの壁に流せば隠し部屋へ行けるってことらしいよ。しかも対抗魔法がかかっていない状態で壁に魔力を流すとどこか別の場所に転移させられるらしいよ。これも大賢者さんの仕込んだものらしいからつくづくすごい人だったんだねぇ。」


「な、なるほどそんな仕掛けがあるのですね。ちなみにその別の場所というのがどこか聞いてもいいですか?」


「ん?あ~それはわからないかな?その転移先っていうのが正規の方法以外はランダムらしくてね。どこに飛ばされるかは不明かな?ただ候補はいくつかあるみたいだよ?例えばこの城の牢屋とかこの城の堀の真上とか、変わったのだと厩舎の中とかゴミ捨て場とかもあったね。これは正規の物以外は大賢者さんの仕込んだイタズラみたいなものだから一応この城の敷地内限定らしいね。」


「大賢者様のイタズラ、ですか?」


「うん、シャルも城についてなんか教えてもらったんじゃない?特に召喚陣の事とかね。それの一つで気づかれないようにしょうもないイタズラも所々に設置したらしいね。とまあその話は置いといて早速魔力を流そうか。」


「はい、わかったのです。いつでも大丈夫なのです。」


「じゃあ1,2の3で行くよ。シャル、壁に手を当てて」


カムイはシャルに指示を出し自身も壁に手を当てる。


「じゃあ、行くよ。1」


「2の」


「「3!」」


3の掛け声で二人は腕を伝って壁へと魔力を流す。

それと同時に壁に仕込まれていた魔法陣が起動し表に現れる。

その魔法陣は光量を増しながら次第に宝物庫全体を光で埋め尽くす。

二人は魔法陣の放つ光で目が眩まないように目をつむった。


そして数秒後、魔法陣の放った光は収まっていき宝物庫内は元の明るさに戻る。

そこには魔法陣を起動した二人の姿はなく宝物庫には元の静けさに戻っているのだった。






さて、その二人はというと一つの部屋に転移を完了していた。

その部屋には物がほとんどなくあるのは天井に埋め込まれた明かりと中央にあるテーブルとイス、そしてテーブルの上に置かれた二つの小さな箱であった。

それだけしかないこの部屋にシャルは疑問を覚え首をかしげながらカムイに質問をする。


「カムイさん、これは転移が失敗したのですか?ここにはほとんど何もないのです。もしかしたら手順が間違っていたのですか?」


シャルはカムイが条件を間違えてしまったのではないかと少し不安になった。


「大丈夫、ここが隠し部屋だよ。そことそこの壁をじっくりとみてごらん。偽装された扉があるから。」


その言葉を聞き、シャルはカムイのさした二つの壁を確認するとそこには壁に同化して扉があるのが分かった。


「あと、これはシャルのだからいつでも身に付けておいて。大賢者さんの用意した装備らしいよ。」


といってカムイはテーブルに置かれた小箱を手に取り、一つをシャルに渡した。

シャルが箱を受け取り中身を確認するとそれは指輪であった。

しかしその指輪には魔力が籠められておりただの指輪でなく一種の魔道具であることが分かった。


「これはなんです?」


「それはいくつかの魔術が籠められたものらしいね。作製者は大賢者さんで籠められた魔術は『収納庫アイテムボックス』、『偽装』、『模写』の三つだってさ。大賢者さんの最高傑作らしいよ。」


「ええ!?これって大賢者様が作ったものなのですか?それに『収納庫アイテムボックス』と『偽装』はともかく『模写』って何ですか?」


「ああ、それらはね大賢者さんの作った魔術の一つだって。『模写』は大賢者さんの使ったことのある魔術をこの指輪経由で使えるようになるらしいね。最初のころはこの指輪頼りだけどその魔術について使っているうちに少しずつ分かるだろうからいずれはボク達自身で使うことができそうだね。ちなみにこれにも魔力認証があってその魔力の持ち主にしかこの指輪が使えないし、もし盗まれても持ち主の元へ帰ってくる機能があるらしいね。なんかこれ一種の呪いのアイテムのような?まあ、魔力はもうボク達の物が登録されているからどうしようもないかな?あ、あと『収納庫アイテムボックス』の限界容量はなし、時間停止もついてるらしいよ」


