プロローグ
三作品目。
宜しければほかの作品もどうぞ。
……ボクの部屋のベットはこんなに硬かっただろうか。
ボクは目を瞑ったまま寝返りを打つ。
ボクのベットはこんなにも冷たかっただろうか。
ベットの上にあるはずの羽毛毛布を手探りで探す。
しかしあの暖かな温もりを放つ至高の品は見つからない。
ボクは薄目を開く。
天井が石造りになっている…
何がどうなって劇的なビフォーアフターが行われたのか知らないが、少なくともボクの部屋の天井は白色だったはず。
状況確認をするために混乱しそうな自分の気持ちを抑え、とりあえず体を起こす。
「よいしょ……あれ?」
聞きなれないボクの声。
長らく喋ることをしなかったせいだろうか。
「あー、あー、マイクテス、マイクテス、マイクのテスト中ぅー」
ボクの声が反響して聞こえる。
そんな音が反響するような部屋じゃなかったはずなんだけどなぁ
そして聞こえてきた声は前世の“自称イケボ”ではなく“美少女声”と言うやつだった。
自分の声が突然可愛くなってたらびっくりするよね?
ボクもびっくりしたし。
そのおかげで眠気も飛ぶ。
そんなわけで上半身を起こした状態で目をちゃんと開いた。
どこだ?ここ?
色のついた石レンガが幾何学的な模様を描いている。
この光景は見覚えがある。
確か…なんだ…
そこでボクはこうなる前の記憶を取り戻し倒れた。
ーーーーーーーーーーーーー
思えば失敗したのはいつだったんだろう。
そもそもあれは失敗だったのだろうか。
嵌められた。
それは詐欺であり、冤罪でもあり、相手の悪意から来るものでもあった。
そして平和で幸せなありふれたボクの日常は崩れた。
たった一人のクズのせいだった。
お金に目が眩んだクズのせいだった。
人を陥れ、嗤い、破顔するクズのせいだった。
あのクズがいなければボクもお母さんもお父さんも今頃は笑いあって過ごしていたはずなのに。
そんなはずだったのに!
……優しかったお母さんも、かっこよかった父さんも
いなくなった。
もういないんだ。
もう会えないんだ。
もう二度と……絶対に……
お父さんとお母さんの写真が飾ってある仏壇の間にはもう何ヶ月も足を運んでいない。
見るだけで辛い。仏壇の間へ運ぶ足が重い。
それもこれも全部あのクズのせいだ。
勝手に巻き込んで勝手に死んでいったあのクズのせいだ!
どれだけ叫んだって、泣き喚いたって、怒っても悲しんでも、縋るものもなくてそれでもお母さんとお父さんだけは味方だったのに!
ボクが何をしたっていうんだ!
なんの恨みがあって……
だがあのクズは死んだ。
ボクの手によってでも警察によってでもない。
なんの関係もないことであっけなく死んだ。
結局、憎い相手に復讐する権利すらボクには与えられなかった。
葬式にボクの味方はいなかった。
だがクズの家族はいた。
ひっそりと葬式場の中には入らなかったが入り口でこそこそしていたのをボクは見た。
今更遅い。こんなことになる前にどうにかしてよ!
そう言いたかったけど言わなかった。