ダンジョンコアはハイコスト
なんだか頭の後ろになんだか固めのいい弾力を感じる。
あ〜いいわぁ〜。
高反発枕なんていつ買ったんだっけ〜。
っ⁉︎
なんだろう…何かに頭をファサファサされてる。
撫で撫でされてるのかな?
なんか懐かしい…お父さんみたいな感じがする。
なんかぎこちない感じがそれっぽい。
ボクは瞼を開ける…
「……………………」
「……………………」
誰だ、このイケメン?
そして顔が近い。
しかも膝枕されてるし…あぁもう!
まだイケメンは撫で撫でを続行してるし。
それをちょっぴり嬉しいと思ってるボクがいる。
でもあなたは誰?
「……………起きちゃった?」
「あっ……はい。起きました」
イケボだっ!イケボでイケメン!
しかもよく見たら体つきが結構いいぞ!
…何を興奮しているんだボクは。
とりあえず名前聞かないと。
「えっと…」
「ん?何ですか?マスター」
いや、気づいてはいたさ…
でもさ…
「デュラハンがキャストオフするとは思わないじゃん?」
「オフの日はみんな脱いでますよ?忘れたんですか?」
突然だがここでボクのダンジョンの話をしたいと思う。
第140〜145層、ボクの中では[王国]と呼んでいるエリア。
そのエリアは魔法系と戦士系のモンスター、それも最上位に当たるモンスターを配置しており、それらが軍のように動くことで侵入者を確実に排除する、というコンセプトだった。
まぁ20層以上が使われることなど一回もなかったわけだが…
で呼び出したディバインデュラハンロード。
これはこの区画の中ボスだ。
人型で最強クラスのモンスターはあとディバインリッチーロードさんしかいない。
リッチーは死霊系じゃないか?だって?
リッチーは進化途中で実体を持つようになります。
進化なのにむしろ物理攻撃が効くようになったぶん退化してると思う。
ちなみに[王国]のボスモンスターは単体だとクッソ弱い。
なので今回は採用しませんでした。
ところでこのイケメンデュラハンがさっきから撫で撫でをやめないんだがどうしたらいいんだろうか。
撫で撫でを惜しみつつも、とりあえず膝の上から脱出。
「あぁ…」
なんでそんな残念そうな顔をしてるの?!
と言うか鎧どこいった!
「よいしょっと…マスター。これからどうしますか?」
イケメンイケボデュラハンがサクッと立つ
背が高い…羨ましい…
見上げないといけないってのは辛い。
「そうだね…とりあえず近くの都市にでも行こうか」
「カチコミますか?」
「やめて!」
「そうですね。たしかに軍勢が少なすぎたかと…我らがダンジョンも今は疲弊して……マスター。おかしいな…門からの繋がりを感じ取れません。…ん?魔力の流れがおかしい。そもそもここは“ダンシーク”ではないのか?」
ダンシークってのは『D&S』の世界のことです。
カチコムって…考え方がモンスターじゃん。
というかこの話ぶりだとデュラハン君にはゲーム時代の記憶があるのか?