「ふえ~、大賢者様さすがなのです。たしかに機能は少し気になるところはあるですがこれって伝説級の魔道具です。」


カムイがこの魔道具について説明するとシャルは緩んだ声をだし、大の作った魔道具を見る。


「あっ、そういえばこの魔道具に『収納庫アイテムボックス』があるってことは何か入っているのですか?」


「うん、それも情報の中にあったよ、当時大賢者さんが集めた物がたくさん入っているらしい。あと、ボクの指輪とシャルの指輪の『収納庫アイテムボックス』はつながってるらしいから、要はボク達専用の容量無限の倉庫を持ち運びしているともいえるね。まあ中身の確認はボクの受け取った情報がまだ処理しきれてないから必要なもの以外は後々かな?」


「なるほどなのです。あと、さっきからずっと気になっているのですがカムイさんが宝物庫に入る前に何か考えていたことについてそろそろ教えてほしいのです。」


「ああ、あれはね、まずあの宝物庫の周りは怪しいとは話したでしょ?」


「はいなのです。」


「なんで他の人は気づかないのかなって思って少し受け取った情報を確認したり、周りを見てわかったんだけどね、あの周辺には認識阻害と思考誘導の魔術が施されていたんだ。」


「認識阻害と思考誘導。認識阻害があるのは知っているですがもう一つあったのですか?」


「うん、そう。まず認識阻害はあそこに宝物庫があることを確定させないため。これはなんとなく理解できた。本来宝物庫の中身は大事なものだからね。それの位置を確定させないのは必須事項となる。」


「はいその通りなのです。その理由についても教えてもらっているのです。でも本来・・・ですか?」


「そう、簡単に言えばあの宝物庫って一種のダミーだったんだ。大賢者さんがこの世を去った後はともかくそれまではあの宝物庫には様々なものがあったんだよ。でも大賢者さんがこの城に手を加えたときに中の物にも細工をしていた。というかこの指輪に当時の宝物庫の中身を全部入れてそっくりに作った偽物と入れ替えだんだ。一応本物と同じ能力をもってるけど本物より性能がかなり落ちたものをね。そしてそれらが偽物とばれないように、それらは本物でここ以外に宝物を置く場所はないっていう風に思考を誘導していたらしいよ。それとあの通路には宝物庫以外にも部屋があってそれ全部緊急用の為のものの一部らしいんだよね。ちなみに緊急時っていうのは今のボク達みたいな状態の事でボク達がこの城を出ると同時にそれらが作動するとか。それらを隠すためでもあるらしいよ、その思考誘導の魔術。」


「・・・だ、大賢者様って本当にいろいろなことをやっていたのですね。偽物だとは知らずに宝物庫の中身を持ち去った方たちはある意味憐れですね。大賢者様のイタズラに引っかかったようなものですから。あと今までのことを聞く限り、聞くのが怖いのですが教えてくれないですか?その緊急用の仕掛けというものを。」


「え?・・・シャル、本当に聞きたい?正直なところかなりすごいよ?」


「・・・・それほどなんですか?その仕掛けって・・・・・。でもカムイさん教えてください。知らないままでいて後で後悔するのは嫌なのです。」


カムイの確認の問いかけに一瞬慄いてしまうシャルだったが覚悟を決めて聞くことにする。


「じゃあ教えてあげるよ。まあ城から抜け出すのに使う方法につながっているから軽くは話すつもりだったからいいけどね。とりあえず立ったままじゃつらいかもしれないしそこのイスに座ろうか。さあどうぞ、シャル。」


