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チートな少女の異世界記  作者: ナトセ
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プロローグ

ちょっと前の作品が滞っているため気分転換に新しい物語を書いてみました。

序盤は少々説明なども多くなるかもしれませんが読んでいただけると幸いです。

都内某所 中津流戦術道場



とある道場の訓練場に一人の少女と四人の少年がいる。


少年たちは少女を中心にしてそれぞれ四方にに立ち、それぞれの得意な武器を構え少女に向けている。


もちろん武器は訓練用の武器ではあったが、はたから見れば少年たちが少女をいじめているように見える光景であった。


しかし少女は少年たちの中央に悠然と立ち、自らを囲む彼らに対しいつでも来いという態度でいる。


少しの間、訓練場内の時間が止まったのように思えた瞬間、少年たちが動き出した。


まずは槍を持つ少年Aが間合いを生かし攻撃を仕掛ける。


すると少女は右側に体を傾けながら前進し少年Aの突撃をかわし、そのまま少年Aに寄り脇に掌底を当て突進の方向をずらす。


少年Aはそのまま突進の向きを変えられ、別の方向で構えている少年Bの方へと向かってしまうが、体をひねりながら体勢を立て直し、少年Bの横を通り過ぎる。


しかし少女の反撃はそれだけではなく少年Aに追撃を加える。


そこに少年Bが構えた大盾を割り込ませ、少女が腕に装備した籠手とぶつかり合う。


そして少女の動きが一瞬停止されると同時に、刀を構えていた少年Cが、少年Bの背後から飛び出し切りかかる。


少女はそれを後ろに下がりながら籠手で受け止め、体勢を立て直した少年Aと少年Bと距離を離していく。


少女はその間に脇に差した小刀を抜き、少年Cと数合打ち合った後、移動の方向を左へと変えた。


少年Cはそのままそこを空振りするかと思えたがそこには少女の背後から隙を狙いつつ、短剣を構えていた少年Dが迫ってきており、そのまま少年Dの短剣と少年Cの刀がぶつかり合う。


そしてその隙に一瞬で刀を納刀した少女は、二人の武器を持っている手首をつかみ、捻り上げ武器を落とさせながら逆方向に力を加え二人を投げ落とす。


少年二人は急激な力の流れの変化に対応しきれず、少女にすんなりと投げ飛ばされ無力化されてしまう。


少女が少年二人を無力化をするやいなや、少女は後ろに移動し、少年Aにより突き出された槍の穂先をかわす。


そのまま少女は少年Aの方に半回転しながら一歩踏み込み、少年Aを背負った状態にしてから自分を軸として少年Aを投げ飛ばす。


少女は少年Aが床に叩きつけられるのを確認する間もなく、体を半回転させ盾を構えながら突進してくる少年Bと対峙する。


そして少年Bが少女とぶつかるかと思われたとき少女の姿は少年Bの正面にはなく、少年Bは少女の立っていた場所を素通りしてしまう。


慌てて少年Bが止まり半回転して向きを変えると


「甘いよ」


という声が道場に響き、少年Bの背中に小さな手のひらが触れている。


少年Bの正面には少年Aが床に叩きつけられ悶絶する。


それを確認した少年Bは「参った。」と降参の声を上げながら、両手に持った盾と小刀を手放し両手を挙げた。


それは少女と少年たちの1対4で行われていた模擬戦・・・の終了の合図でもあった。






少年Bが降参をして少しあと、少女は投げ飛ばされた少年たちを介抱し、五人で向きあい模擬戦のおさらいをしていた。


「お嬢、やっぱ強いな。四人がかりでも勝てる気がしねえぞ。」


少年Dこと最上さいじょう虎徹こてつは少女に向かっていう。


「確かにどんな攻め方をしてもあっさりと返されるところしか思い浮かびませんね。虎徹なんて一瞬で投げられてましたし。」


少年Aこと吾妻あづま龍二りゅうじもそれに同意する。


「俺は一応打ち合えてはいたが、お嬢は俺に合わせていてくれたのだろうしな。」


少年Cこと重波しげなみじゅんは少女が自分にあわせて動いていてくれたことを考えながら発言する。


「確かにな。お嬢なら俺に降参を促すより、後ろから足払いをかけて態勢を崩して投げるくらいはやりそうだしな」


少年Bこと吉高上きたがみげんも少女が自分たちに合わせてくれていたことに同意する。


「いや、まあ確かにそうなんだけどさ。そりゃあ年季が違うし、一応ボクもこの模擬戦で自分のルールを決めてやってたんだよ。具体的にいうなら一つ目、防御、牽制はともかく攻撃は投げのみ。二つ目、最後の一人は攻撃をしない。三つ目、防御以外では武器は使わない。ってね。そうでもしないと瞬殺しちゃうし、訓練にならないでしょ?四人の。あと、いい加減お嬢って呼ばないでくれるかな?(まあ、誰も聞いてくれないとは思うけどさ)」


