事件の真相 - 2
更新開いてしまいました……本当に申し訳ないです
構想自体はまだ余裕なのですが、辻褄の合う文章にするのが難しいですね……
と少し詰まってしまったので新作を書いてましたw
お目汚しにすらならないかもですが、読んで頂けたら幸いです。
「個人的な理由、とは?」
メイヤーが訝しむようにおれに尋ねる。
「えっと、まあ一つはおれが奴隷制度が死ぬ程嫌いっていうのがあるんですけど……」
「その言い方だとそれだけじゃ無いようだね」
一番はルルを虐めた復讐だったんだけど……あんまり言いたくないよなぁ。
下手するとルルが夜叉ってバレちゃいそうだし。
おれがうんうん唸っていると、あまり触れて欲しくないことが伝わったのか、
「い、いや、言いたくないなら別に良いんだ」
「そうよ! カイト君が奴隷館を潰してくれた事実は変わらないんだから」
と、二人が気を使ってくれた。
メイヤー、いやジルさんは変な人だし、アニエスはツンデレだけど二人とも良い人だよなぁ。
―――――うむ、これは良い機会かもしれないな。
少し聞いてみるか。
「ジルさん、アニエス。
二人は、獣人族についてどう思う?」
おれのいきなりの問いかけに二人は少し戸惑っている。
ルルが身を固くしたのを感じたが、ここは二人がルルを傷つけないことを信じたい。
「私は王都で何度か見かけたことはあるが……その程度だからね。正直接点が無いからどうとも言えないな」
「私なんか見たことすら無いわよ?――――――あ、でも昔からこの辺りは夜叉族の目撃情報がありますよね、メイヤー?」
「ああ、たまに冒険者たちから彼らを見かけたという話を聞くね。 できるだけ生息域を侵さないように呼びかけてはいるんだが」
へぇ、やっぱりそうなのか。ルルの魔鎚といい、この地域は夜叉と縁があるんだな。
「そういえば、最近も夜叉の目撃情報があったよ」
「え、本当ですかそれ!?私の所には情報が回ってきてないんですけど……」
会話を続ける二人。
「夜叉の情報は極秘に分類されているからね……まあ、今となっては隠す必要も無いかもね」
「どういうことですか?」
「獣人族は奴隷としての価値が高いんだ。消えない差別意識と相まって彼らは狙われやすいんだよ」
「なにそれ……ホントに最低な話ですね」
「まったくだよ……そういう人間がいるからいつまでも平和な時代が来ないんだ」
次第にヒートアップしていく会話を聞いて、思わず頬が緩んでしまう。
この二人なら、大丈夫だ。
小声でルルに話しかける。
「ルル」
「? どうしたの?」
声を返すルルも、二人が獣人を差別していないことに安堵しているように見える。
「この二人は大丈夫だ。素性を明かしても良いか?」
ルルは少し躊躇ったが、わずかに頷いて肯定を示してくれた。
「大体、3代前の国王が周りの国に流されず法律を変えなければこんなことには……」
「そもそも、この国の元々の制度が悪いんですよ!あの腐った貴族どもを見れば一目瞭然です!」
聞く人に聞かれたら間違いなく首を刎ねられそうな危険な会話を繰り広げる二人をそろそろ引き止めることにする
「ちょっと良いですか」
「「何だ(何よ)!!」」
「ひゃうっ」
あまりの白熱振りに我を忘れかけているようだ。
眼が血走ってて怖い。
あ、ちなみに最後のはルルね。
「実は奴ら―――奴隷商は夜叉を狙っていたんですよ」
「それは本当か!? しかし、あの書類の中にはそんなこと書いてなかったと思うが」
「それはおれが助けましたから」
「何だって!? ということは、君は夜叉を保護しているのか!?」
「ほ、ホントに!? ど、どこにいるの!?」
アニエスの問い掛けに、おれは顔を隣に向ける。
二人も自然とそちらに目が行く。