カムイはそうシャルに言うとイスを少し引きシャルをエスコートする。

シャルが座ったのを確認すると向かいのイスをシャルの隣に持ってきて自分も腰を掛ける。


「ボクは隣に座らせてもらうね。まず簡単に言うとね、ボク達が城から抜け出した後はこの城には最低でも数年は戻ってこれなくなるってことかな?」


「はい?それは当然の事ではないです?わたしはここから出たら二度とこの城へは戻れないと覚悟はしているです。それとは違う話なのです?」


「うん、正確にはボク達が城を抜け出した後は誰も(・・)この城へは入ることはができなくなるんだ。」


カムイはシャルの疑問に正確な答えを示しシャルにガゼボにあった情報から読み取ったことを教えていく。


いままで述べた通り大賢者は様々な仕掛けをこの城に仕込んでいた。

それはただのイタズラであったり、この城の防衛だったりもしたがそれらは全部この城全体に施した一つの仕掛けを誤魔化すためのカモフラージュであった。

その仕掛けとは城自体を誰も立ち入ることのできないように封印することである。

大賢者がなぜそんなことをしようと思ったのかは理由はわからない。

彼女がなぜ城自体を封印しようと思ったのかという情報はなかった為、それについてはわきに置いておく。

ただ仕掛けの内容自体はとても大掛かりなものであった。

まず王族が勇者を召喚することが第一段階。この時点で仕掛けの第一条件が発生する。

次に勇者および召喚者が場内で襲撃にあうこと。この城にはあちこちにガゼボと同じような防衛術式が仕込まれていた。それが発動した時に近くに召喚者と勇者がいるときに限り防衛術式が強化され、かつ情報を流し込むのに適性の高い勇者に様々な情報が送られたりとその他多数の仕掛けが発動し準備が整う。

これが仕掛けを発動させる前段階である。

ここまでの話だけでも今の二人の状況に気持ち悪いほど重なっていて、大勇者は将来こうなるだろうということを予想していたか、はたまた未来予知の能力でも持っていたのではないかとカムイは考えたが遥か昔の事なのでそれを知る者はいない。

さてこれで最後の条件が満たされれば仕掛けが発動するがこれに関してはとても簡単なものであった。

その条件とは勇者と召喚者、つまりカムイとシャルがとあるものを持ってこの城を出るというものであった。

そしてとあるものとは今二人が持っている指輪である。

これで条件がすべて揃い仕掛けが発動する。

発動の第一段階は城の内部の生物の排除。これは城の真下にある転移魔法陣によって行われる。

飛ばされる場所は城の門の前にされているらしい。

第二段階は結界の発動である。この結界は各属性特化の結界が三枚ずつ張られ、その内側には複合属性の結界、さらに内側には全属性複合結界が張られる。

第三段階は城が空に浮かんでいくというものである。これだけ厳重にしておいて何故空を飛ばすのかはわからないがこれは大の仕込んだネタだとカムイは考えていた。

召喚されたのがカムイでなかったらこういったかもしれない。『どこのアニメ映画のパクリだ』と。

そして最終段階、空間歪曲の魔術を発動し、城自体を亜空間へと隔離するというものであった。

ちなみに動力は宝物庫の通路の八つの隠し部屋にいくつも設置してある魔導炉を発動時は三部屋分、維持は三年に一部屋分使用する。さらに防衛および修理用の自動人形(オートマタ)が千体あり、その動力に一部屋分。万が一のための予備として一部屋分あるとのこと。魔導炉は動力が尽きる前に他の部屋と切り替わるようになっていて、設置してある魔導炉は三年で補充できるので動力的には恒久的に仕掛けは駆動し続けるとのことである。


ここまで話したところでカムイが隣を見るとこれから起こることの大きさと大賢者の仕込んだ仕掛けの規格外さに思考停止しているシャルの姿があった。

誤字脱字などありましたらご指摘お願いします。

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