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チートな少女の異世界記  作者: ナトセ
3/29

降りかかる火の粉を払う

カムイはシャルの隠れるガゼボを背にして敵と向かい合う。

対する敵は騎士が14名、内訳は軽装備が10名、重装備が3名、指揮官らしき他と違う鎧の男が1名である。

どの騎士も頭には何も装備しておらずその顔はカムイ達2人に剣呑な視線を向けていた。

後ろのガゼボにはシャルがいるが不思議な気配がガゼボを包み込んでいた。

なにごとかとカムイは一瞬思うが、どこからかそれについての情報が頭の中に流し込まれる。



これはガゼボに大賢者が組み込んだ防衛術式が起動している状態であった。

このガゼボ自体が大賢者が作り出したものである。

これには特定条件での勇者召喚に加え、召喚者と勇者が危機に扮した時に発動する術式も組み込まれていたのである。

この術式にもいくつかの条件があった。

まず、この場での勇者召喚が成されていること。

これの条件は防衛の術式に召喚者とその勇者の情報を組み込むための物である。

次に、召喚者がこのガゼボ内にいること。

登録された召喚者が入ることでガゼボの防衛術式が起動し、ガゼボ内での召喚者を害する行為が無効となる。この時召喚者と勇者にはガゼボについての情報が脳内にインプットされるようになっている。

今はこの段階であり、この他にもいくつかの機能が存在するのだがそれは現在発動条件を満たしていないのでそれは追々・・・。


 閑話休題


カムイはそんな頭の中に流れ込んでくる情報をいったん頭の隅に置き目の前の敵を相手にタイミングを見計らっていた。

その待ちの姿勢は自然体で次にどんな行動を起こそうとも最大限に動けるようにしている。

対する騎士側は相手が2人に対し10人以上で対峙しているためすぐに終わるだろうと高を括っていた。

そのため一人一人が思うように立っている。

しかしこちらを本気で殺すつもりで来ているのか全員が二人に向けて濃厚な殺気を向けている。

そんな中でもカムイはどうやって相手を退けるか冷静に考え、そして動き出す。



カムイは一歩前に踏み出すと同時に上半身を前に傾けそのまま相手へと向かって加速する。

騎士たちはそのカムイの突然の動きについていけず一瞬カムイを見失う。

まずカムイが最初に狙うのは重装備3人。この3人は他の者たちより突出しておりその上お互いの間合いがかなり近く下手に攻撃すれば味方にあたるだろうと予測できた。カムイはそこを狙っていく。

一人目はカムイから見て左側。3人がカムイを見失っている一瞬のうちに懐に入り込み剣を構えている方の腕を引く。すると相手はバランスを崩し倒れこんでくるがカムイは相手の腹に手をあて、そこを中心として一回転させ地面にたたきつける。相手は急に来た衝撃により気絶し戦闘不能。カムイはつかんだ腕が脱力するのを感じ取るとその腕に持った剣を奪い取る。

そのままの流れで二人目の後ろに回り込み持った剣の柄を後ろ首に打ちつけ気絶させる。

カムイはその時点で持っていた剣を放棄し三人目の首を極める。

この間約15秒ほど。そんな短時間で3人が無力化され他の者たちに動揺が走る。

そこからは一方的な戦いであった。

騎士側は全員武装し、カムイは基本的に無手なのに騎士は一人、また一人とカムイに意識を刈られていく。

ある者は地面に叩きつけられ、ある者は鎧を拳で撃ちぬかれ鳩尾や急所に一撃をもらい悶絶していた。


そして5分もしないうちに指揮官らしき男以外が中庭に転がり、無力化されていた。

その光景に男は絶句し唖然としている。

カムイはその男に向かい歩み寄っていく。


「さて、あとは君だけだけどどうする? やるかい?」


「・・・ぁ、あぁ、いや、無理そうだ。俺はやめておく。だから見逃してくれないか? お前たちを害することはしないと誓うから。」


カムイの問いかけに男はそう答え構えていた剣を下ろす。

それを見たカムイは男に背を向けシャルの方に向かっていく。


カムイが男からある程度離れた時、男の顔に下卑た笑みが浮かぶ。

男はぼそぼそと何かをつぶやきカムイをにらみつけカムイに襲い掛かった。


「ふはははっ、油断したなあ小僧。戦いで敵に背を向けるのは失策だぁ。ここで王女もろとも死んでし・・・・がふぅっっっ」


 がぁぁぁぁあん


男が襲い掛かると同時にカムイは体を回転させながら飛び上がりその勢いで男のこめかみを蹴りぬく。

蹴られた男はカムイの小さな身体から繰り出されたとは思えないような威力の蹴りを受けそのまま中庭の壁に向かって飛んでいき激突した。


 ットン


カムイは着地し1つ息をつく。


「ふぅ~、バカだねぇ。ボクがそんなことを予想していないとでも思っているのかな? そもそもそんな遅い攻撃じゃあ不意打ちにもならないよ。襲い掛かってこなければ痛い思いしなくて済んだのにね。」


