表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/23

国から奴隷が消えた日

ボク達は村に向かって歩いていく。

すると見張り台からエルフの男が叫んだ、

「そこの貴様ら止まれ!何者か身分を明かせ!」と。


……困った。クーデターの旗印になる者、だなんて答えられないし。かといって『ダンジョンマスターです』なんていったら敵対しそうだし。


ボクはエルフの男を見ながら考える……ん?エルフの男?……もしかして村には普通にエルフや獣人が残っているのではないか?


ボクは今変装をして人族の姿をしている。

すぐにそれを解く。

ボクの姿が元に戻っていく。

耳はエルフ特有の形に、髪は黒色に。


「こういう者だ。通してくれ」


ボクは堂々と見張りのものに返事をする。

するとエルフの男は慌てた様子で見張り台から村の方に向かって叫ぶ。


「門を開け!今すぐにだ!エルダーエルフ様が来てくださったぞ!」


その後たちまちに門が開く。

そこには予想した通りに獣人達とエルフ達が集まっていた。少数ではあるが人族もいる。


「森の賢者と言われるエルダーエルフ様が来てくださった……あぁ我らはやっと解放されるのだ」

「エルダーエルフ様!どうか我らを救ってください!」

「あの忌まわしき女王を倒してくだされ!」


……おかしい。ボクが勇気を出して演説をするつもりだったのに。いつのまにか訳わからないまま旗印にされてる。でも手間が省けてありがたいな。


それにしても皆んなやつれてる。あまりにも痩せすぎで心配だ。


「あぁ、わかっている。その前に食料は大丈夫か?」

「いえ、大丈夫ではありません。我らでは村の外に出るだけでも危険が伴うのです、今この村は見逃されていますが人攫い達に手を出せばたちまち我らは滅ぼされてしまうでしょう」


代表して村長らしきエルフが答える。

そしてその後に続くように獣人の子供や人族の子供が騒ぎ出す。


「でも隊長さんが持ってきてくれるんだ!」

「隊長さんがいっつも一人でたくさん持ってくるの!」

「こーんなにたくさん持ってきてくれるんだよ!」


隊長さん……いい人なんだね。

いい人止まりだけど。

しかしこれだけの人数分を十分に賄えるほど一人で持ってくるとは考えづらい。

おそらく本当に限界ギリギリの量を持ってきているのだろう。


「ところでその女の子は?」

「名前は?なんていうの?」


子供達ははしゃいで獣人の女の子に声をかけている。この子も奴隷になんかならなければ……いや、今はそんな考えをしてもしょうがない。


「儂にもお聞かせください……その子はもしや……」


村長がまじまじとこちらを見ながら問いかける。

その目には確証があるようだった。


「ええ、奴隷にされていました、この子達の妹達も奴隷になっています」


あの胸糞悪い光景を思い出し、つい顔が歪む。

一刻も早く助けたいがボクらだけで終わらせてしまうと、それでは次の王も同じような人になってしまう可能性がある。

繰り返させてはいけない。可能性を残すわけにはいかない。そのためのクーデターなのだから。


「やはり……ですが首輪は?」

「この程度の魔道具であればどうとでもできます」

「なんとっ!それは誠ですか?!」


村長が目を見開く。希望を見つけたような顔をしている。実際に隷属の首輪を外せる人は少数なんだろう。


「何度も我らはクーデターを画策しました。しかし!……それでは同胞の命がたくさん散ってしまう。そしてクーデターに踏み切れず人攫いの被害は増えました。結果として、今ではこのような状況になってしまったのです」


村長はうつむきながら語った。

子供達は話に飽きたのか広場の方に集まって何か遊びをしている。

何かはわからないがすごく楽しそうだ。


「すでに首輪を解除する魔法をすべての奴隷になってしまった同胞にかける準備はできています。そして、その同胞達を守る魔法も」

「流石ですな、エルダーエルフ様」


マーリンがやってくれたやつね。

ボクじゃないからね?

さて、あとは日程を決めよう。

出来るだけ早いほうがいい。


「明日にでもクーデターは起こせる。あなた達はどうする?武器も防具も全て用意はこちらでしてある」

「我らは……少し時間をくだされ……」


村長はゆっくりと歩いて他のエルフ達や獣人達の元へ行った。おそらく相談しているのだろう。

彼らは皆痩せている。おそらく体力はかなり落ちている。これではクーデターは簡単に鎮圧されてしまいそうだ。


「3日……3日だけ時間をくだされ。その間に体力を戻しておきますゆえ」

「わかった。これは土産だ。皆で食べるといい」


ボクはそう言いながらアイテムボックスを開き大量に食料を出した。

これでも入ってる量の少しなのでボク的には痛くない。


「ありがとうございます!」

「ありがとう!」

「ありがとう!」


お礼を言われるとなんかむず痒い。

ボクがやったわけじゃないのに褒められるのはなんか違う気がするし。


「では2日後にまた来ます」

「わかりました」

「あとこの子をお願いします」

「わかりました」


ボクは獣人の女の子を村長に預ける。

……3日後だと獣人の女の子達の妹は助からないな、今から助けに行くか?それだと警戒……もういいや。助けちゃおう。


マーリンに頼み獣人の女の子の妹達を転移してもらい首輪を外す。

……よく考えたら奴隷全員ここに転移してもらえばいいじゃん。


というわけでマーリンが奴隷全員をここに転移させ、すぐに首輪を外す。

後始末は全部村長に丸投げだ。


「村長。任せました」

「な、何が……あ、はい。任されました」


ボク達はマーリンの転移で宿に戻った。

外は喧騒に包まれていたがボクは気にせずにコアとの連絡を久しぶりに取ることにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