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冒険者についてとその他の確認

大賢者について何とも言えない感情を抱きながら終わった朝食のあと、カムイは昨夜の続きということで冒険者についての講義をシャルに受けていた。


その話をまとめてみる。

まず冒険者とは人々から依頼を受け、それを達成することで報酬をもらうことを生業とする者たちの事である。

冒険者は冒険者ギルドという組織に属し活動する。

基本的に冒険者はギルドを仲介役として依頼を受けることになるが、例外として依頼人から直接依頼を受けることも可能である。

ならばわざわざ冒険者ギルドに属す必要はないのではとも思われるが、その状態で依頼を受ける場合かなりのリスクを背負うことになる。

まず自称で冒険者を名乗っても信用がなければ依頼ももらえないこと、その点ギルドに所属した場合、ギルドが後見人兼仲介人になることで冒険者が初心者で信用がなくても依頼を受けることができる。

また冒険者にランクがあり、そのランクは下から順にG、F、E、D、C、B、A、S、X、の九段階。ランクが上がっていく毎にギルドや人々からの信用が生まれ、その分受けることのできる依頼も増える。

次に直接依頼の場合は冒険者に依頼の難易度があっていなかったり、依頼主が報酬を踏み倒すまたは出し渋る可能性がある。これはギルドの場合はまず依頼主から依頼を受け、その後依頼の難易度、報酬が適正かどうかなどの審査をしてから、ギルドが報酬を預かることで依頼の受理が完了する。冒険者はこの時点で依頼を受けることができ、依頼達成後ギルドが仲介料として天引きされた報酬が冒険者に支払われる。

主な理由としてはこの二つではあるが、それ以外にも直接依頼を受けるよりギルドで受ける方が旨味がある為、大抵の者は冒険者ギルドに所属している。



シャルが冒険者を薦めた理由というのも教えてくれる。

一つ目、冒険者ギルドは初期の登録の際には種族や出身、その他もろもろに関してはよほどのことがない限り言及されず安易に登録できること

二つ目、長い間続けると命が天秤に乗ることが多い為、その分収入が高くなること

三つ目、冒険者ギルドは世界中に支部を持つためあらゆる情報を手に入れることができること

四つ目、強い魔物がいる地区にはそれぞれの国が封鎖している場所もあり、冒険者のランクなどが上がればそういう場所に入ることも可能になること

五つ目、冒険者ギルドの経営している宿や酒場、武器屋なんてのもありギルドに所属すると割引してくれるため旅をするには便利なこと

六つ目、大賢者の関与したものを含め世界中にあるダンジョンもギルド管轄であること

七つ目、冒険者ギルドは世界中にある関係上、それを戦争などに駆り出すことがご法度となってるため冒険者個人が首を突っ込まないあるいは巻き込まれない限りそういうものとは無関係に動き回れること

等々シャルはいろいろと冒険者になる利点というものを話していた。

シャル本人は元々冒険者という生業に憧れていたのが一番の理由の様だったが・・・・。


「へえ、確かにそれなら冒険者になるのがいいかもしれないね。」


一通り説明を聞いた後カムイはシャルの提案に同意する。


「それにシャルも冒険者にすごく憧れているみたいだしね。」


「うっ、だって冒険者って自由の象徴って感じだと思うのです。確かに命を懸けるという点は少し怖いですけど。元々あの城にいてもいずれ殺されかねなかったですし、それなら自分で覚悟をした後に死ねるならそれはそれで構わないです。」


「なるほどね。確かに聞く限り冒険者って自由って言えるかもね。でもねシャル、ボクがいる限りはシャルを死なせはしないからね?」


そうカムイがいうとシャルは薄っすらと顔を赤くしてしまう。


「はいなのです。カムイさんよろしくお願いするのです。」


「うん、改めてよろしくね?じゃあとりあえず仕事は冒険者を中心としてやっていくとしようか。そのためには冒険者ギルドの支部を目指さないとね。地図を見て森についてなんとなく理解できたし、とりあえず今日は森から出ることにしようか?最終目標は最寄りの町まで行くところだけど、地図を見る限り遅くても夕方になる前には着くかなぁ?」


「わかったのです。でも服装はどうするですか?特にわたしの服は森とかを歩くのには向いてないと思うのですが。」


「あれ?動きやすそうなのとかなかった?ボクとあった時のとか?・・・あ、でもダメかな?ちょっと高級感があって町についたとき怪しまれそうかな?」


「はいです。あとわたしは魔族なのでちょっと町に入るには審査が厳しくなるかもしれないです。」


「ん?まぞく?そうか、その辺りの話を聞いていなかったね?もしかして種族差別とかあったりするのかな?その辺り簡単に教えてくれる?」


「はいなのです。」



シャルの話によるとこの世界には複数の種族が存在している。

種類としては大まかにわけて人間、魔族、獣人、精霊、妖精、神族の六種類。

細かく分けると魔族の中に吸血鬼族がいたり、獣人の中に魚人(人魚含む)、竜人がいたり、妖精の中にドワーフ、エルフがいたり、神族の中に神隷種と言われる天使と悪魔がいたりするので詳しくは語られなかった。

