奴隷制度を持ち出した国
さてと、…どうしたものか。
貴族っぽい口調なんてできないしなぁ。
都合のいいスキルなんて持ってるわけ…?!
『★5貴神』
『★5商神』
あったよ…
じゃあスキルを意識しながら喋ればいいかな?
馬車は段々と進みボク達の番が来た。
馬車を止めると衛兵さんが話しかけてきた
「止まってくださりありがとうございます。申し訳ありませんが決まりなので馬車の中を見させていただきます。それから…身分証やギルドカードなどはありますか?」
馬車の中を見させてもらうと言われたけど…特に困ることはないね。
よし見せてしまおう。
衛兵さんを招き入れる。
…よかった。馬車に空間拡張の付与をしてなくて
「よし、うん、問題ありませんね。ミサキ帝国は貴方方の入国を歓迎します!…と言いたいところなのですが、ここだけの話です。
5年ほど前に王が急死し女王に即位した人が横暴で治安がとても悪くなっています。
貴方はお忍びとはいえ相当高貴な方とお見受けします。貴方に危害が加われば国際問題に繋がりかねないでしょう。
無理にとは言いませんが入国しない方が貴方のためかと。」
衛兵さんはかなり正義感に溢れる人のようだ。
「衛兵様は正義感に溢れた人ですのね。
貴方のような方が衛兵として働く限りはこの国もまだまだ安泰ですね。わたくし感激しました。」
ん?なんだこの口調!?
スキルの力が強すぎる……というかわたくしって言っちゃったよ……ボクがわたくしって…
そんな悲観にくれた内心には関係なくボクの顔面は完璧なキラキラスマイルを放ち続ける。
ん?本当にキラキラが出てるじゃないか。
もういい…気にしたら負けなんだ。
「い、いえ…そのようなことは……衛兵として勤めていた約半数はこの国を見限り少し離れたところに自治区を作り暮らしています…軍の大半の方もそうです…今この国を守ろうとしているのは家族を人質に取られた人ばかりなのです………あっ!……すみません。今のは聞かなかったことにして頂けませんか。…自分は妊娠した妻を人質に取られているんです…」
うわっ……もう国として終わってるじゃないか…
どうやらその女王のせいらしいね。
「そうですか…では尚更帰るわけにはいきませんね。この国の現状をわたくしは知る必要がある。」
ボクにできることなんて限られてる。
ディラード達が全力で暴れれば女王なんてすぐに死ぬだろう。でもそれじゃ本当にこの国の人たちを助けたことにはならない。
きっと自分達で人権と自信を取り返す必要があるんだ。
そのためにもボクはもっとこの国のことを知る必要がある。
これはただの自己満足だけどね。
「そ、そうですか…どうぞお入りください」
こうしてボクは帝国の中に入った。
そして…
「……やめろ!それ以上妻をっ!ぐわぁっ!」
「お前は口を出していい身分じゃないだろうっ!」
「いやっ…やめて!」
「おらっ!おらっ!」
「………クソがっ!この外道め…うっ…」
「もうやだっ!…私のことはもういいから!主人をそれ以上殴らないで!」
「ママー!パパがっ!パパがっ!」
「……絶対……絶対殺してやる!」
「おーおー!怖い怖い」
「なんで!なんで夫が死なないといけなかったの!」
「そりゃ…男の獣人なんて何に使うんだよ。
それに比べりゃ女の獣人は人気が高いぜ?