まぁテキトーにそれっぽいこと言って誤魔化しておこう。
「どうやらボク達は時空の歪みにはまり別の世界へ飛ばされてしまったらしいね」
どんな反応をデュラハン君はしますかなぁ…
「あぁー。ついにこの時が来てしまったのですか…あれほど皆がタワー型にしろと言っていたではないですか…亜空間系ダンジョンだから仕方ないとは思いますが…」
「その方が裏ボスっぽいじゃん…」
はい。その通りです。ボスっぽい方がいいなぁって理由だけでダンジョンの見た目を亜空間系にしていました。
本来なら課金要素だったんだけど…まぁ公式認定されたついでにということでタダで一回だけやらせてもらった。
その時の他のダンマスたちは
『タワーだよな?タワーこそ至上!』って主張していたタワー推進派(16名)と
『古き良き地下洞窟系こそ至上!是非地下型を!』って主張していた地下ダンジョン推進派(8名)
か争っていたんだけどねぇ。
他にも天空城派(1人)とかアパート型(2人)
街派(2人)などなどもいた。
『裏ボスは格が違うんだよ』とか言って一番高額(リアルマネー100000yen)の見た目を選択。
赤い鳥居をくぐると次の階層に進むと言うシステムだ。
せめて、せめてダンジョン内の転送方法だけは転送陣が良かった…
見た目でダンジョンの効果は変わらないしタワー型の方が見た目がかっこいいので完全なネタ。
リアルな財力を見せつけるためにだけあったネタだと思われていたのを選んだのだが…
特典として周りの土地を弄れることが判明。
それで高い山(傾斜90°)を作りその頂上にゲートの鳥居とオシャレアイテム(笑)の神社を設置していた
もちろんクソ高い山の中をトンネルにして登れるようにはしてある、立体迷路になってるけど。
で石畳…石の天井…見たことあるな。
「ここって神社の下の隠し倉庫か?」
「そうですね、ここには結局何も保存しませんでしたけど」
「ノリで作ったのは良かったんだけどね」
はい、現在位置特定。
どこかの世界に突然現れたであろうクソ高い山のてっぺんの神社の隠し倉庫の中です。
きゅるるる〜
お腹が減った。
ディバインデュラハン…長い!
「君の名前は今日からディラード!おけ?」
長いので命名してやったわ!
あはははは…あれ?体から、また、力が、抜け…る
視界がだんだん傾く中…
「命名していただけるなどありがたき幸せっ?!
ま、マスター?!」
倒れるボクをディラードが優しく支えてくれた。
というか今ものすごいスピードでボクのところまで駆けつけてくれた。
頼もしいね。
それにしても体のどこかに異常があるのかな…
ボクはメニュー画面を開きステータスを見る。
毒とかかもしれないし、まぁ毒無効化のスキル持ってたんだけど、今発動してるか怪しいものだし。
ステータスを見ると特に異常はなく、
強いていうならば
MPが50/100になっていたことくらいだった。
なるほど…一度にMPをたくさん使うと体の調子が悪くなるのか…
今何かMP使うことした?
「命名するときはちゃんとMPポーションくらい持っておきましょうよマスター…心配させないでください」
いや〜、ダメなマスターでごめんね?
きゅるるる〜
またお腹が鳴る。
意外と恥ずかしい。
「なんか食べるものないかな?」
「マスターの収納の中にあるかと」
そうでした…
そんなわけで収納の中を探る。
青いたぬきロボみたいにいちいちアイテムを撒き散らすようなことをしなくてもボクは欲しいアイテムを見つけることができる!
………
なんで加工前アイテムしかないんだよ!
「ディラード…生肉って食べれる?」
「焼いた方がよろしいかと」
「だよね」
調理施設やら鍛冶場、調合室に倉庫と諸々合わせたダンジョン最下層を作るしかなさそうだな…
ボクはMPポーションを取り出して一気飲みする。
おおっ?
ハワイアンブルー?
何というか…かき氷のシロップみたいな味だ。
不味くは、ない。けど美味しくもない。
若干のエグミもあるし。
「ディラード」
「はいはい、何ですか?マスター」
「ちょっと膝枕して」
「…わかりました」
いい感じの膝枕をしてもらった後、ボクはメニューの設定からダンジョン最下層の部分を見る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー×
[ダンジョン150層]
復旧コスト
HP90000000
MP90000000
内訳
火之神祝福セシ紅ノ炎
MP5000000
水之神祝福セシ清水湧ク岩
MP5000000
風之神祝福セシ快風吹ク箱
MP100000
土之神祝福セシ神鉱溢レル壁
MP9900000
光之神祝福セシ光玉
MP5000000
料理神之調理場
MP10000000
錬金神之作業場
MP10000000
薬神之作業場
MP10000000
鍛冶神之作業場
MP10000000
豊穣之神祝福セシ農場
MP19000000
最高級家財道具一式
MP1000000
ダンジョンコア
HP90000000
デザイン料
MP5000000
復旧しますか?