まず人間は特に特徴のない種族。あえて特徴を言うなら繁殖力が高く、狡猾な種族。

魔族は姿としてはほぼ人間と変わらないが魔力が格段に高く、身体能力においても人間よりは高い種族。

獣人は獣とはついているがただの総称であり、獣の特徴を持つ者もいれば、竜の特徴を持つ者もいて、魚の特徴を持つ者もいる。能力としてはその特徴の種族次第で変わるといえる種族。

精霊、妖精はどちらも少し似通っていて自然とともに生きる種族。違いと言えば精霊は世界の自然そのものから生まれ、妖精はまた別の要素で生まれる。

最後の神族は主に世界の管理を司っているといわれる種族。しかし世界にほとんど姿を見せない為謎の多い種族。まあありていに言えば引きこもりともいえるだろう。

そのほかカムイなどの異世界人も人間と言えるが世界の壁を渡ってきたことにより強大な力を持っている可能性もある為異世界人とそのまま言われることが多いらしい。

ちなみにシャルは魔族でも吸血鬼族にあたる。


「へえ、シャルって吸血鬼なんだ?じゃあ、血とか吸わないとまずいの?」


「いえ、そこは大丈夫です。一応わたしは吸血鬼ですがその中でも希少な真祖と呼ばれる種族なのです。真祖は他の吸血鬼族とは違う能力を備え、その一つが血を吸わなくても大丈夫なものなのです。まあ、吸血鬼族にとって血はエネルギーの源なので吸えばその分強くはなれると思うですが。」


「へえ、じゃあ落ち着いて過ごせる場所を確保できたらボクの血を吸ってみる?」


「え?いえ。わたしはちょっと吸血に苦手意識があるのです。だから心の準備をしてからでもいいですか?」


「う~ん、そっか。そういうことなら仕方ないかな?まあ気が向いたら言ってね?」


「は、はい。わかったのです。・・・・そ、それはともかく続きですが。本来どの種族も仲はそこまで険悪ではないのですが今はですね、数年前に十魔将の暴走して周辺国にちょっかいをかけてたせいで魔族は警戒されているのです。」


「あぁ、なるほど。そこに無防備な魔族であるシャルが入ったらどうなるかわからないかな?・・・あれでも待って?確かこの指輪に偽装の機能ってついてたよね?それで何とかして服装だけ変えれば何とかならないかな?」


「・・・・あ、そういえばそんな機能がついてたですね。それで誤魔化せるかは不安ですがそこは大賢者様の作ったものですし大丈夫ですかね?」


「う~ん、大丈夫じゃないかな?その辺りの技術については大賢者さんを信用してもいいと思うよ?イタズラには注意する必要はあるけど、必要不可欠な機能には最大限の力を注ぐ人みたいだからね?」


カムイは大賢者のイタズラにはいろいろと困らされたがその部分にだけは信頼を寄せていた。

それはガゼボからもらった情報から検証した結果である。

あの情報にはイタズラの情報もあるにはあったがそれ以外はすべてまじめな情報ばかりであったからだ。


「それはそうと、お金についても知っていたら教えてもらえないかな?昨日の確認でお金も見つけたけどそれらが使えるかどうかも確認しておきたいしね。」


「確かにありましたねぇ、お金。でも大丈夫ですよ?確かにいつの時代かわからないお金はあったですが今でも使われているお金はあったです。というより今使っているお金は世界で共通していて一種類だけなのです。」


単価はクルス。

貨幣の種類としては八種類。下から順に鉄貨、小銅貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、魔法銀ミスリル貨、王貨となるが魔法銀ミスリル貨は屋敷などを買うときや領地経営の際の投資、王貨は国同士のやり取りくらいでしか使われないので覚えなくていいとのことであった。

いろいろと聞くうちに元の世界のお金に例えると鉄貨=十円そこから鉄貨十枚で小銅貨一枚、小銅貨十枚で銅貨一枚となる。


「それで、『収納庫アイテムボックス』の中ってどのくらい入っていたんだろう?シャルは確認した?」


「いいえ?確認してないのです。ちょっと見てみるですか?」


「うん、そうだね。ええとクルス貨だったね?えっと、これだ。」


と言ってカムイが出したのは一つの革袋。そこにはなぜか$マークが書かれていたがシャルにはわからないようで反応なし、カムイはツッコミを入れたい気持ちになりながらも我慢してスルーした。

