クルルの武器
カムイ達は〈金糸雀荘〉の自分達の部屋に戻り、カムイを中心として三人並んでベッドへと座る。
「まずなんだけど、クルルにボク達の事を話そうと思う。しっかり聞いていてね。」
「わかったの。」
「わたしの事は自分で話すからカムイ姉さんは自分の事だけ話してほしいのです。」
「うん、わかった。じゃあまずはシャルに任せた方がいいかな?」
「了解なのです。」
そう返事をしたシャルは自分の事をクルルに話していく。
自分がスラッド魔王国の王女であること、十魔将に見下され、いい様に扱われていたことなどから始まり、カムイを召喚する前までの事までをゆっくりと話していく。
クルルはその言葉を時折頷いたり、驚いたりしながら聞いていた。
「・・・・っと、こんなところなのです。そしてあと一歩で心が折れそうになったわたしの願いを魔法陣越しに聞き届けてくれたのがカムイ姉さんなのです。その後は召喚の魔法陣が起動してカムイ姉さんが目の前に現れたのです。」
「うん、だいぶ簡単にまとめたみたいだけどボクに話したのと同じだね。じゃあ、次はボクかな?まずボクはシャルの言った通り、シャルの呼びかけに答えて召喚された異世界の人間だよ。召喚についてもある程度ボクから話していくから聞いててね。」
クルルがコクリとうなづいたのを確認したカムイは話し始める。
それはカムイがシャルに召喚される少し前の事から話し始め、シャルと一緒に城の中で行ったこと、それに関係のある大賢者のこと、大賢者の作った仕掛けなどの話も混ぜて話す。
「・・・とまあそんなことがあって、城から抜け出した日は森で見つけた猟師小屋で一晩過ごしたんだ。それがクルルに会う前の日の話。どう?ここまでは大体わかった?」
「一応、わかったの。簡単に言ってしまうとカムイ姉はおとぎ話の勇者と同じ異世界人。その勇者の一人の残した魔術でシャル姉は助けを呼んでカムイ姉が答えたから来たという事なの?」
「うん、かなり簡単に言ってしまえばそんなところかな。で、その次の日は準備をして森を抜ける、町まで行くために歩き続けるって感じかな。その途中でクルルを見つけて、あとはクルルの知る通りかな。」
「つまりカムイ姉は勇者なの?」
「う~ん、それは考え方によるんじゃないかな。そもそも勇者って何なのかな?っていうのもあるけど、オリジナルの召喚陣で呼ばれた異世界人っていうのが勇者なら勇者と言えるし、それ以外なら勇者じゃないかもしれない。まあその人の考え方次第じゃないかな?ボクが自信を持って言えるのは異世界人であるという事、シャルに答えて召喚されたという事くらいかな?」
「う~ん、よくわからないけど勇者でもそうでなくてもカムイ姉はカムイ姉なの。クルルを解放してくれたのは変わらないの。」
「そうだね、そう思ってくれればいいよ。じゃあ、一通りのことは話したし、そろそろ本題にいこうか。」
「本題、ですか?」
「??何のことなの?」
「え?クルルの武器の事だけどさっき言ったよね。」
「あっ、そういえば」「そうだったの。」
「まあ、さっきの話からどうつながっているのかわからなくもあったと思うけど、これは先に話しといたほうがいいと思ったことだからね。とりあえず今は頭の片隅にでも置いといてね。で、クルルの武器だけど、ボクとシャルと同じような武器っていうのがこの話をした理由かな。もっと言えば大賢者さんの事についてといった方がいいかも。」
「大賢者様ですか?」「なの?」
「うん、さっきの話の通り、ボク達の今付けている指輪は大賢者さんが作ったものっていうのは覚えていると思う。で、ボクとシャルの使っている武器なんだけどね、大賢者さんが作ったものなんだ。だから同じようなっていうと大賢者さんの作品という事になる。それを武器として使うからには製作者だけでも知っておいた方がいいと思ってね。というかあの人の作った武器はなんていうか他の武器と比べちゃいけないくらいに性能というか能力がぶっ飛んでいるからね。その辺りを伝えておきたかったんだ。」
「ああ、そういえばそうだったのです。確かにある程度普通のも入っていたですが、『収納庫』に入っている武器というのは大半がとびぬけた能力を持つ物ばかりだったのです。でも、わたしの槍も大賢者様作だったとは知らなかったのです。」
「うん、まあ特にその辺りは伝えてなかったし、ボクもこの宿に入ってから『収納庫』から大賢者さんの作ったものの一覧を見つけてね。それで知ったんだ。『収納庫の中身はボクとシャルで確認したことはあったけどほんの一部だけでそれ以外は確認できなかったでしょ?そこから見つけ出したんだよ。」
「確かに、どこまで確認しても終わらなくて必要そうなものだけ確認して後回しにしてたですね。」
「うん、そうだね。これも時間があるときに確認していかないとね。いくら容量が無限に近くあるとしても何が入っているかわからないのはちょっと気持ち悪いからね。それにこの一覧もほんの一部みたいだし。まあでもこれを見つけたから武器の性能なんかは見やすくなったともいえるかな。クルルに合いそうな武器も見つけることができたしね。」
「あの、一ついいの?そんな性能が高そうな武器をクルルが使ってもいいの?クルルは武器をうまく扱えるかもわからないし、あまり強いのが相手だと敵うかもわからないのに。」
クルルはそう言いながら不安そうにカムイとシャルを見る。