少女こと中津なかつ可夢偉かむいは少年たちに向かって言い放つ。


「「「「それは無理です。お嬢」」」」


少年四人が声を揃えて答えたことで可夢偉はため息をつき話題を変えることにする。


「はあ、しょうがないかぁ。まあ、それは置いとくとしても、お前たちあれは反省するところが多すぎると思うよ。まず、玄は視界に入る範囲の防御は固いし、その範囲ではかなり気を回せるけどそれ以外がお粗末すぎるよ。あれじゃあ不意打ちしてくれとでも言っているようなものだよ。」


「ふむ、なるほど」


玄は可夢偉の指摘に素直にうなづく。


「次に龍二は突撃や突きの速さは及第点だけど、槍の間合いの外だったり、懐に入られたときの対処法が全くなってないよ。それをどうにかしないといつまでも負けるよ。」


「う~ん、間合いの外からの攻撃はしょうがないとはいえ懐か。やはり違う武器も持ったほうがいいのだろうか? お嬢がこの模擬戦の感想で言うなら槍のみでもできるということだろうか? ・・・そうか、槍の穂先を長めの物を使いいざという時、持つことも・・・いやそれとも歩法で・・・」


龍二も可夢偉の指摘に対しぶつぶつとつぶやきながら考えている。


「そして隼は1対1では強いかもしれないけどそれ以外は全く駄目だね。周りが一切見えてないからボクの後ろから、虎徹が攻撃しようとしていることにも気づかないの。試合以外では1対1なんて滅多にないんだから。今回みたいに味方が複数でも敵に利用されるかもしれないし、敵が複数だったら一人相手してる間に不意打ちされて、袋叩きにされるよ。まあ、これは他の三人にも言えることだね。」


「しかし、複数戦なんて滅多に・・・「ないって? うちは基本実践重視だから一対一だけじゃなく複数戦もかなりあるよ。」・・・はい、すいませんお嬢。精進します。」


隼は反論したが可夢偉が道場の方針をいうと素直にうなづいた。


「最後に虎徹だけど・・・論外だね。何もかもダメすぎるよ。」


「ええ!なんで俺だけそんな評価なんだよ。確かに瞬殺されたけど攻撃するタイミングとかは良かったはずだろ。」


「じゃあ、はっきりというけどまず一つ、後ろから攻撃するのもタイミングも、まあよかったけど今回は位置が悪すぎる。なんでボクの真後ろから攻撃してくるの?あれじゃあ隼とぶつかることが目に見えているでしょうに。せめてもう少し左右にずらしていたら、隼とぶつかることもなかったし二撃目もできたかもしれない。二つ目に後ろから攻撃してくるのに気配の隠し方が甘すぎる。もう少し気配を薄くしていたらボクも一撃は受けてあげてたよ。それに・・・「ああ、もういいです。いいですから、俺が修行不足なだけだから」・・・あ、そう?ならもう言わないけど。まあ、四人とも修行が足りないね。せめてもう少しうまく動けないと奥伝はまだまだ先だよ?」


さて可夢偉はそうは言っているが、まだ少年たちは中伝を習い始めたばかりであり、奥伝など最低でも数年修練しなければ習えないものである。


それに少年たちはこの道場に通い始めてまだ日が浅い。


それなのに入門してから初伝を全て修めるまでに1年以上かかるといわれているのを半年で修めているだけでも才能があるといえる。


中津流は本来、中津流戦術のみが本筋の流派だったが、中津流戦術というのはどんな戦場でも敵を排除し生き残ることを目的とした流派である。


それは戦場で自分の持っている武器を失ったとしても戦うことができるように、どんな武器も扱うことができたり、突然滞在先が戦場になっても、身の周りの物や自分の身体のみでも戦えるのが最低ラインである。


そんな流派は現代では続くはずもなく、全て習得するのは難しいこともあり、各武器ごとに流派を分けた。


中津流ではそれらを系統と呼び、各系統の流派を目録まで収めたものに戦術を学ばせることにしたのだ。


そして各系統の階位として初心者が入門、そこから初伝、中伝、奥伝が各下位、中位、上位とありその上に仮目録、(本)目録、皆伝となる。


そして戦術には入門を除いた各階位があり、皆伝の上に極伝が存在する。


戦術皆伝までは才ある者が月日さえ(とはいっても数十年単位ではあるが)かければ修めることができるかもしれないが、戦術極伝ともなると戦術皆伝を取得し、かつ各系統を全て皆伝まで修めた人間のみが受けることができる試練を全てこなすことで認められる。