そっちの子も将来は美人になるのかな?」
「クソ!殺してやる!殺してやる!」
奴隷として扱われる獣人やエルフを見てボクは吐き気を覚えた。
そして奴隷の中には人間の女の人や子供もいた。
「女王様には感謝しないとなぁ」
「こんな魔道具を堂々と使えるなんて最高の国だな!前までの国王は頭がかたすぎたんだよ」
「ん?あそこのおねぇちゃん……捕まえたら高く売れそうだな…」
どうやら奴隷制度が始まったのも5年前かららしい
ちなみにディラードとマーリンは他の場所に視察に行ってもらっている。
馬車には自動迎撃装置が付いているので盗まれる心配はない。
ボクの護衛は小さくなったバルムンクだけで十分だ。
……あ、うさぎさん馬車の中に忘れた。
色々と思案していると首元からカシャンという乾いた音が響いた。
「よっしゃ!美人ゲット!やっぱ隷属の首輪は便利だよな」
「これだけで人さらいがずいぶん楽になったもんだよな。それにこの国じゃ人さらいなんて堂々とやっても問題ないからな…女王様様だよ本当に」
「これ売る前に俺たちで楽しんでもいいよな?」
ん?隷属の首輪?その割には普通に手は動くし…どこらへんが隷属なの?
「ほら女、とりあえず路地裏まで俺たちに付いてこい」
「いやよ。なぜわたくしがあなたごときに付いていかなければならないのかしら?」
あっ…まだあのスキルの効果続いてるんだ…
「くそっこいつ貴族ってだけじゃなくて魔導師だったのか!」
「兄貴!この首輪を弾くレベルの魔力の持ち主ってことは…」
「そうだな…エルフ用のを使えばよかったな。まぁ関係ねぇ!その首輪にはなぁ、もしもの時のために麻痺針が盛んであるからな!」
ん?首元になんかが当たると思ったら針か…あっ折れた。
というかこの首輪邪魔だな…
ボクが首輪を掴むと金属製だと思われたそれは思ったよりも簡単にくしゃっと潰れた。
そっか…この首輪を作った人かなり腕が悪いな?
鉄に魔術を仕込んだ時にだいぶ素材の耐久度を削ったんだね。
「おいおい嘘だろ」
「きっと何かの間違いだ…」
ボクが首輪を地面に捨てるとバルムンクがその音で、もぞもぞと動いた。
お前寝てたのか!
「グルぅ?」
「いけ!バルムンク!」
「らじゃ…ぐるぅ」
?!……らじゃ?多分聞き間違いだね…
そして気づいた時には男達はチリになっていた。
本当に跡形もなく消えた。
バルムンク…何やったの?
でもボクは今バルムンクを褒めてあげたい
「よーしよしよし」
「ぐるぅ……もっと…」
バルムンクが喋った?
「バルムンク喋れるの?」
「グゥ…スゥ…」
「寝ちゃったか…多分気のせいだね」
そしてボクは馬車に向かって歩き始めるのだった。
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《ダンジョンside》
「んん…よし…義体は完璧。義体へのリンク完了。これでいつでもマスターのサポートができますね」
ダンジョンの最高層のダンジョンコアの前、そこに裸の女の子が座っていた。
「本体とのリンクは良好…よし最後にもう一仕事…の前に服を着ないと」
そして服を着た少女はゲートをくぐり第100層にワープする。
少女は息を吸い込む…ことはなかった。
「人形とはいえ呼吸をしないと不自然でしょうか…瞬きもしないといけませんね…」
そう言いながら少女は目の前のものを見つめる。
そしてその周りには酸素マスクをして白衣を身に纏いメガネをかけたゴブリンが集まっていた。
「人工衛星クロノリア1号から10号まで発射準備」
「「「「了解しました!」」」」
いつのまにか神社の中に管制室が設置されていた。
ちなみにこのゴブリン達ただのゴブリンではない。
そして準備が終わると…
「3〜2〜1〜よし!発射!」
その日ダンジョンから10本ほど白い雲が立ち上った。
そして人工衛星に何故か、色々な兵器が付いていることに疑問を抱く者はこの場にはいなかったのである。
「あっマスターのところまでの移動手段がなかった……飛行艇が一番良さげ…でも対空攻撃とか重力魔法とか怖いし……」
また兵器が一つ開発される。