YES/はい
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
デザイン料って何⁈
それにしてもダンジョンコアの対価がやばいな。
これを見るとゲームの中のダンマスがダンジョンコアを破壊した時に恐ろしいくらい叫んだ後、燃え尽きて灰になる理由がわかる気がする。
じゃあ覚悟を決めて…
「ディラード」
「はい、何でしょうマスター」
「ボクのこと、守ってね?」
「マスター?」
ボクは震える手で…これ『YES orはい』って間違えて開いたときどうするんだよ…
はいを押した。
すると、体の中を抉られるような痛みが襲ってくると同時に体に力が全く入らなくなった。
「ゲホッゲホッ!ゴブッ…」
「っ!マスター!しっかりしてください!マスター!」
体が痙攣する。
口から出る血の味が気持ち悪い。
世界がぐるぐる回ってるような感じで気持ち悪い。
体が冷えていく気がする。
痛い。
辛い。
目の前が真っ暗になっていく…
だんだん音も聞こえなくなっていく…
「マスター!マスター!俺はどうすればいい!……くそっ……マスター!マスター!…くそっ……何で、何でっ俺は治癒魔法を練習しなかったんだ……」
それはボクがディラードをそういう風に育てたからだよ
…あっ。MPポーションとHPポーション出しておけばよかった…
そんなことを思いながらボクはまた意識を手放した。
ーーーーー
……なにかが唇に当たる感触がする。
そこから空気が吹き込まれる。
胸を触られる感触がする。
「んっ…」
ボクの意識が戻る。
目を開けるとディラードがいた。
目の前に。
近くない?ねぇ?
近すぎ、うわぁ⁈
ボクの唇にディラードの唇が合わせられる。
これって…キス?ですか?
ボクの初キッスがぁああああ…
とても気持ち悪い…ような気がする。
はぁここで知りたくない事実を知ってしまった。ディラードはホモォだったのか…
しかも胸に手が当たってる。
ん?そういえばボクは女だったんだっけ?
唇が離れていく…舌は入ってきていない。
セーフだ。
「んはぁ…はぁ…ディラード…??」
ボクが見たディラードは若干泣いていた。
相当泣いたのか目の周りが赤い
「マスター…俺は!ほんとに心配したんですよ!」
なんだ?爽やか系男子ディラードが熱くなっている。
んー忠誠心MAXなのはいいことだけどボクの心境と噛み合わないというか…
でもゲーム内だと付き合いは長かった。
スケルトンだった彼をテイムして、
一緒に戦ってレベルを上げて、進化して、進化して、特殊進化して、リビングアーマーになって、それでも足りないから、また進化をさせ続けて、デュラハンになって、それからもダンジョン内で鍛え続けた結果が今の彼である。
大体…4年くらいだろうか。
でもゲーム内のスピードだと昼夜が1時間ごとに入れ替わるから…まぁそれなりの年月ってことになるんだろうなぁ…
まさか育成要素があるとは思ってなかったから適当にやってたんだけど…
「俺!ごれがらば魔法の練習もザボりまぜんがら!絶対にマスターを守り切りまずから!」
ガチ泣きし始めた彼を見てボクは思う。
もっと育成要素真面目にやればよかった。
こうなると最古参の残り2人もこんな感じなんだろうなぁ
「わかった、わかったから、よしよし」
「バズダァー!」
それにしても何というかディラードを守って上げたいと思うのはどうしてだろうか。
「一週間も目を開けないから!死んだかと思った……よかった…マスターが生きててよかったです。」
そう言って彼はボクの上にのしかかってきた。
ボクはディラードを支えきれず押し倒される。
というか今のボクほとんどなにも着てないじゃないか!
なんというかさっき自分が女だと自覚してから、どうしたらいいのかよくわからない。
とりあえず貞操だけは守らねば!
「えっ?ちょっと⁈そういうえっちなのは…あれ?寝てる?」
そういうこと、をされると思った矢先彼の規則正しい寝息の音が聞こえ出した。
ボクは盛大な勘違いをしたと知り顔を赤くした。
これディラードに聞かれてない…よね?
ボクも疲れていたのでそのままディラードを抱き枕にして眠った。
この作品ではダンジョンコアを破壊するとダンジョンマスターも死ぬ…という設定ではありません。
仕事道具であるダンジョンコアを作るためには死ぬほどHPを削るか、それなりの物資を集めないといけないために自害するほど落ち込む、という設定です。