そういってカムイはまたシャルの方へ向かって歩いていく。

シャルはカムイの言いつけ通りにガゼボの中に入り、壁を背にしてうずくまるように隠れていた。

それなりに濃厚な殺気を向けられたにも関わらず、震えているような様子はない。

それは王族だからか、それともあの程度の殺気には慣れているのかはわからないがカムイからしてみれば好印象であった。


「シャル、終わったよ~。出てきてくれるかい?」


「ほ、本当ですか? なかなかに一方的でしたがカムイ様、お怪我はありませんですか?」


「うん、大丈夫だよ。むしろあの程度でけがをしろって方が無理かな? 全体的に弱すぎるよ。油断していたのか向こうは数が多いのに隊列さえも組んでいなかったし、一人一人の練度が低すぎるしね。唯一ボクの動きが見えていたらしい指揮官みたいなやつは味方がやられても一切指示を出そうとしなかったし無力化するのも楽だったよ。こいつら本当にこの国の中でかなり強いって連中なの?」


シャルはガゼボから顔を出しカムイを心配するが、カムイは予想以上に相手が弱かったためシャルに確認を入れる。


「声だけじゃ誰が来たのか判断がつきませんでしたので確認してもいいですか?」


「大丈夫だよ。気絶させてるだけだけど、どんなに強くても半日は意識が戻らないような攻撃をしたからね。それにもし気が付いても二日はまともに動けないかな? ちょっと指揮官はうざったかったからもう少し強めにやったけど。一応予想以上に頑丈だった時に備えて拘束というかいっそのこと地面に埋めておきたいんだけどなんか良い手ある?」


「あるですよ、土の魔術を使うです。」


シャルはそう答えると目をつむり息を整える。


「えっと、『土よ、魔力を糧とし、我が意志に答えよ。・・・・・アース・ホール』!」


シャルが呪文を詠唱すると中庭の全体を包む魔法陣が現れ、気絶した騎士たちの下の地面が沈みやがて頭以外が埋まった状態になる。

一応壁の近くに埋まった指揮官にカムイが近づいて確認をする。


「うん、これなら危険なこともないよ。シャルこっちおいで、こいつが指揮官だ。確認してくれる?」


「はいです、カムイ様。・・・・・っ!? この男は、十魔将のスレイ・テラトスなのです。とても狡猾で勝つためや生き残るためなら何でもするそんな男なのです。カムイ様、こいつを一人で無力化したってすごいことですよ。」


「十魔将? 何だいそれ?」


「はいです。十魔将とは・・・・」


シャルの話によると十魔将とはこの国の中心部に君臨している者たちらしい。

その実力はこの国でトップを争えるものであり、得意な分野の違いはあれどその分野ごとでは国内最強を名乗ることのできる存在であった。

そしてこの国においてある程度の権力を持っており、十魔将全員そろっての権力は王族と同等。

シャルを今のような状況に陥れたのもこの十魔将のせいなのだとか。


「ふむ、とりあえずそこまで聞ければいいかな。細かいことはまた今度話したいときに話してくれればいいよ。ボクはシャルに頼まれたことをするだけだしね。ところでシャル、そのカムイ様っていうのはよしてくれないかな? なんというかむず痒いというか、照れくさいというか。ボクは様付けで呼ばれるような性格でもないからできれば呼び捨てにしてほしいな。ダメかな?」


「は、はいです。でも呼び捨ては無理なのでカムイさんと呼んでいいですか?」


「む~~ん、本当は呼び捨ての方がいいんだけどそこまで強制するのは酷だろうしいいよ。でもいつかは呼び捨てで呼んでほしいな?これから一緒に旅をすることになるんだしね。」


カムイがそう返すとシャルは少し驚いた顔をする。


「え?本当にこの城から連れ出してくれるのですか?」


「うん。最初からそのつもりだったよ?最も最初はいろいろと面倒な方法でやろうと思っていたけど、もっといい方法を見つけたからそれをやろうと思ってね。」


「もっといい方法ですか?」


「そう、もっといい方法。まあその方法は後で説明するから、その前にできるだけ早くこの城を抜け出したいし、少しだけ準備とかもしたいからとりあえずこの城の宝物庫とシャルの部屋に案内してもらえないかな?」


そういってカムイは案内を頼むが、シャルは宝物庫と出た時点で少し暗い顔をして答える。


「わたしの部屋はともかく宝物庫ですか?でも今宝物庫は欲に目が眩んだ者たちによってほとんどの物が持ち去られてほとんど空ですから行っても意味がないかもしれないのです。」


