第一の報告
かたかた、と音が鳴る。
薄暗い部屋でベットのサイドテーブルの上にパソコンを開く。
かたかた。
風に揺れる窓ガラスが小さな音を出す。
ラズはパソコンの前に座り、ウィンドウを開く。
それは真っ黒な画面で、時折砂嵐が走っていた。
ラズライトからトパーズへ第一の報告。
親愛なるトパーズへ
今、『タイラス』の町にいます。私がここへ来た時に入った町エレクから少し西の場所にあります。
この世界でも文字があり、『ミュラ』を駆使してはいますが、解読には時間がかかりそうです。幸い、言葉は通じたのでどうにかなっています。
これから職を探して、住む場所を探します。
親切な方と知り合いになりました。名前はオルトさんです。葬儀屋さんなのに、格好は派手な女性です。
それから・・・この世界は『影』というものにおびえています。
『四分の三の夜』という夜と、残りの時間9時~15時までを昼とした奇妙な空間が成立されています。
太陽らしきものはありますが、日の出や日没を楽しむような時間は無く、突然の闇と、突然の光がこの世界を支配しているのです。
元は、我々の世界と同じであったようなのですが、突然3ヶ月前からこのような世界に変化したそうです。
人々は、それと共に現れた『災厄』こちらでは『影』と呼びますが、それにも負けずに生きています。
少し気になるのは、その影はこの『天青石』を恐れるようなのです。私にも原因はわかりません。まだ、確信たるものが無いので、今は断言できませんが、おそらくそうだと思います。
そして、その『影』に対抗するのが『浄化光』と呼ばれるもので、人々は鉱石にそれを携帯して守りとしています。
オルトさんに一つお守りを頂きました。そこでラズは少し言葉を切って、
トパーズからもらった飾り、売ってしまいました。ごめんなさい。御方様のためにも頑張ってそちらへ帰れる手がかりを探します。
それでは、今日はこれで。
なんだか日記みたいだと思いながら、しかし相手がトパーズなのでこれでも通じるだろうとパソコンの電源を切った。
『ミュラ』はパソコン上で様々なことを成すためのシステムの名前で、パソコン自体は『天青石』と呼んでいた。ラズはふぅとため息をつくと、窓から外を見下ろした。
闇がうめつくしている。
その先の町の灯りは、今のラズを助けるべく先にある光明のように思えた。