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終わらない夜のための鎮魂歌  作者: 水城四亜
12/17

触発:発色=反発:溶解

「どうだった。」クロラストリティスはシンナバーに聞く。


彼等は別館の一室にいた。

「一カ所、光る部分がありました。」シンナバーはピンクの石を手に持ちながら言う。


「しかし、エールは澄んでいた。」ガレナが言う。


「airはね。ガレナは何色に見えた?」


「それが・・・言いにくいのですが。二人の護衛は金。そしてあの娘は・・・」


「深い、闇。すごいね。あれだけのairエールに出会うのは、彼以来だよ。」クロラストリティスが言う。


「けれど、それだけではなさそうです。」


「少なくとも、敵にはなりそうもありませんが。」コランダムが言う。クロラストリティスはそれを興味深そうに見て、


「何故?」


「はぁ、思いっきり、中間管理職ってカンジですもん。」


「ぶっ____く、くく、それは彼等に悪いだろう?」といいながらガレナも笑いをこらえている。


「で、一カ所は何だったわけ?」クロラストリティスはシンナバーに聞く。


「ティスにもわかってるでしょう。この国最高のレイヤーで、随一のキャヴァリエ。キィーワードは『巫女』ですよ。彼もそうとうな力を持っているようです。私の嘘発見機に耐えるくらいは。」シンナバーは少し残念そうに言う。あの時、トパーズが苦しそうにしていたのは、この石に逆らってあの空間に存在していた為。つまり、彼は嘘をついた。


「彼女は巫女ではないと?まぁ、隠す原因はわからんが、あまり関係ないことのようにも思える。」コランダムが口を挟む。


「コランダム、君はツァイニングへ戻り、急ぎ許可を取ってくれ。ガレナ、君はチャンバーストへ向かってくれ。当面の騎士団の編成は任せる。とりあえず北方が空かなければいい。シンナバー。君はあの本と同じ媒介を預かり、『フラワー』との適合を。」


「で、ティスはどうするんです?」


「私は___そうだな。彼女を探ってみようか。」


「そう来るか。自分の立場理解してないだろう?」コランダムが睨む。


「敵の力量を計るのは、自らが優位に立つために最低限必要なことだ。」


「はっきり気になるって言えばいいのに。」ガレナがため息をつく。


「その間の仕事はどうする気です?」コランダムもため息をつく。


「何のために優秀な秘書官がいるんだ?」クロラストリティスが微笑する。


「はい、コランダムの負け。シンナバー、『フラワー』に行く前に我が騎士団の楯を見てくれないか。私が留守の間、強化しておきたい。」ガレナはシンナバーを連れて出て行く。コランダムは苦笑しながらそれを見送り、主に向かって笑った。


「我らが主は敵情視察をしながらでも十二分に仕事をこなせる能力がありますので、明日はコーディに私の代わりを勤めさせます。」


「コラン__」


「ああ、心配なさらずとも仕事は普段の6割りにしておきますので、どうぞこゝろおきなく視察なさってください。それでは、失礼致します。」言葉と共に扉が閉まる。普段ならコランダムはこんなことはしない。クロラストリティスは苦笑して。


「信頼されているのか、甘やかされているのか。__コランダム、そんなんじゃないんだよ。本当に。」今もまた自分の為に奔走しているだろう幼なじみを思ってつぶやいた。つぶやいた本当の意味がわかるのは彼にとってまだ先のことだった。





「トパーズ!!」ラズは倒れたトパーズに駆け寄る。


「馬鹿が。無理して言うことでもないだろうに。」アレクがトパーズを支える。トパーズは苦しそうにだが、笑みをのせてラズを制した。


「いいんだ。ラズが、私たちのラズが侮辱される言われはない。そして、私は嘘を言った覚えはない。」


「確かに、嘘ではないが、今の彼女を前にあの言葉は相応しくない。しかし、ただの石だと思っていたら、なかなかどうして、嘘発見機より高性能みたいだな。」


「私は何も傷ついていないし、何も失っていない。私の所為でトパーズが傷つく方が辛い。」ラズは悲しそうに言う。ラズにとってはこの兄とも呼べるトパーズこそ、唯一の家族。自分の為に苦しむ姿は見たくなかった。


「いずれ、その姿ではいられまい。ラズライト、覚悟はできているのか?」アレクがラズを見る。ラズは頷いて、トパーズを見る。


「ただ、今は。今はまだ、アダマス・アトン・メイアでいさせてください。それと、二人とも、私に過保護すぎます!」


「そりゃ、ラズが可愛いから。」


「まぁ、一理あるな。この馬鹿兄はいつものことだが。」


「なれるでしょうか。」ラズは少しうつむいた。自分のこの小さな手と、視界に入る屈強なアダマス・クルス・メイア(アダマスの戦士)を比べる。彼等はその中でも選ばれた最高位の10人のクルセドニー。そんな彼等と自分が並ぶことはまるで不格好だ。


「なれるでしょうか、クルセドニーに相応しい私に。」今度は顔を上げて二人を見る。


「でなければ我等は来ない。」アレクが言う。


「はじめから完璧なものなど存在しない。あるとすればそれは人の手に造られた物。しかしそれさえも、とても脆く、壊れやすい。ラズは『レ(リ)イズィリィー』になれるはず。それは長く深くつくりあげていくものだから。なれる、とは言わない。君がなりたくないのなら、無理強いはしない。けれど、なれるかどうか、というのは君自身にかかっている。」トパーズはまるで本当の妹に諭すように優しく語る。


「それも、わかっています。」


「違うよラズ。ラズは知っているだけなんだ。『知っている』と『理解している』では、全く違う。ラズ。我等のことはかまわず、自分がどうしたいか考えてごらん。ラズはどうしたい?」


「__わからない。トパーズ。わからないよ。」


「うん。じゃあ今はそれでいい。今は『わからない』。次に少しだけ『わかる』ようになればいい。ラズ。任務も大切だが、この世界を理解するということも君にとって得るところがあるはず。一緒にこの世界を学ぼう?」


「トパーズは。」


「何?」


「___やっぱり私に過保護です!!」それは照れの所為もあったが、ラズはしばらくお手洗いに閉じこもった。アレクが音を上げて、お手洗いが本来の役割を果たすまで。

用語解説


airエールー英語読みだと空気の意。この場合個人に現れる色の質のこと。


フラワー・・電算機のようなもんです。中心となる機械のよーなもの。


レイヤー・・デザイナーがクラスチェンジするとこうなる。(笑多分)まぁべらぼうに強い人ってことで。


キャヴァリエ・・マキャベリのようですが(笑)これも騎士ランクがクラスチェンジして位ある貴族がだいたいこういう風に呼ばれます。騎士団は騎士団と表記するので、それとは別。


『レ(リ)イズィリィー』・・・これも英語から。

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