そこに座っているのは、スカーフを巻いたピンク髪の少女。
ギギギギ、と再びおれの方に向いた二人の顔は、『ま、まさか……』という言葉を体現していた。
おれは苦笑しながら「ルル、見せてあげて」と促した。
ルルがゆっくりとバンダナをはずす。
そこには、頭からちょこんと突き出る二本の角が確かに存在した。
二人は口をあんぐりとあけたまま絶句している。
穴が開きそうな程見つめられたルルが恥ずかしそうに俯き、それで強調された角が二人に事実を突きつける。
一足早く立ち直ったらしいジルさんが震える声で呟く。
「まさか本当だとは……しかも≪双角夜叉≫だったなんて……」
「アスラ?」
聞きなれない単語に首を傾げる。
「知らずに保護したのかい……?≪双角夜叉≫は二本角の夜叉で、もの凄く珍しいんだよ。なんでも昔、魔術を使いこなす獣人として、夜叉や他の獣人達を率いて一大帝国を築いた”夜叉王”という夜叉がいたんだが、彼も≪双角夜叉≫だったらしいんだ。というか、彼が最初の≪双角夜叉≫と言われているが」
「へぇ、じゃあつまりルルはその夜叉王の子孫ってことか……まあ、納得だな」
武器屋のおっちゃんが言ってた「夜叉族の長」も、≪紫黒の鬼鉄槌≫をルルが扱えるのも、”爆炎の血統”もその”夜叉王”が関係してると見て間違いないだろう。
「わたしも、夜叉王様なら知ってるよ」
ルルが得意げに話す。
「子供の頃、寝る前に”夜叉王伝説”を毎日聞いてた。夜叉王様は夜叉みんなの憧れなんだよ!」
嬉しそうに話すルル。
やっぱりどんな種族でも英雄伝説みたいな話はあるんだな。
夜叉王はかなり実話っぽいが。
ふとアニエスの方を見ると、彼女は俯いて小刻みに震えている。
ど、どうしんだ……?
「か……」
「か?」
「可愛いいいいいいいぃぃぃぃぃ!!ルルちゃあぁぁぁぁぁああん!!」
ルルに突撃するアニエス、そのままの体勢で頬ずりしまくっている。
「やめ、て…くるし、い」
「キャー~~~なにこれ可愛すぎよ!?角って思ったより小っちゃいのね!!」
嫌がるルルを無視してベタベタ触りまくるアニエス。
「お、おい、そろそろやめといた方が――――どぇふっ!?」
「キャッ!?」
警告しようと近づいたらアニエスが吹っ飛んできて、見事衝突。
奇跡的に受け止めたものの、ダメージは大きい。
「る、ルルは力強いんだから、気をつけろって……ガクッ」
「ちょっ、カイト君!? 大丈夫!?」
「カイ!? しっかりして!!」
「大丈夫かい!?……私の方に来ていたら間違いなく死んでいたな、これは」
「えーでは、仕切りなおして」
おれ達は元の位置に座り、最初の雰囲気へと戻った。
「改めまして、こちら夜叉で≪双角夜叉≫のルルちゃん」
「えと、ルルティア・ハーミル、15歳です」
ルルがペコリと頭を下げる。
パラパラと拍手が起こる。
「それで話を戻すと、おれが奴隷館に侵入した最初の理由は、ルルの仲間を探す為だったんだよ」
「仲間!?まだ他の夜叉がいるのか!?」
「嘘でしょ!?夜叉は滅多に人里まで下りないんじゃないの!?」
「あー、そういえば言ってなかったか……最初から全部話すけど良いか、ルル」
ルルがコクコク頷いてくれたので、夜叉の村が壊滅してしまった所から説明を始めた。
「落ち着いた?」
おれが声を掛けると、
「ええ、なんとか」
「うん、私も大丈夫」
ジルさんとアニエスからの反応が返ってくる。
二人の目は真っ赤である。
ルルの境遇を聞いたらこうなってしまった。
ちなみにルルは現在アニエスの膝の上である。
「もう大丈夫だからね?」とルルに言い聞かせるアニエスを鬱陶しがりながらも、案外まんざらでも無さそうだ。
それを赤い目のまま微笑むジルさんを見て、この二人に話して本当に良かったと思う。
