1話目
もう無理だ。死のう。
成績は落ちて親に見捨てられ、あげく親友に彼女を取られた。
学校では俺の机には花瓶が置かれ椅子には画鋲がびっしりと引っつけられている。
いま手にはちょうど俺の頭が通りそうな輪っかが作られたロープが握られている。
それを長さを調節し、天井に取り付けた。
俺は椅子に乗り天井から提げられたそれに頭をくぐらせ、椅子を後ろへ蹴り飛ばした。
だんだん動けなくなってきた。
ああ、目の前が白く……。
意識が薄れていく。
その時。とても見覚えのある顔が俺の目に写った。
その顔は笑っているように見えた。
「お…………お……れ……?」
目が覚めるとそこは外国のような景色だった。ここは死後の世界だろうか?
それにしてはみんな生き生きとしている気がする。
西洋の街頭をイメージすればほぼ説明できるような風景だ。
「ここは……?」
あれ?
ものすごい違和感に気がついたのはその時だった。
手を見てみるとさっきまでのごつごつした手と違い柔らかかった。そして顔を手でぺたぺたと触ってみると眉間から目までの距離が遠い気がする。
下半身を触ってみると股についていたブツがなかった。
「ッ!!!!????」
え?うそ、え?
俺は首を吊った筈だ。切り傷なんてないし切断なんてしてない。
「うっそ……」
そして一番の違和感はこれだ。
声だ。
最初は自分で声を出しておらず誰か小さい女の子が代わりに喋っているかと思った。が。
間違いない。これは俺だ。
なんでかはわからないが体が女になっているらしい。
「え、ええぇ……」
どうしようか。
道の真ん中で悩んでいると、一人の少女がこちらへやってきた。
「どうしたの?迷子?」
迷子……って言うのかこれは。まあ迷子かもしれない。
「う、うん。ここがどこだかわからなくて……」
そう言うと少女は信じられない!と言わんばかりに目を見開いた。
「ええっ、ここはこの街のいっちばん目印になる場所なんだよ。もしかしてここに来たの初めて?」
「うん。どうしてこんなところにいるのかわからなくて、さっきまで家にいた筈なのに」
心なしか自然と女の子っぽいしゃべり方になっている気がする。
「じゃあさ、一緒に探そうよ!あたしの名前はミリー(milly)っていんだ。あなたは?」
な、名前……。本名ヒロキだけど絶対おかしいよな。うん。おかしいな。だからここは偽名を使おう。
「め、メアリー(Mary)だよ」
「わあ、名前私と似てるね!」
シマツター。
やっちまったよ。
外人の女の子の名前っていったらメアリーしか思いつかなかったわチキショウ。
ていうか、なんていうか、自然と口から出たような、変な感じだった。
なぜかメアリーって言わなきゃいけないような気がしたんだ。
これはなんなんだろう。
「とりあえずうちにおいでよ!」
「う、うん。わかった」
なんか流れでミリーちゃんの家に行くことになっちゃったよ。