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Wonder Worker World ~ 隻眼の英雄 ~  作者: 今宵 侘
第0章 転生~別れ
7/50

現状

"オリンティリア"と呼ばれる魔法が使えるこの世界では、地続きの巨大な大陸を5つの国が統治している。


その中でもカイト達が住んでいるのは、西の国ランパード王国のさらに西端、コモル自治区である。


コモルが自治の形をとっているのは、単純に王国中心からの距離が遠いのもあるが、最もたる理由はコモル内に世界に4箇所ある不可侵危険地域の一つである"魔獣の森"があるからである。



この世界では攻撃的または魔術的能力を持つ獣のことをを広義に魔獣と呼んでいるが、"魔獣の森"に生息する魔獣はどれも能力が高く、また生息数も異常と言って良いほどに多いので、入ることはおろか、近づくことさえ忌避とされている。



よって"魔獣の森"を自領に抱えるコモルは、必然的に"魔獣の森"からやってくる多くの魔獣の対処に頭を悩ますことになる。

王国はそんなコモルの実態に対して自治および自衛を全て一任しているが、それはつまり見捨てられているに等しい措置である。



それでもコモル領内の人々がなんとかやっていけているのは、ひとえに"シヴィル"の存在のおかげである。


"シヴィル"はこの世界共通の組織であり、国や一般の人々から様々な依頼を受け、それを"シヴィル"に登録されている者達に斡旋し、対処する。依頼される内容は落し物の捜索や引越しの手伝いから、魔獣の討伐や要人の護衛、果ては未開地の探索まで、多岐に渡る。"シヴィル"に登録した者達は関税の免除などいくつかの特権を与えられ、様々な依頼をこなし世界の各地を転々としていく。彼らはいつしか"冒険者"と呼ばれようになり、彼らの中から多くの英雄譚が生まれることとなる。


現在、ほとんどの"冒険者"は一定の範囲内で活動し、コモルもそうした"冒険者"達を何人も抱え込むことで問題を対処していた。


この場合、"冒険者"というよりは自衛団に近いものになってしまうが。




ホルス宅の最寄の村は"魔獣の森"に接している300人程が暮らす規模の小さな村で、常駐する"冒険者"もわずか5人しかいない。この村は元々"魔獣の森"の魔獣たちに対する牽制の目的で造られたらしいが、かなり頻繁に起こる魔獣の襲撃にここの"冒険者"は頭を悩ませているという。



さて、最寄と言ったが、ホルス宅はその村からさらに森側に5kmほど進んだ所にある。つまり、"魔獣の森"のど真ん中にこの家は建っているのだ。いわゆる魔獣の巣窟であり、襲撃が絶えることはない。それでもこの家が平然と建っているのは、ホルス達の強さ故に他ならない。巨大なトラをロウラと合わせてたった3撃で沈めたのでも分かりきったことだろう。



聞けば、ホルスは昔は相当有名な冒険者だったらしい。


では何故このような辺境かつ危険な森に住んでるのか聞いたが、寂しそうな笑顔と共に「ここは人との関わりが少なくて済むからな」と言ったきり、何も答えてはくれなかった。





カイトがホルスに師事してから7年近くが経っていた。


カイトは未だに修行を継続しており、最寄の村がこの世界でカイトが行った一番の遠出である。


まあ、その村には週一で行っているが。



実力もかなり上がった。"魔獣の森"を一人で歩いても問題ないくらいだ。


ホルスの冷静な評価では、「一流の冒険者にも引けをとらないレベル」だそうだ。



しかし、まだ"彼女"を救出には行っていない。ホルスが「まだまだ未熟だ」と言っているのも理由の一つだが、一番の理由は"彼女"に関する情報が全くと言うほど掴まらないのである。



話は、カイトがホルスに師事したばかりの頃に戻る。





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