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触れた指先  作者: 悠里
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第12話


 深雪が教えた車体ナンバーで、会社の車だったことが分かった。しかし高速道路を通過した時に撮られていたナンバーと照合し行き先がわかり、その周辺で聞き込みを行ったところ、近くの山で横領犯らしき男が目撃されていたことが分かったのである。その山で捜索を行うと、深雪が言った黒いバッグの燃えカスらしきものと、凶器らしい石が見つかった。


 それを男に告げると、すべてを自供し始めた。


 事の起こりは、会社の脱税を男が知ってしまったことにある。脱税をネタに会社を脅し、金を巻き上げていたのだ。用途不明の金があったのは、その脱税を加算していなかったからだったための差異だった。


 しかしそこまでは知らなかった高橋が、会社に謝ることを進めた結果、会社を隠れ蓑に殺害を決行した。そして社用の車を使い、凶器を隣県にまで捨てに行った、ということだったらしい。


 それをすべて、深雪は自宅のマンション近くの喫茶店で、明里とともに聞いていた。話しをした浅間は、最後に会った時よりもずいぶん顔色が優れ、事件が終わったことを知らせていた。


「社長の脱税に、社員の横領……。どうしようもない会社ね。その中であなたの父親は立派なことをした」

「そう……ですね。誇りに思います」


 深雪は笑みを浮かべて答えた。浅間も安心したように表情をゆるめた。


「学校、しばらく休むのか」

「明日にでも行くつもりです。担任からも催促されているので」

「そうか、がんばれよ」

「はい」


 それから深雪は水に口をつけてから、覚悟を決めたように告げる。


「私、一人暮らしすることに決めました」

「本当? ……深雪ちゃんが決めたのなら、応援するけど」

「能力について理解してくれる人じゃないと、一緒に生活するのはきびしいと思って……。お父さんは無口な人でした。だからお父さんが私についてどう思っているか知らなくて、上手く暮らせていたんです。でも、もう……」


 そこで、一度言葉を詰まらせた。


「いないから。しばらく一人で暮らしてみようと思います。お母さんにもすでに話してて、頑張って、って言ってもらいました」

「もう言ってあるのか。……何かあったら明里に頼ってやれよ。お前の面倒見るのが好きみたいだからな」

「あんたにそう言われるのはなんか嫌なんだけど。まあ、何かあったら迷わず言ってね」

「ありがとうございます」


 その言葉を合図に、明里がさて、と明るい声を出した。


「カタイ話も終わったし、何か食べましょうか。もちろん圭吾のおごりで」

「わかった、わかった。何でも好きなもの頼め」

「え、えっと、それじゃあパフェ、いいですか?」


 深雪が一応浅間に確認すると、明里は返事を待たず手を挙げた。


「店員さーん、パフェ二つ」

「お前は本当に容赦ないな……」


 ふと、深雪は浅間と目が合い、同時に笑いあった。


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