「大丈夫。さっきガゼボに防衛術式が発動してたのは知ってる?」


「はいです。あのガゼボにあんな機能があるなんて知らなかったのです。というよりカムイさんはそれに気づいていたのですか?」


「うん。最初はなんか不思議な力が発動しているな、くらいだったんだけどそこからかなりの情報が一気に送り込まれてきてね。あれが防衛用の魔術だってこととか、このガゼボについて、この世界の事とかとにかくいろいろな情報が手に入ったよ。というかいまだに流れ込んできているしね」


「そ、それはすごいのですね。でも情報伝達の魔術ってほんの少しの情報でないと処理が追い付かなくて危ないと聞いたことがあるのですがカムイさんは大丈夫なのですか?」


「大丈夫大丈夫。確かにまだ全部の情報の処理はできてないけど頭の中には残っているし、ただ記憶しておくだけならそんなに苦労しないしね。」


そうカムイはシャルの心配に返事をする。


「まあでも少しは処理できたしね。ちょっと話はそれたけど一番最初に入ってきた情報の一つに宝物庫の情報があったんだよね。その情報によるとね宝物庫にはある一定の条件を満たすことで入ることのできる一種の隠し部屋があるらしいんだ。それは元々この城にはなかったけど情報にあった勇者の子は本当にいろいろと仕掛けを施したらしいね。それもその一つだってさ。まあそれも説明するからその前に案内してもらえるかな?まだこの周辺にはこの人たち以外いないみたいだから今のうちにね。」


「へ?あ、はい。わかったのです。」


シャルはカムイの説明に呆然とした後、我に返りカムイの言葉通りにしようと歩き出す。


「そ、そんな部屋が宝物庫にあったのですか?」


「うん、あったらしいよ。しかもその部屋は条件に合う人以外には絶対に入ることができないうえにその条件もかなり難しい、というか今の時点でボクとシャルの二人だけらしいんだよね。それに今までもいなかっただろうし。」


「え?なんでそんなことがわかるのですか?お話を聞くとカムイさんのいっているのは大賢者様しかいませんです。今までこの城でそんなことをしたのは後にも先にも彼女だけですから。それからかなり長い年月が経っているのです。数人くらいはいてもいいと思うのです。」


「それについてはね宝物庫に入る条件の一つがあのガゼボの術式が発動することなんだ。あの術式かなり高度な術式みたいでね、発動にもこの国の王族の血筋とその王族が召喚した勇者が必要だったり、ボクへの情報の送りこみの他にも、隠し部屋を含むこの城の機能の全ての認証登録だったり、果てにはあの術式って一種の使い捨てというかボク達が発動させた時点でボク達しか発動できなくなっているんだよね。要するにボク達以前に発動させたものが居ればあの術式はボク達には発動できないし、あの術式が発動しなければ隠し部屋も開けることができないらしいんだ。いやぁ、そんな術式を作った初代勇者様ってすごいねぇ。」


「そ、そんなすごいものなのですね。あっ、宝物庫はここなのです。昔は見張りが居たのですが中にはガラクタしか残ってないですし、中庭からしか入れない構造でここしか部屋はないので今はだれも来ないような所なのです。あと鍵もあったのですが価値のある物だったようで持ち去られたようなのです。」


「ああ、だから誰とも会わなかったんだ。一応人と会ったら戦う気でいたんだけど拍子抜けだなぁ。せめて一人か二人くらいはボクに気配を読まれずにいる人がいるかと思ったんだけどなぁ。まあ、余計な体力を使わなかっただけ良しとしようかな。ていうか鍵もってすごい強欲な人がいたんだろうね。・・・しっかし、ここずいぶんと怪しい場所だねえ。なんで他の人はここ事不思議に思わないんだろう?」


「え?何がですか?怪しいって何のことですか?」


シャルはカムイの疑問を聞き、周りを見回しながら心底不思議そうに尋ねる。


「え?だって不思議でしょ?なんせ中庭から見た限り他の通路はある程度の間隔で部屋があったのにこの通路には部屋がここしかないんだよ?・・・・・って、あ、そうかぁ。ここにも大賢者さんが仕込んでいるのかぁ。確かに認識阻害系の術式は宝物庫周辺にはあっても当然だけど思考を誘導・・・・・(独り言中)」


カムイはシャルの疑問に答えながらも周囲を見回し、先ほど送り込まれた情報と照らし合わせながら何かに気づき考え込んでいた。


「カムイさん?カムイさん、大丈夫ですか?よくわからないのですが説明してもらってもいいですか?わたしも今気づいたのですが確かにここは少し怪しい気がするのです。」


「あ、ごめんごめん。考え事に夢中になってた。そう、シャルも気づいたんだね、ここの怪しさに。まあでも先に中に入ってからの方がゆっくり話ができそうだから入っちゃおうか?」


「はい、わかったのです。」


そうしてカムイとシャルは宝物庫の中に入っていった。

誤字脱字などありましたらご指摘お願いします。


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