そして二人で中身を確認してみる。


「えっとこっちは鉄貨が・・・・二十枚、小銅貨が・・・・一枚、銅貨は・・・二十枚だね。」


「こちらはですね、銀貨が・・・・八枚、金貨が・・・六枚なのです。」


合計70030クルス、大体70万円ほどということである。

正直なところカムイにもシャルにもこの金額がどれくらいなのか見当がつかなかった。

カムイはこの世界に来たばかりであるし、シャルはこの世界出身とはいえ城から出ることのできなかった身だ。知らなくてもおかしくはない。

しかし、これから旅をするにはその辺りの情報も知っておく必要があり、いち早く相場などに関しての知識を手に入れたいところであった。


「まあ、とりあえず所持金がどれくらいあるかは分かったからいいかな?相場がわからないと使うにも使えないけどね。ちょっと苦しい言い訳かもしれないけど物々交換が基本の村から二人で出てきたって設定にしようか?」


「その設定で大丈夫だと思うです。どの国にもそういう村が残っていてもおかしくないと思うです。エルフなどはそういう生活をしているようですし、人間族にもそういう村があってもおかしくないのです。」


「へぇ、じゃあ大丈夫そうかな?あと一応偽装の術式も試しておこうか?効果を見る限り髪の色や瞳の色なんかもかえれるらしいね?」


「はい、わたしも偽装の魔道具について少し聞いたことあるですが、使用者の姿に幻影を重ねるものらしいのです。ただ看破の術式の付いた魔道具によって質の悪いものは見破られるらしいですが大賢者様の作ったものなので効果は相当高いと思われるです。」


「これもそういう効果みたいだね?あとこれも術式をいろいろと弄っているみたいで偽装が確実にばれないように効果を高めてその分色を変えるくらいしかできないみたいだよ。でも動力は周りから吸収するみたいだから使用者本人は魔力を消費しなくていいみたいだね。」


「ほへぇ、大賢者様はこの術式も思う存分弄っているですねぇ。」


「うん、そうだね。まあ使える分には問題ないし発動してみようか?」


「わかったです。」


二人は偽装の効果を発動する前に『収納庫アイテムボックス』に入っていた動きやすそうな服に着替え出発の準備も整えていく。

効果が発動しているのを確認出来たらそのままこの小屋を出ることができるように。

そして着替え終わった後二人は顔を見合わせ頷いて偽装の術式を起動する。

指輪から白い光が放たれ、次第に二人を包んでいく。

そして光が晴れた時、そこには先ほどとは少し雰囲気の違う二人が立っていたのであった。

術式が正常に発動したことを確認すると二人はお互いの姿を見回していく。


二人とも魔道具の効果から容姿については全く変化はないが、服装と髪と瞳の色を変えるだけで印象がガラリと変わっているのだった。

まずカムイは運動の邪魔にならないように肩の少し上で切り揃えられた漆黒の髪はシャルと同じような光を反射して輝く白銀の髪に、光を飲み込むような黒い瞳はルビーと見まがうような紅に染まり元々鋭かった眼光がさらに鋭くなっていた。服装は昨日とは少し変わり、ベージュのズボンに白のシャツというシンプルな服に赤茶色の皮の胸当て、脛当てを身に付け、腕には青を基調としたシンプルな手甲に白い装飾がさりげなく施された〔可変式武具フレキシブルウェポン〕を身に付けられている。


次にシャルは元の色である銀の髪の色はそのままに見えるが細部が少し変化していた。白銀と呼べるような色にところどころ赤みがかかり、光の角度によってその色は銀にも赤にも見えた。瞳の色はアメジストのような鮮やかな紫からカムイの瞳の色と同じ紅と元の紫を混ぜたようなワインレッドに輝いていた。服装もカムイと同じく変わっており、ベージュのズボンに白のシャツはカムイと同じで、その上には青黒い胸当て、肘当て、脛当てを身に付け、白を基調とした柄に石突には無色の魔結晶、穂先の方には赤い属性結晶が輝く〔魔導槍マギステルスピア〕を背負っている。


二人はお互いの姿を確認し終えると満足そうにうなづきあう。


「うん、大丈夫そうだね。シャルも前と同じくらいきれいだけど印象は全然違って見えるし、それにその装備なら問題なく戦闘も行えそうだね。」


「・・・あ、ありがとうです。カムイさんもさっきとは全然違って見えるですがとてもしっくりとくるのです。それに装備を付けるとさらにかっこよく見えるのです。」


「うん、ありがとうシャル。じゃあ偽装の術式も確認できたことだしそろそろ出ようか?」


「はいなのです。」


こうして二人はそのまま小屋を出ていくのであった。




誤字脱字などありましたらご指摘お願いします。


青銅貨・・・微妙に言いにくいので呼び方を小銅貨に変更しました。


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