(9)
魔王を倒して気を抜いたら痛みがぶり返してきた。
力が入らなくなり倒れてしまった。
と言うことは興奮が収まったようだ。
っていうか超痛い。
「やったな龍我。」
とアマノジャクが痛々しく歩いてきた。
「安静にしとけよアマノジャク。」
「いや、姫を見るまでは…」
「そうだ、姫はどこにいるんだ?」
「たぶんこの上だろう…歩けるかお前たち?」
「俺は大丈夫だが。」
「ボクも大丈夫だよ。」
「………うちもだ。」
「私も大丈夫だよ〜。」
「龍亞はまだダメかもな。」
「しゃーない、俺がおぶっていくよ。」
と言って無理やり立ち上がって龍亞を担いだ。
俺たちは、先に見える階段を上がって上に行った。
そこにいたのは…………………
「「美結!?」」
優菜と俺の声がハモった。
そこにいたのは美結だった。
「おお、姫無事ですか。」
とアマノジャクが真面目に言っているので本当なんだろう。
「なんで最初に会った時に言ってくれなかったの?」
「私、その時にここを抜け出したの。ただ、私に能力で喋ることを制限してたみたい…ってなんで私喋れるの?」
「龍我が魔王を倒したからだとおもいます。」
「本当に!すごい龍我。」
よっしゃー美結に褒められた。
超ーうれしい。
「さて姫帰りますか。」
とアマノジャクが言った時、床に寝かしてた(さっきの驚きで落ちた)龍亞が目を覚ました。
「あれ魔王は……って美結!なんでここにいるの!?」
と同じことを言っていたので面白くみんなで笑った。
どうやらワープホールが直ったらしくアマノジャクが呼んだ、迎えの人が来た。
俺たちは迎えの人たちと帰った。
ウォーターアイランドに帰ってポセイドンへ報告に行った。
俺たちが美結と顔見知りだということに驚いていた。
「そうだったのか、姉が世話になったな、ありがとう龍我。」
とお礼の言葉などを言われて報告は終わった。
その後、アマノジャクがどうして魔王は能力を消さなかったのか等を教えてくれた。
「これは私の想像だが、二手に分かれた時に戦わせて一度どんな能力か確認したのだろう。その時に打ち消すための準備をした。打ち消すにはいろんな手順が必要だからな。だからお前の能力を消せなかったのだろう。」
なるほど、確かにその時には何もしてな…応援しかしてなかったな……
「さて、お前はこの後どうするんだ?」
「ん、もちろん帰るけど。」
「そうか…なんか寂しいな。そうだ、姫と話してこいよ。知り合いなんだろ。」
「まーね。最後に話してくるか。」
ということで、美結のところに行った。
普通なら会えないのだが、魔王を倒した勇者ということで会わしてくれた。
「でー、話って何?」
何か作業をしていたが手を止めて笑顔で聞いてくれた。
「えーと、どうして学校であんなに仲良くしてくれたのかなーって思ったから…」
「あーそれね。龍我からアマノジャクの感じがしたからだよ。一応、私も一国の姫だからそれぐらいなら感知できるよ。」
「簡単に言ったら監視ってこと?」
「んー、そうなるね。」
やっぱ、龍亞の勘違いか…なんか悔しい。
「あ、そうそう。私の本当の名前って違うんだよ。」
「瀬織美結って偽名なの!?」
「うん、あっちで浮かないようにね。」
一拍おいて、
「私たち王族家は神様の名前と力をもらってるの。で、本当の名前はサラスヴァティー。全然違うでしょ。」
サラスヴァティーって言われても何の神かわからない…
「ちなみにサラスヴァティーって和風に言うと弁財天。水の神だね。それと、メイドの安波が帰れるようになったって言ってたよ。」
「……美結はどうするの?」
「もちろんこっちに残るけど。あ、そっかお別れになっちゃうのか。残念だわ……」
「でも、そうしたらクラスメートが不審がるんじゃ……」
「あー、それなら大丈夫。私のメイドの安波も記憶の改ざんが得意なの、で、その人に消さしといたから。いたこと自体なくしたよ。」
「……お前はそれでいいのか?」
「んー、本当はあっちに残りたいさ。でも、私も国の姫だから我儘なんか言ってらんないよ。」
さすが一国の姫って思った。
「ま、会いにきたけりゃこっちに来れば話ぐらいは聞いてあげるよ。あ、そろそろ安波が言ってた時間だ。安波が三人をあっちに送ってくって言ってたの。私はそれの見送り。本当は私も行きたかったのにー。」
「それは、さすがにかわいそうだが、いなかった時の仕事がたくさんあるんだろ、ならしょうがないと思うぞ。」
「それもそうだね。早く行こうー。」
と美結は俺の手を引いて歩き始めた。
俺は好きな人に手を引かれてどうしていいか分からずただ引きずられるようについて行った。
ついた時にはアマノジャク達全員が集まっていた。
「そろそろ戻るらしいな。」
「そうらしいよ。いろいろ楽しかったぜ、アマノジャク。」
「私もだ。時間があったら会いにこいよ。」
「そうするよ。」
周りを見たら他の人達も各々別れの挨拶をしていた。
龍亞なんか泣いてるし……
「それでは行きますよ。」
とこちらを見ていたメイド服を着た女の人が呼びかけてきた。
たぶん、安波さんなんだろう。
「私についてきてください。」
先導するように前を歩いて行った。
俺達は後ろを見て手を振りつつ安波さんについて行った。
3分ほど歩いてワープホールに着いた。
「こちらをまっすぐ行けば各々の家のまえまでいけるようにしておきました。お気をつけておかえりください。」
と言って俺らに頭を下げると来た道を帰って行った。
「さて〜、誰から帰る〜?」
「ぐすん…俺からでいいか?」
別れてからもずっと泣いてた龍亞が言ってきた。
さすがにNoとも言えないので俺らの世界に先に帰した。
残された2人は目を合わせて同時に笑ってしまった。
「さて、先に私から先に帰るね〜。レディーファーストってことで。じゃーね〜、明日の学校で〜。」
特に異論もなく先に優菜を帰した。
俺は、もうここには戻ってこないだろうと思ってもう一度振り返ってよく見てからワープホールに入った。
翌朝、俺は遅刻ギリギリで学校に入った。
どうも疲れが溜まっていたようだ。
周りを見たら昨日の2人がいた。
「よう、龍我。お前もギリギリか。あはは…」
と元気がなく目が真っ赤だ。
「話しはあとあと。急がないと遅刻しちゃうよ〜。」
優菜の言う通り急がないとやばい。
俺たちは早足で教室に向かった。
教室には先生とほぼ同時に入った。
俺たちが席に着くのを見計らって先生が話し始めた。
「はーい。ホームルームをはじめまーす。なんと今日は時期外れの転校生でーす。しかも四人!喜べ男たちー、全員女だー。」
気付けば真ん中後ろの三列に新しい席があった。
「さーて、入ってきてー。」
入ってきたのはなんと………
「「「えーーーーーーーーーー!!!」」」
さっきまで眠たかった三人の声がハモった。
なぜなら………
「今日からこの学校に来ました、瀬織美結です。」
「私は天野 華菜です。」
「ボクは土御門 有澄だよ。」
「………東風 星輝だ。」
「みんな仲良くしてねー。」
今まであったことを忘れているようだ。
安波さんすげー。
などと思っていると全員座っていた。
右斜め後ろから初めて会った時のように、
「これからもよろしく!」
と笑顔で声をかけてきた。
「おう、よろしくな。」
と俺も初めて会った時のように挨拶を返した。
魔王討伐編はこれで終わりです。
次から新章です。