「確かに人によってはそんな武器を持つのは分不相応だと思う人もいるかもしれないです。でもそれを言ったらたぶん、わたしもこの武器を使っていられなくなるのです。それに武器は戦いに使ってこその武器なのです。使わない武器はただの飾りですし、意味はないのです。」
「そうだね、シャルの言うとおりだよ。少なくとも大賢者さんの作った武器は戦うために作られたものだし、使われなくちゃただのガラクタにしかならないね。それにいくら使い手が未熟だとしても強力な武器をその使い手が使っちゃいけないとはならないよ。ボクとしては是非使ってほしいかな。だってその分クルルの生存率が上がるもの。もしなまくらとかを持たせたまま死なせるのと、名剣の類を持たせて生きていてくれるのだったら、生きていてくれた方がボクとしてはうれしいしね。まあ武器の性能に依存しすぎてもいけないし、何より十全に使いこなすには未熟な腕じゃ使い切れない。だからこれから渡す武器の事をしっかりと教えるんだよ。ついでに言えばクルルに渡す武器と同等以上の武器が『収納庫』にまだたくさんあるだろうからボク達は使わないだろうしね。」
まあカムイとシャルはそんなことをクルルに言っていたが、要は二人が言っている通りのことが本音であり、使わないのに持っていてもしょうがないというのがカムイとシャルの考えなのであった。
その辺りは、強くなることが大前提であったカムイも、実力至上主義の塊ともいえるスラッド魔王国で育ったシャルも同じような考えであった。
「それにもし何か言われるようなことがあるとしても、それまでにそう言われても負けないくらいの実力を身に付ければいいだけなのです。」
「そうそう、幸いボクが渡そうとしている武器は性能と作成者はかなりぶっ飛んではいるけど、見た目としてはごく普通の数打ち物と変わらないしね。それもかなり厳重に隠蔽しているから気づく人はほんの一握りだろうしね。それこそ、作り手としてかなりの腕か、多くの武器を見てきてかなり目が肥えている人くらいかな。まあ、そんなわけで何も気にしないで受け取ってよ。そして使って。」
そういってカムイは『収納庫』から一対の短剣を取り出す。
それこそクルルに渡す武器であり、大賢者作の武器の一種。
とはいっても意匠としてはごく普通の短剣である。何の変哲もない柄に、町に入る前にクルルが受け取った短剣とそう変わらない刀身。
その短剣を見てクルルは一瞬首を傾げる、どこが違うのかと。
「ふふっ、確かにあまり変わらないように見えるかもね。でも、これがクルルに渡す武器だよ。見た目とは違って性能の方はぶっ飛んでいる。」
カムイはクルルにそう前置きをしてから性能を説明していく。
この場でできる機能だけは実際にクルルにやってもらいながら。
クルルがカムイの説明に従いながらその武器を扱ってみると確かに前の物と違うのだと理解できた。
短剣一つ一つに様々な能力が仕込まれていると言われるとさらに驚く。
特に驚いたのが、一対の短剣は魔力を貯めこみ、その魔力を使って切れ味、刀身の長さ、固さなども変えることができること。それによって間合いも自在に変えることができたし、相手の堅さに手をこまねくことも少なくなる。その上持久戦などで武器が壊れるリスクというのもかなり無くなった。
実際に扱ってみると短剣は徐々にクルルの魔力を吸い、手になじんでいく。最初のうちはただ吸い取られるに任せていたが、短剣がある程度魔力を貯めこむとそれも自分で調整することができるようになった。
「あと、その短剣は一対で一つの武器であり、それでいてクルルの専用の武器になったといってもいいんだよ。もし盗まれたりとかしてもキーワードを口にするだけで君の元に戻ってくる。今、魔力が吸われる感覚があったと思うけどそれがその機能の戻ってくる場所の登録の前段階。吸い取った魔力を目印にして戻ってくるみたいだね。解除方法は登録者本人の同意のうえでその短剣の魔力を空にする事だね。まあ要はクルルが手放すって考えない限り大丈夫みたいだね。」
「ふぇ~、またとんでもない武器が出てきたものですね。それにわたしの槍や、カムイ姉さんの武器にはないですが、登録者本人が使い続けることで能力が段階的に開放される武器なんてものもあるんですよね。」
「うん、それはもちろん。大賢者さん作の武器のコンセプトに成長する武器って言うのもあるってことだったからね。でもそういうのは能力についての詳細がまだわかってないし、保留しておくよ。今後そういう武器を渡すかもしれないってことは一応覚えといてね。」
「・・・・・・・・・・は、はいなの。というよりまた他の武器をもらう事があるかもしれないの?」
「うん、そうだね。でもそういうものだと思っておいた方がいいよ。だって大賢者さんの関係しているものだもの。一つの武器を使い続けるのもいいけど他の武器も使わないといざというときに困るかもしれないからね。愛用の武器はいくつか用意しておかないと。ちなみにその短剣、いや双剣かな?の名前は〔魔双剣〕っていうらしいね。」
「わかったの。覚えておくの。双剣の名前も、大賢者様の非常識さも・・・・。」
クルルへの武器譲渡。
それはクルルが大賢者の非常識に慣れる前段階ともいえるものであった。
誤字脱字などありましたらご指摘お願いします。
感想とかも頂けるとうれしいな・・・・・。
この話でストックが切れたため次からの更新はでき次第とさせていただきます。
とはいっても予約投稿を使う予定ですので更新の時刻が午前10時というのは変わりません。
今後とも読み続けていただけるとうれしいです。




