馬車を引くのは馬じゃない
移動すること何日か。
寝ていたのでディラードに起こされるまで正確には何日経ったかわかりませんがとりあえず街道に出ました。
街道は特に舗装されているわけでもなく轍の跡が付いています。
そろそろバルムンクにもっと小さくなってもらって普通の馬を繋ごう。
流石にリザードマンもどきが馬車を引いているのはおかしいからね。
「バルムンク。縮んで。馬車には馬を繋ぐから。」
そう私が言うとバルムンクは両手から少しはみ出るくらいのサイズまで縮み、私の頭の上に乗った。
まぁ別に重いわけじゃないからいいけど動きづらい。
さてバルムンクも縮んだことだしゴーレム馬でも繋ぐか
もちろんうちのダンジョンの中に馬もいるにはいるけどうちの馬は足が最低でも6本あるからね……あとは察してね。
さて進もうかな。
「むきゃう…」
「?」
何やら可愛い鳴き声。
それが気になったボクは声のする方へ顔を向けた。
何とそこには可愛いうさぎさんがいるじゃないですか!
白い艶やかな毛並み、赤い眼、健康的な肉つき…これはなかなかのうさぎさんですな。
ちょっとおいで?というかこっちから行くから待ってて?ちょっとその艶やかな毛並みをボクに堪能させて!
「むきゆぅ?……きゅ…きゅいぃ…きゅわ?!
(なんだ?…子供か…さっきの竜は夢…じゃなかった?!)」
「ふふっ…可愛いうさぎさんゲットです…可愛い…癒される…ちょっ?!バルムンク痛い!髪が乱れるから暴れないでよ。あとで構ってあげるから」
ボクはうさぎさんを胸に抱いたまま馬車に乗り込みゴーレム馬を動かし始める。
ちなみにこのゴーレム馬実物と変わらないくらい精巧に作ってある。
本当の馬と違うところは口からビームが出ることくらいだろうか……いや、うちの馬は口からビームをちゃんと出すから……違いは胴体から金属製の翼が出てきてそこに魔導ガトリングが付いているくらいのことだろう。
まつげまで完璧に作ってあるからバレない…はず…バレないと…いいなぁ
あと人間至上主義だったっけ?
一応変装してついでに幻惑の魔法でさらに誤魔化す。
ボクの見た目はエルフだからね。
でも実際のところは元エルフの吸血鬼だから。
血吸わないけど。
で変装してみた感想なんだけど
『★5盗賊神』の変装と『★5魔法神』の幻惑の魔法は最強すぎた。
ボクはどこからどうみても人間の男装の麗人です、ありがとうございます……
おかしいな?前世のボクになろうとしたはずなのに?……あれ?前世のボクってどんな姿だっけ。
最後に鏡を見たのはいつだったっけ。
そんなことを考えているうちに帝国領の入り口と思われる関所が見えてきた。
馬車が並んでいるのでその最後尾にボクは馬車を向かわせ列に並んだ。
……他の馬車は結構ボロボロなのにボクの馬車はとても綺麗だ。しかもボクが張り切りすぎたせいで細かいディテールが付いているし、快適さを追求した結果の魔道具がチラチラと見え隠れしている。塗装を完璧に施したのも間違いだった…
黒塗りで艶が出ている上に魔道具とかで金細工がしてあるように見える馬車は普通の馬車と見比べると明らかに浮いている。
しかも鎧を着たディラードが現在御者として座っているから…うん考えるのをやめよう。
ボクの思い描いた普通の馬車はよく考えたら外国の王室の方が乗る馬車でした。
とても……とても周りの方々の視線がボクに突き刺さります……




