呼ばれて飛び出て_以下自己規制
「何だろ、これ。」ラズは入った部屋の広さに驚いた。
入った部屋にはトイレの個室と思われるものは無く、広々としたローテーブルとソファーがあった。その一角に陣取ると、ラズはパソコンを開いた。
『・・・ラズライト!?ラズ!?聞こえるか?』トパーズの声が聞こえる。声だけだ。この世界に来た時のように映像は見れない。
「トパーズ・・・!」ラズはその懐かしい声に涙がにじむ。
『無事か?』
「はい。・・・・はい・・・!」状況は決して喜べるものではなかったがラズはそう答えた。
『アダマス様から任務がある。ラズライト、よく聞くように。』トパーズの次の言葉は意外だった。
『ラズ・・・・お元気ですか。』ラズは涙をこらえ、真っ黒な画面の先にいる人を思い浮かべる。
「アダマス様・・・!」ラズの心は歓喜した。美しいその声は、忘れることない自分の主のものだ。
『ラズ・・あなたは今困難な場にあり、このようなこと頼むのは心苦しいのですが・・・聞いてくださいますか。』
「わたくしに出来ることであれば、何なりと。」ラズは少し冷静になった。一体異世界で何の任務があるというのだろう。主は、何を求めているのだろう。先ほどまでの動揺が嘘のように心が静まる。
『【赤の封印】から持ち出されたものがあります。』そこからアダマスの声の質が変わる。
「何ですって!?」
『その世界の報告は先日、トパーズから聞いています。その『四分の三の夜』の原因がそもそも【赤の封印】から持ち出された禁書にあるのだとわたくしは考えております。ラズには、その持ち出した犯人の捜索と、討伐、そして禁書の奪還と封印を命じます。」
「何てこと・・・」ラズは血の気が引くのを感じた。
『もちろん、討伐に際し、こちらからクルセドニーを二人送ります。あなたの身を案じてのことで、決してあなたを信頼していないのではありません。いいですかラズ、決して早まった行動はしないように。』
(もう遅いかもしれません・・・)ラズはいきなり我に返った。どの面出してこの部屋から出ればいいというのだろう。今度追求にあったら交わせる自信は無い。
「クルセドニーは誰が来るのですか?」
『ふふ・・・それは着いてからのお楽しみよ。・・・・ラズライト。』そこからアダマスの声が威厳のあるものから静かなものに変わる。
『封印はもう解かれているのですよ。いつまでも自らを偽る必要はありません。わたくしも、ラズがラズであって欲しいと願っています。』その言葉にラズは首を振ると、
「いいえ、いいえ_アダマス様。わたくしは、あなた様の御為に生きることができれば、幸せなのです。ラズライトはアダマス様の忠実なる僕。それ以上でも以下でもございません。」それはラズの偽りのない心からの言葉だった。
『・・・・いずれ、わかる時が来ます。それでは二人をそちらへ送りますよ。』その言葉にぎょっとなったラズは一瞬言葉を忘れた。
「・・・って今ですか!?」その瞬間にもパソコン『天青石』が光輝きはじめる。
「訪問は正式な場所からの方がって・・・あーもう通じないし・・・」ラズはため息をついてこれから現れるだろう人を待った。
(いくらなんでもトイレから登場ってのは、どうなんでしょう。)と、途方にくれながら。