「で、話を戻しますと、もしかしたらルルを助けにきた他の夜叉が捕まってるかもと思って奴隷館に侵入したんですけど、結局いなかったんです」
それを聞いて三人はほっとした様子だ。
「――――――でも、色々漁ってるうちに色んな証拠やら酷い姿の奴隷やらを見ちゃって、まあ、何と言いますか」
「プッチーン、しちゃったのね」
「……まあ、そんなとこ」
アニエスは呆れた風にため息をついた。
「キレて奴隷館の連中全員しばき回して館燃やし尽くすって……カイト君の印象ちょっと変わったわ」
「絶対に敵に回したくないね……」
「だから言いたくなかったんだよ……」
自分でもちょっとやり過ぎたと思ったもん。
人に言われるとさらに傷つく……。
「カイ、わたしはカイが本当は優しいって信じてるよ? 今回も、誰も殺さなかったんでしょ?」
気付けば、ルルがこちらに近づいて心配そうにこちらを見つめていた。
「うぅ……ルルーーーー!!君はおれの良心だああああああ!!グスッ」
「ひゃうっ!?か、カイ!?」
ルルを思いきり抱きしめる。
この子は何時もおれを救ってくれる。
絶対幸せにしてみせる。
「取り乱してごめんなさい。 そろそろ本題に入りましょうか」
「ええ!? 今から本題なの!?」
「まあ、もう頼まなくてもジルさんならやってくれると思うんだけど」
「……他の夜叉達の保護のことだね?」
「はい、話が早くて助かります」
アニエスがなるほどと手を打ち、一方ジルさんは渋面である。
「うーん……助けてやりたいのはやまやまなんだが、少し難しいと思う」
「分かってます。ただ、夜叉に関係することで問題が起きたら対処できるように、詳しい事情を知ってて夜叉にも理解がある人がいて欲しかったんです。 それがシヴィル冒険者カウンターの受付嬢とメイヤーなら、なお安心ですよ」
そう言うと、アニエスは照れた様に
「一受付嬢の私に出来ることは少ないけど、出来る範囲の事はやってみるわ」
と返し、ジルさんは
「スレールの代表者として、責任を持って臨む所存だよ」
両手を握りしめ、やる気まんまんの様子である。
「「よろしくお願いします」」
ルルと一緒に頭を下げる。
「よし、これで思い残すことは無いな、ルル?」
「え、まだお店回ってないよ……?」
「あ、ああ、そうだったな!出発は明日だし、今日一日でたくさん回るから心配すんなよ」
「……やはり、この町を出て行くのだね?」
「って出発は明日なの!? もう少しゆっくりしていけば良いのに……」
名残惜しそうな顔の二人を見て、おれは苦笑する。
「まあ、急いでる訳では無いんですけど。出来るだけたくさんの場所を見て回りたいんです」
「わたしもカイに付いてく」
そう言うと二人は明らかに落胆した様子で、何故だか悪いことをしているような気分になってしまった。
「あ、忘れてたけど黄ランク格上げの話、受けさせて頂きます。その方が色々動きやすそうなんで。 その代り、報酬金は頂きません。 奴隷館の人達の為に使ってください」
「なっ……10万ノルドを辞退するのか、君は!?」
「はい、格上げのみで十分です。 それに、10万なんておれの全財産の1割にも満たないですからね」
最後はジルさんへのちょっとした意地悪だったが、三人ともカチコチに固まっていて効果がありすぎたと後悔した。
その後、街を案内すると言うアニエスと必要ないと言うルルの睨み合いが始まり、おれはこの日一番の労力を使うことになった。
またすぐに更新できるように頑張ります
とりあえず5万PVを目指しますw
こんなこと言うのもおこがましいのですが、乾燥、もとい感想など頂けたら凄く嬉しいです。
よろしくお願いします(゜0゜)(。_。)