可夢偉は戦術極伝を修め、龍二は槍術、玄は大盾術、隼は刀術、虎徹は短剣術の初伝を修め中伝下位である。



可夢偉は中津本家の生まれであり、三歳から習い始める。


そして四年という他の者よりも格段に短い期間で各系統目録まで収め、戦術と各系統を並列で習い二年で各系統皆伝まで、それから三年で戦術極伝を収めたという世間でいう天才。


可夢偉を知る者からは〈武神〉とまで言われるほど武術に関しては逸脱していた。


ちなみに中津流戦術は各分野にも必要とされるものが多々あるため武術だけでなく学術に関しても一定の成績を収めている。


具体的に言えばあと数か月で13歳という現在、可夢偉の学力はすでに有名大学の主席合格レベルまでは修了している。といえば可夢偉の化け物具合わかるだろう。


その分学校には行かず他人との接触は門下生以外は殆どなかったため友達がいなかったというのは当然の事ともいえるだろう。


ただ、俗にいうぼっちというわけではない。


決してないのだ。


門下生は可夢偉と普通に話すし、学校で作るような普通(・・)の友達がいないだけである。


まあ、説明が長すぎたが、ようは可夢偉は規格外、ゲームでいえばチートを超えたバグといってもいい存在である。


そんな彼女基準で四人の事を考えてしまっているため、四人は彼女の言葉は同意はできない。


しかし彼女はまじめに言っているのはわかるため、曖昧ながらも頷くしかできないのであった。



そして、少しの休憩をはさんだ後、1対4の模擬戦は続いていく。











それから二時間が経ち、訓練場に夕日が差し込んできて、少年たちの体力が限界を迎え、可夢偉の身体が十二分に動くようになってきた頃、この日最後の模擬戦を始めるべく可夢偉を中心に囲み構えていた。


可夢偉はその場を一切動かず周囲を確認する。少年たちは少女の動きを注意深く観察し隙がないかを探す。


訓練場内が少しの間静寂に包まれる。


数秒の静寂の後、四方にいる少年たちが一斉に動き出そうとしたその時だった。


周りの四人の足元が四色の光を放ち、物語などで出てくる魔法陣が現れる。


そして魔法陣は各色にまばゆく光り輝き、四人の少年を包んでいった。


さすがの可夢偉も四方から突然放たれる光量には耐えきれず、目をつぶってしまう。


少しの間瞼をこすり光に目が慣れたころ、可夢偉は目を開け周りを確認する。


そこには光に包まれた四人の姿はそこはなく魔法陣だけが光を放っていた。


それを見た可夢偉は状況を理解しようと考えを巡らせていく。


(四人の立っていた位置には幾何学的な模様、見慣れない文字による魔法陣の様なものが光を放っている。

その光は全部で四種類、龍二の立っていた位置には青、玄の立っていた位置には黄、隼の立っていた位置には赤、虎徹の立っていた位置には緑で四人が消える前に一番輝いて今はだんだんと光が弱まってきているようだ。これは・・・確か他の門下生に勧められた小説にこんな展開があったな。そう考えると・・・)


可夢偉が考えを巡らせて行く最中も魔法陣の光は徐々に弱まり、やがて光が途切れる。


もう消えるかと思われたとき、四つの魔法陣が再び光を纏い、それと同時に可夢偉の足元に白い光で描かれた魔法陣が現れる。


そこで可夢偉は誰かの声を聞く。


{誰か私をここから出してほしいのです。・・・一人でいるのはつらいのです。誰か・・・私を助け・・・。}


かなり小さいながらも途切れ途切れに聞こえる声。


それはどこかの誰かに必死で助けを求める声。


それは長い間つらい目にあってきたのがわかるようなか細い声。


それは長い間助けを求めながらも裏切られ諦める寸前の弱りきった声。


そんないろいろな感情が入り混じった声が可夢偉の耳に届く。


「うん、わかった。ボクの持てるすべてをもって君を助けてあげよう。だから、もう安心して。ボクが助けてあげるからには・・・。」


可夢偉はそんな声に反応し、答える。


それは普段よく言っているような口調で可夢偉は声に答えを出した。


そして可夢偉が言い終わらないうちに可夢偉の視界は強い光に塗りつぶされていく。


やがて魔法陣の光が落ち着いた頃、そこには誰もおらず白いの魔法陣が光っていた。


その魔法陣も数分も経つと跡形もなく消え、訓練場は静寂に包まれていくのであった。




とりあえずストックとして四話ほどあるので一話につき二日おきに更新していきます。

この定期更新が続いてくれるといいなと思っています。


誤字脱字などありましたらご指摘お願いします。


可夢偉の能力に関して一部変更

補足:ちなみに可夢偉の化け物具合とは才能があっても数十年はかかる中津流戦術極伝までを九年間という短い期間で納めたにもかかわらず、そのうえで学力に関してもそのレベルに達していることを示してます。

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