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森の道中

ダンジョンからナビゲートに従って森の中を移動すること3日。


ボクは暇になり始めていた。


「まだなの?」

「あと9日ほどかと」


バルムンクに乗って飛んでいけばとも思ったのだけど、バルムンクは燃費が悪いらしく今はディラードと同じくらいまで小さくなっていて、見た目はカッコいいリザードマンみたいな感じだ。


「グルゥ♪」


相変わらず喋れないけど。


2日目から歩くのが億劫になってきたのでボクは荷車に乗っている。

ちゃっかりマーリンとディラードも相席している。

ちなみにこの馬車もどきの荷車を引っ張っているのはバルムンクだ。

言うなれば竜車とでも呼ぶべきそれは森の木々を縫うように蛇行しつつもほとんど揺れない高性能を誇っている。

バルムンクに悪いかな?って思ったけど本人?本竜は案外ノリノリなようで、それを見たボクは任せることにしたのだった。

歩くの疲れないけどめんどくさいし。


そんなわけでインターネットやゲームはおろか本なんかの娯楽もないのでボクは久し振りにダンジョンの様子でもみようと思いメニューを開いた。


そこにはいつも通りの画面が展開されるが、


「あれ?『設定』のところが『ダンジョン』になってる」


『設定』のところが『ダンジョン』という表記になっていた。

そして通知が999件ダンジョンのところに出ていた。


ボクは戸惑いながらもメニューからダンジョンを選択する。


『ダンジョンの管理』の項目と『ダンジョンからの報告』の項目の二つが表示された。


報告の方に通知があったのでそちらを選択する。


えーなになに?


『題名:はじめまして!

送信主:ダンジョンコア

本題:はじめまして。名無しのダンジョンコアです。出来れば名前をつけていただけると嬉しいです。では、定期的に報告や改良なんかの相談もしていきますね。


補足、私を作り出す時に生命力に対して魔力が足りませんでした。そのため現在は存在を固定化させていません。なので至急、私に残りの魔力を追加してください。不完全な状態が長く続くと良くありません。』


メール?


というかダンジョンコアに名前つけるの?

ダンジョンコアってそもそも生き物じゃないでしょ。

あれかな?刀に銘をつけるみたいな。


『是であり否です。ダンジョンコアは半生命体です。ガーゴイルやゴーレムなどが大きなくくりで言えば仲間になります』


鑑定さんがいれば知ったかぶりをしても大丈夫なんじゃないかと思いはじめてきたよ。


『否。知識は力です』


ごもっともでございます。


とりあえず名付けをちゃちゃっとやっちゃうか。

ついでに魔力も送っておこう。

名付けはメールですればいいのかな?

返信のところもあるし……名前は、まぁ『コア』でいいかな。


『じゃああなたの名前は『コア』。

これからもよろしくね』


「送信っと」


メールを送った途端にMPが大きく減ったのが感じられた。

がボクはもうその状態になれた…というか耐性スキル的なものを取ったので気絶はしなかった。


さてじゃあ他の連絡も見ていこうかな。


『食料があまりにも余ってるから食事の量を増やすことに承認を』


承認のボタンをポチッと押す。


『食事の質が気になります、改善したいのですが』

「承認っと」

『娯楽が足りません……』

承認のボタンを押す。

『医療機関を作り…………』

承認のボタンを押す

『防衛施設を充実……』

承認のボタンを

『レールガンを塔の……』

承認のボタン

『研究機関を……』

承認する。

「軌道上に衛星を……」

承認す

「衛星に武装の……」

承認

「軍事……」承認「医療……」承認「食事……」承認「階層の改築…」承認「生産…」承認


「承認、承認、承に〜ん!」


ボクは溜まりに溜まった999件に承認を連打し続けた。


連打が終わった頃にはボクは疲れ切っていた。

それに加えてMPが減っている状態は、慣れたと言っても辛いものがあるので下級のマナポーションをメニューの『アイテム』から出してぐびっと飲み干す。


が回復したMPはすぐに消費してしまった。

もう一度メールを見直すと設備やら何やらを整えていくのにボクのMPを使っていくらしい。

いつのまにか最大階層が300になっていて鉱山やら薬草畑やら生産設備を整えたいらしい。


それにしてもどれだけMPを吸い取られれば気がすむのかな。

量はボクからすればちょっとずつだから問題ないんだけど、なんというかMPを吸い取られる時にこそばゆいものがあるんだ。

ボクはMPを吸われるこそばゆさに身をよじらせながらも竜車の中でくつろいでいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「グルゥ♪グルゥ♪」


バルムンクは鼻歌を歌いながらも時速50キロ程度で木々を避けながら森の中を走っていた。

温室育ちでナイーブと思われがちだがそんなことはない。

バルムンクは体が弱いわけではなく単に閉所が嫌いなだけで、体調が悪くなるのは閉所にいると気分が滅入るせいなのだ。


充分ナイーブな気がするが病弱と勘違いされたまま【クロノリア・スカーレット】に育てられたこの竜は色々とめんどくさい竜になってしまった。


例えば食事は調理されたものを好み肉や野菜をバランスよく食べたがる…など。


他にも1日2回の水浴びやら寝るときは地面が硬くないといけないなど他にも多岐にわたるが…


それでも竜である。


だが悲しいかな、彼……いや彼女には全く覇気がない。

あ、バルムンクはメスです。


覇気がないせいか先程からバルムンクの前に飛び出してきた動物が次々と轢かれている。


「グルゥ♪グルゥ♪グルルゥ♪」


轢き逃げ事故である。


グルゥとしか言わない彼女だが実は念話が普通に使えるし人化も余裕でできる。


「グルゥ♪グルゥ♪グルゥ♪……グルルウ!」

(訳:働くのめんどいけどたまには外で遊ぶのも悪くないわぁ。それにしてもママが頼ってくれるのは嬉しい!)


アクティブニートな駄竜は三食、昼寝付き、衣食住が充実している現状に満足しているようであった。

とは言っても服なんて着るわけがないので腕輪や足につけるリングなどを身につけているし住むところは硬い地面であればいいので実質的には食のみが保証されているのだが。

ちなみに卵から育てられているので【クロノリア・スカーレット】にとても懐いている。


「グルゥゥゥウ♪」

「ウサギ運輸が通りますよぉ?!……うぎゃぁぁぁあああ!?あ、危なかった……ぁ、鱗落としちゃったぁ……」

「グルゥ?」


そこに横から突っ込んできた風呂敷を背負ったウサギが轢かれる寸前で跳びのき竜車の上に乗った。


「あ、危ないじゃないですか!どこまで走ってるん……で……すか…………ぁ…ぁ…ぁ」

「グルゥ?」


バルムンクは人畜無害な駄竜であるし今はリザードマン程度の大きさでありなおかつ覇気なんてものは全く出ていない。

が実力はカンストステータスまで自キャラを育てるような彼が自分のテイムモンスターの育成をサボるかと聞かれたら否、というわけで……


このウサギもウサギで韋駄天ウサギ運輸会社のNo.5であったのが悪かった。

下手に実力があったためにバルムンクの隠された?実力に気づいてしまったのだ。


「む、むきゅぅ…」


圧倒的な実力差を前にウサギは逃げるなどという気も起きることがなく気絶した。


「グルゥ♪」


屋根に気絶したウサギを乗せた竜車は走っていく。

竜の鼻歌は轢かれていく森の野生動物たちの悲鳴に混じって消えていった。


森の中に落ちた、竜の鱗が20枚ほど入った風呂敷の中に灰がぎっしりと詰まった大きめの瓶があることに誰も気づかなかった。

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